介護職は給料がイマイチと思っていませんか。これまでにも、介護業界は他の業界に比べて給料が低い傾向にあるという情報をご紹介してきましたし、介護の仕事はわりに合わないと思っている人は、世間では少なくないようです。でも、本当にそうでしょうか?
今回から数回にわたって、本当に介護の仕事は給料が低いのか、どれくらい差があるのかを細かく検証していきます。
介護は、労働時間の少ない仕事?残業時間にも注目
まずは、世の中全体の、職種別の賃金と労働時間の関係をみてみましょう。下の表は厚生労働省が発表したデータ。全国129職種の一般労働者の賃金を示した表の抜粋です。
一般労働者とは、正社員・非正社員を問わず、フルタイムで働いている人のことです。
まず、表の一番左の
「きまって支給する現金給与額」は、平成26年6月に現金で支給された給与額。手取りではなく、所得税や社会保険料などを控除する前の額です。この中には、残業手当や深夜勤務手当、休日出勤手当などの諸手当も含まれています。
その横は
「所定内実労働時間数」。総実労働時間数から残業時間を差し引いた時間です。
さらに隣の
「超過実労働時間数」は残業した時間です。
上段3職種が介護関係の仕事。その下は福祉・医療系の仕事。それ以降は、特に給与が低いもの・高いものを中心に、身近な職種をピックアップしました。一番下は、全129職種の平均値です。
まず、介護の3職種を左の項目から見てみましょう。「きまって支給する現金給与額」は全職種平均の31.7万円に比べると、やはり少ないですね。その横の「所定内実労働時間」はほぼ平均と同じ。しかし、その横の「超過実労働時間数」をみてください。全職種平均が15.2時間なのに対し、残業がかなり少ない傾向が見られます。
「決まって支給する現金給与額」の金額は確かに平均より少ないですが、これはもともと残業代を含んだもの。労働時間が短い分、低くなっている傾向がみてとれます。
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さまざまな職種の給与や労働時間を見比べると、気付くこともあるのではないでしょうか?
介護に比べ、給与が低いものもあれば、パイロット(航空機操縦士)のように桁違いに給与が高いものもあります。専門性、危険性、責任などにも大きく関わっているようです。
もともと、仕事はお金のためだけにするものではありませんから、給与や時間だけで、仕事の良し悪しを語ることはできません。
ただ、介護の仕事は給与は決して高くないけれど、残業時間は少なめで、プライベートを重視した働き方がしやすいともいえそうです。
また、上の表の右端、
「年間賞与その他特別給与額」というのは、いわゆるボーナスのこと。月額の給与とは別に発生するものです。これについては、残念ながら、全職種平均よりも低め。特に、ホームヘルパーのボーナスが目立って低いことが分かります。
介護業界に限らず、小規模の事業者はボーナスが少ない傾向があります。また、フルタイム勤務であっても、アルバイトだとボーナスは少額です。ホームヘルパーのボーナスが少ないのは、それらの影響が考えられそうです。このため、平均でならしてしまうと、介護職全体の平均値が下がってしまう面もあります。
短時間勤務で見た場合は?
続いて、フルタイムではなく、短時間勤務(パートタイム)の場合の給与を見てみましょう。こちらも同じく厚生労働省のデータですが、月給ではなく、時給の一覧です。
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こちらでみると、介護の仕事の時給は全体に平均より低め。ただし、パイロット、医師、大学教授という、時給1万円を超える職種が平均値を押し上げている影響とも言えます。
一般的には、パートやアルバイトでおなじみの仕事と言えば、スーパーのレジ(チェッカー)や、事務所でのデータ入力(キーパンチャー)、飲食店などでの接客(給仕従事者)。これらの職種は、どれも時給は1000円以下で、介護の仕事に比べて給与が低いことが見てとれます。
また介護の仕事の中でも、ケアマネジャーは、フルタイムでもパートタイムでも他の仕事と比べて遜色ない水準。パートでのボーナスは、むしろ他の職種よりずっと多い傾向です。
特に専門性の高い職種として認められていると思われます。同じ介護業界でも職種によって給与水準は異なると理解しておいた方がよいでしょう。
介護の仕事は給料が低いと言われがちですが、あらためて見ると、世の中にはさまざまな職種があります。何を重視するかによりますが、世間一般に言われがちな、介護はわりに合わない、という仕事では、決してないと思いませんか?
次回も、介護の仕事を、他の職種と比べてみていきます。次回クローズアップするのは、勤務年数です。