介護の仕事をしていると、さまざまな理由で「もう辞めようかな……」と思うこともあるでしょう。ただ、衝動的に辞めてしまうと後悔することも。
この記事では、介護職を辞めるか迷っている方に試してほしい5つのヒントと、おすすめの転職先をご紹介します。
目次
■介護職を辞めたくなる理由介護職として働くうちに、以下のような不満を抱え「辞めたい」と考える方もいます。
ここでは、介護職を辞めたくなる理由について詳しく解説します。
介護職を辞めたくなる理由の一つに、給料への不満があります。
「令和5年度 賃金構造基本統計調査 」によると、介護職員の平均月給(所定内給与額)は248,400円で、年間賞与額は550,600円。年収に換算すると、約353万円になります。
一方、全国の一般労働者の平均月給(所定内給与額)は318,300円、年間賞与額は909,000円で、年収に換算すると約473万円。
介護職の平均年収は、全国平均より120万円ほど低いことがわかります。
近年、介護職の処遇改善に向けた取り組みを国が推進しており、介護職の給料の低さは改善されつつあります。
しかし、介護職は業務量や利用者さんの命を預かる責任の重さから、仕事の大変さに対して給料が見合っていないと感じ、不満を抱える場合が少なくありません。
介護職は、勤務先の施設や事業所で日々同じメンバーと顔を合わせて働くことが多い職業です。
介護職の同僚だけでなく、管理者や看護師、事務職員などさまざまな職種と関わるなかで、人間関係に疲れ、辞めたくなる方もいます。
「令和4年度介護労働実態調査」によると、介護職の離職理由で一番多かった回答は「職場の人間関係」で、28.4%にのぼりました。
利用者さんに適切な介護サービスを提供するためには、職員同士の連携が欠かせません。非協力的な職員や苦手な職員がいると、業務に支障をきたすことも。
また、利用者さんやご家族とのトラブルが原因で疲弊してしまうケースもあります。
介護の仕事は好きでも、職場の人間関係に悩んで介護職を辞めてしまう方が少なくありません。
介護の仕事は身体的な負担を伴い、排泄や移乗などの身体介護で腰や膝を痛める場合があります。
また、夜勤を含むシフト制の勤務で生活リズムが乱れ、体調を崩すことも。
夜勤は少人数でこなすことが多く勤務時間も長いため、つらいと感じる方もいます。
身体的な負担から体調を崩し、介護職を辞めざるを得ないケースもあるでしょう。
介護職は利用者さんの命を預かる立場のため、緊張感がストレスにつながることも。
たとえば、誤嚥リスクがある利用者さんの食事介助や、転倒リスクのある利用者さんの入浴介助などでは、一つのミスが重大な事故につながるリスクがあります。
また、夜勤は日中より職員が少なく「何か起きたらどうしよう」という不安が生まれやすいです。
責任感が強い介護職ほど、事故の心配からストレスを感じやすいでしょう。
その他にも、「業務に追われてやりたい介護ができない」など、理想と現実のギャップがストレスになることもあります。
同僚の介護の仕方に不満があっても、勤務先の風土によっては声を上げづらく、精神的なストレスの原因になることがあります。
「令和4年度介護労働実態調査」によると、介護関係の仕事を辞めた人の15%は、「自分の将来の見込みが立たなかった」ことを離職理由に挙げています。
男性は24.2%が将来への不安を感じて離職していました。
介護職は経験や資格によってキャリア・年収アップを目指せますが、そうした支援体制が十分ではない職場もあります。
昇進や昇給の見込みがなく、キャリアプランがイメージできないと、モチベーションの低下につながりやすくなるでしょう。
悩みを抱えたまま無理をして働き続けると、心身に不調が現れ、介護の仕事そのものが嫌になってしまう可能性があります。
ここでは、悩みを抱えて働き続けるデメリットについて解説します。
「令和4年度介護労働実態調査」では、労働条件等の悩みや不安に対して、介護職員の41.0%が「身体的負担が大きい」、31.7%が「健康面の不安がある」、28.2%が「精神的にきつい」と回答しました。
悩みを抱えながら無理をして仕事を続けることで、うつ病など心の病を発症することもあります。
働けなくなるほど深刻な状況になる前に、退職や転職を検討することも大切です。
無理をして働き続けた結果、介護の仕事自体が嫌になり「辞めたい」と考えるケースもあります。
今の職場への不満が、仕事そのものへのネガティブなイメージにつながり、労働意欲が減退してしまうのです。
同じ介護職でも、勤務先によって業務内容や職場環境は異なります。今の勤務先にとらわれず、視野を広げて自分に合う職場や働き方を見つけることが大切です。
介護職が「転職してよかった」と感じるのはどんな時でしょうか。
ここでは、職場の「ケアの方針」や「人間関係」に悩み、転職を決めた元介護職の方の体験談を紹介します。
介護職の知識・経験を活かして介護職員初任者研修の講師に転職しました。
介護の現場で働き、悩んだからこそ、人材教育の仕事をしようと思えました。
もともと勤務していたのが認知症に特化した施設だったのもあり、特に認知症の分野では自信をもって講義ができます。
講師として介護のありかたを伝えることは自分の天職だと感じています。
(初任者研修講師・Uさん)
介護職のときは給料重視ではありませんでしたが、転職すると十分な収入が得られるようになりました。
仕事に見合う収入を得ることでモチベーションも上がります。自主的に研修に行くなど自己研鑽にもお金を使えるようになりました。
一定の収入を確保することは、仕事に対する責任を持ち、自分を高めるためにも重要です。
(初任者研修講師・Uさん)
勤めていたグループホームの上司や会社の考え方に疑問を持っていたので、自分が成長できて、一緒に仕事がしたいと思える人と働こうと転職を決意しました。
その後「介護の職場環境を改善したい」という思いを共感できる人と出会い、研修の企画職に転職。
尊敬する人と一緒に働き、目標を持って前向きに仕事ができるようになりました。
(研修企画職・Rさん)
仕事を「辞めたい」と思うことは誰にでもあります。
しかし、介護職にはたくさんの魅力ややりがいもあるため、深く考えずに辞めてしまうと後悔することも。
後悔しないためには「本当に今の仕事を辞めるべきなのか」を以下のステップでじっくり考えることが大切です。
1. 辞めたい理由を整理する
2. 周りの人に相談する
3. 心身をリフレッシュする
4. 職場に改善を求める
5. 転職先を探す
ここでは、介護職を辞めるか迷ったときに役立つ5つのヒント紹介します。
衝動的に辞めると後悔する場合もあるため、まずは辞めたい理由を整理するのがおすすめです。
頭で考えるだけではなく、紙に書き出してみるとよいでしょう。
書き出すことで客観的に状況が見えてきて、気持ちも整理でき、自己分析にもつながります。
「介護職を辞めた方がいいのか」「職場を変えた方がいいのか」「今の職場で解決できるのか」など適切な判断をするためにも、辞めたい理由の整理は大切です。
悩みや不安を一人で抱え込むと、視野が狭くなってしまいます。
効果的な解決策が見い出せず、「辞めたい」気持ちばかりが強くなってしまうかもしれません。
同僚や家族、友人など、自分をよく知る相手に相談することで、精神的にリラックスできるだけでなく、適切なアドバイスがもらえる可能性があります。
身体的・精神的な疲れを解消するには、十分な休息や気分転換が欠かせません。
特に、質の良い睡眠は心身の回復につながります。
厚生労働省は睡眠の質を高めるための方法として下記をすすめています。
・日中に日光を浴びて体内時計を整える
・適度な運動習慣を身につける
・寝る前はスマホの使用を避ける
・寝る1~2時間前に入浴して身体を温める
・リラックスできる服装や寝具で寝る
睡眠以外にも、日光浴や適度な運動もおすすめです。
日光浴や運動をすると「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌され、気持ちが落ち着く効果が期待できます。
日頃の疲れから「仕事を辞めたい」と感じている方は、まず心身をリフレッシュしてみましょう。
給料や働き方に不満がある場合は、職場に体制や待遇、働き方の改善を求める方法もあります。
転職や退職に踏み切る前に、 今の職場で改善の可能性があるかどうか見極めることが大切です。
なお、改善を求める際は事前の準備が重要です。その場で感情的に意見を伝えるのではなく、建設的な話し合いをするために、目的や具体的な改善案を整理しておきましょう。
「今の職場で働き続けるのは難しい」と冷静に判断ができたら、在職のまま転職先を探すのがおすすめです。
転職はすぐにできるとは限りません。
辞めてから転職先を探すと収入がなく、生活が苦しくなる恐れがあります。
また、収入面の不安から焦って転職先を決めると、入職後のミスマッチによって再び辞めたくなる可能性も。
辞める前に転職先を見つければ、キャリアも収入も途切れずに済みます。
希望する働き方や条件を整理して、転職先を探してみましょう。
「職場を変えて介護職を続けたい」「介護職自体を辞めたい」など意思が決まったら、転職を検討しましょう。
ここでは、介護職を続ける場合と、介護職から別の仕事に転職する場合のおすすめの転職先を紹介します。
今までの経験を活かして介護職として転職したい方は、以下のどのケースに該当するか考えてみてください。
介護職にはさまざまな活躍の場があります。
不満を解消しつつ介護職を続けたいのであれば、目的や希望条件を明確にして、転職先を探しましょう。
給料アップを目指したい場合は、給料が高い傾向にある施設に転職するのがおすすめです。
介護施設ごとの平均給与額は以下通りです。(介護職員処遇改善支援補助金取得事業所の場合)
施設の種類 | 常勤 (月給) |
非常勤 (時給) |
介護老人福祉施設 | 348,040円 | 1,060円 |
介護老人保健施設 | 339,040円 | 1,050円 |
介護療養型医療施設 | 276,400円 | 1,040円 |
介護医療院 | 320,700円 | 1,020円 |
訪問介護事業所 | 315,170円 | 1,290円 |
通所介護事業所 | 275,620円 | 1,040円 |
通所リハビリテーション事業所 | 304,790円 | 1,040円 |
特定施設入居者生活介護事業所 | 313,920円 | 1,070円 |
小規模多機能型居宅介護事業所 | 287,970円 | 1,000円 |
認知症対応型共同生活介護 | 291,080円 | 1,010円 |
求人情報を見るときは、給料の内訳が明確であり、残業代・交通費・資格手当が明示されていると、転職後の給料がイメージしやすいです。
夜勤ありの施設なら、さらに給料アップが狙えるでしょう。
身体的な負担が原因で今の職場を辞めるなら、介助業務の負担が少ない施設がおすすめです。
たとえば、介護ロボットの導入を進めている介護施設や、健康的な利用者さんが多い健康型有料老人ホームなどがあります。
健康型有料老人ホームとは、介護を必要としない自立した高齢者向けの施設です。
職員は家事の支援や緊急時対応などを行いますが、身の回りのことは自分でできる方が入居しているため、業務上の身体的な負担は少ないでしょう。
また、不規則なシフトが辛いなら、デイサービスや訪問介護など夜勤のないサービス形態も検討してみましょう。
デイサービスや訪問介護は、宿泊・夜間対応のある事業所を除き、基本的には夜勤がありません。
規則的な勤務で生活リズムが整いやすいというメリットがあります。
人間関係に悩んでいるなら、職場を変えることで解決する場合があります。
気になる求人が見つかったら、事前に職場見学に行って職員の雰囲気をつかむとよいでしょう。
もしチームワークが苦手なら、訪問介護の施設で働くという選択肢もあります。
訪問介護は基本的に一人で利用者さんの自宅を訪問してサービスを提供します。一人で動くことが多いため、今より働きやすくなる可能性があるでしょう。
「介護職から離れたい」「ほかにやりたい仕事がある」という方は、ほかの職種への転職を検討しましょう。
以下の職種なら、介護職で培った経験を活かせる可能性があります。
ここでは、介護職から仕事を変える場合におすすめの転職先を紹介します。
介護職で培った利用者さんやご家族への対応の経験は、保育の仕事に役立ちます。
介護職と異なり、保育の現場は24時間体制ではないため生活リズムが崩れにくいです。
また、介護福祉士などの資格を所有していると保育士試験の一部科目の免除制度があるため、保育士の資格を取りやすくなります。
たとえ保育士の資格がなくても、保育補助として活躍が可能です。
夜勤や肉体労働を避けたい方は、受付や事務職に転職すると希望が叶う可能性が高いです。
受付・事務職は勤務が規則的なので、ワークライフバランスを保って仕事をしたい方におすすめです。
特に、事務職のなかでも介護事務なら介護職の経験を活かせます。
パソコン業務など新たなスキルは必要ですが、身体的な負担を減らして働くことが可能です。
営業職は介護の仕事で培ったコミュニケーション能力が活きる仕事です。
社外の人と関わることも多く、人と触れ合う仕事をしたい方に向いています。
介護用品など介護にまつわる営業であれば、介護職の知識や経験を活かせるでしょう。
転職先を「介護業界と他業界どちらにするべきなのか……」とお悩みの方もいるでしょう。
ここでは、介護業界での転職がおすすめの方と、他業界への転職がおすすめの方の特徴を紹介します。
介護業界での転職がおすすめなのは、以下のような方です。
介護職のままでも、職場を変えれば今の悩みや不満を解消できる可能性があります。
これまで培った知識・経験がアピールポイントになるため、転職もしやすいです。
介護の仕事は、勤めるサービス形態や働き方の選択肢も幅広いため、自分に合う転職先を探してみましょう。
介護業界以外への転職がおすすめなのは、以下のような方です。
業界によっては、介護職で培ったスキルや経験を活かせることも。また、転職することで今まで以上にキャリアの可能性が広がる場合もあるでしょう。
ただし、他業界ではこれまで取得した資格を活かせない、年齢を重ねるほど転職が難しくなるなどのデメリットもあります。
未経験から他業界への転職を検討する際は、仕事内容や求められるスキル、働き方、収入などの情報収集をしっかり行って準備をしましょう。
給料面や人間関係の悩みなどから「介護職を辞めたい」と考える方は少なくありません。
不満を抱えながら仕事を続けると、体調を崩し、介護の仕事そのものが嫌になってしまうこともあります。
介護職を辞めようか迷ったときは、まず「なぜ辞めたいのか」を整理して、人に相談したり、気分転換をしたりしてみてください。
辞めたい理由が明確になり、今の職場で解決が難しい場合は、自分に合う転職先を探しましょう。
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