この特集では、ここまで、介護業界でいかに人材が必要とされているかを有効求人倍率などのデータをもとに見てきました。
今回から2回にわたってとりあげるのは、実際の介護事業者の声です。採用する側の事業者は、現在の採用状況について、どのように感じているのでしょうか。採用側の意識を知っておくことは、就職活動を賢くすすめていく上でも大切です。
採用する立場の事業者への意識調査を見ていきましょう。
介護業界での従業員の不足感。特に足りないのは訪問ヘルパー
介護労働実態調査では、事業所に対し、ずばり従業員が不足しているかどうかを、毎年、調査しています。「従業員の過不足状況」のアンケートに対して、不足感がある(=大いに不足・不足・やや不足)と回答した事業所は、2009年には50%を下回っていました。しかし、2013年の10月時点では、全体の56.5%に増加しています。
●介護業界での従業員の過不足の状況
職種別に見てみると、特に、不足しているのが左のグラフの訪問介護員(訪問ヘルパー)です。訪問介護員(訪問ヘルパー)に限っていえば、2013年に「不足感がある」と回答した事業所は、73.6%にものぼりました。
また、不足感が急激に増しているのが、右のグラフの施設等の介護職員です。2009年の時点では、不足していると回答した事業所は38.4%でしたが、2013年には13ポイント増えて51.4%となりました。
離職率が高いはウソ?介護事業者が最も悩むのは、新規採用の難しさ
採用側の実感としても、大いに人材不足であることは分かりました。それでは、なぜ足りないのでしょうか。
介護労働実態調査では、さらに、人材不足の理由を尋ねています。
すると、70%近くの事業所が「採用が困難である」ためと回答しました。
選択肢のなかには「離職率が高い(定着しにくい)」というものもありましたが、こちらの回答は約18%。
つまり、すぐに人が辞めてしまうために人手が足りないというより、そもそも新たに人材を確保することが難しいというのが現状のようです。
なぜ採用が困難であると思うか、については、事業所は「賃金の低さ」、「仕事のきつさ」、「社会的評価の低さ」などをあげています。
家族以外が介護をすることにいまだに抵抗がある人もいますし、介護の仕事を「お手伝いの延長」ととらえる人もいて、介護の仕事が一般に理解されていない面もあります。介護という仕事が、本来、とても価値ある仕事にも関わらず、社会的な評価が低いのは残念なことですね。
ただ、たとえば介護に似たものとして「看護師」という職業があります。看護師は、昔は社会的地位が低く見られがちでした。しかし現在では、その地位やイメージがあがり、給与も労働者全体の平均を大きく上回っています。このように、職業へのイメージや給与は変わっていくもの。
今後、超高齢化で介護のニーズは高まります。介護の仕事の意義や内容に目が向けられ、労働条件や社会的評価が上がっていく可能性も高そうです。
さて、ここまで読んで、「そんなに人材が足りないのであれば、介護業界にはだれでも就職できるんじゃないの?」と思った人がいるかもしれません。
でも・・・ちょっと待った!
確かに職員不足を感じている事業所は多いですが、それはどんな人でも職につけるという意味ではありません。
「お年寄りは嫌い、人と関わるのも嫌い、仕事もしたくない。でも、介護なら人手不足だし採用してもらえそう」
…もし、そんな気持ちで介護の業界に飛び込んだ場合は、仕事を継続し続けるのは難しいでしょう。介護はラクな仕事ではなく、むしろ人間力が求められる仕事とも言えます。
この特集では、今後、介護の仕事のやりがいや退職者理由などもご紹介していきますので、ぜひ、参考にしてください。
次回は、職種や法人格別などで、職員の不足についての状況をさらに詳しくみていきます。
ケアマネや生活相談員の不足状況は? 民間企業と社会福祉法人はどちらが不足している? など、就職先を検討していく上で知っておきたい情報です。
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