介護の資格は多種多様で、必ずしも順番通りに取る必要はありません。一方で、順番に取得すると効率がよくなることもあります。
本記事では、介護分野でスタンダードな6つの資格の取得方法と、スキルアップに役立つ資格一覧を紹介します。
目次
■介護の資格を取る順番
・順番通りに取らないとだめ?
■介護の資格の取得方法
1. 認知症介護基礎研修
2. 介護職員初任者研修
3. 介護福祉士実務者研修
4. 介護福祉士
5. 認定介護福祉士
6. 介護支援専門員(ケアマネジャー)
■スキルアップできる!介護の資格・研修一覧
■介護の資格を取得するメリット
・収入アップにつながる
・ケアの不安や悩み解消につながる
・挑戦できる業務や職種の幅が広がる
・転職で有利になる
■介護の資格に関するよくある質問
・実務経験なしで取れる資格は?
・働きながら資格を取得するには?
・独学で取れて介護業界で役立つ資格は?
■資格取得で介護のスキルを磨こう
介護の資格を取得する際は、基礎的な資格からスタートし、段階を踏んでステップアップしていくことをおすすめします。
未経験からスタートする場合、以下がスタンダードな取得の順番です。
1. 認知症介護基礎研修
2. 介護職員初任者研修
3. 介護福祉士実務者研修
4. 介護福祉士(国家資格)
5. 認定介護福祉士
6. 介護支援専門員(ケアマネジャー)
まずは、認知症介護基礎研修や介護職員初任者研修(以下、初任者研修)で介護業務に必要な基礎知識・技術を学びます。
そのうえで、実際に介護施設などで実務経験を積みながら、段階的にスキルを磨いていきましょう。
利用者さんに提供するサービスへの理解も深まりやすく、より良い介護の実践力が身に付きます。
認知症介護基礎研修、初任者研修、介護福祉士実務者研修(以下、実務者研修)の3つは、受講要件の規定がなく、無資格・未経験の方も取得を目指せます。
そのため順番が前後しても問題はありませんが、効率を考えるなら以下の点を押さえておきましょう。
★初任者研修を修了していると…
・認知症介護基礎研修をスキップできる
・実務者研修の受講時間を短縮できる
介護業務に従事する方は認知症介護基礎研修の受講が義務付けられていますが、初任者研修以上の資格があれば免除されます。
また、初任者研修を修了してから実務者研修に進むと、受講科目の一部が免除されるのもポイントです。
無資格であれば450時間かかる受講時間を、320時間まで短縮できます。
一方、介護福祉士、認定介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)を取るには一定の実務経験や資格が必要で、基本的には下位資格を取ってから、取得を目指す仕組みになっています。
介護の資格にはさまざまな種類があり、それぞれ取得方法や受講要件が異なります。
ここでは、以下の資格の取得方法を解説します。
認知症介護基礎研修とは、認知症ケアの基礎を学ぶ入門的な研修です。
認知症を取り巻く現状や認知症の定義、ケアの基本技術などが学べます。
2021年度の介護報酬改定で、介護に直接かかわる職員に対して、本研修の受講が義務付けられました。
3年の経過措置を経て、2024年4月から受講が完全義務化されています。
初任者研修、実務者研修、介護福祉士など、一定の研修や資格を所持している方は受講の必要はありません。
ただし、資格の有無を問わず、希望者は受講が可能です。
【取得方法】
①勤務先の事業所・施設を通じて受講を申し込む
②主にeラーニング(約150分)で研修を受け、確認テストに合格する
【受講要件】
規定なし(介護業務に従事している介護職員等が対象)
初任者研修は、介護をするうえで最低限必要な知識と技術を身に付ける基礎的な研修です。
取得すると、介護施設*や訪問介護で利用者さんの身体に直接触れる「身体介助」の業務ができるようになります。
*施設では、介護福祉士の指示の下であれば無資格でも身体介助ができる場合もあります
修了時には筆記試験もありますが、学習内容の理解度を確認することが目的であり、難易度はそれほど高くありません。
仮に不合格となった場合でも、多くのスクールでは追試や補講が受けられるため、問題なく修了できるでしょう。
【取得方法】
①資格スクールまたはハローワークの職業訓練などで研修を受講する(計130時間)
②レポートを提出する
③修了試験に合格する
【受講要件】
規定なし(無資格・未経験でも取得可)
実務者研修は、初任者研修の上位資格にあたり、より良い介護を安定的に行うためのスキルを身に付ける研修です。
実務社研修を修了し、かつ介護等の実務経験を3年以上積むと、介護福祉士の受験資格が得られます。
実務者研修の特徴は、通常、医師や看護師が担当する痰の吸引や経管栄養といった「医療的ケア」について学べる点です。
実際に痰の吸引などを行うには追加で実地研修の受講が必要ですが、実務者研修で基礎知識を知っておけば、現場のケアに対する理解が深まるでしょう。
【取得方法】
①資格スクールまたはハローワークの職業訓練などで研修を受講する(計450時間)
※保有資格によって一部科目の免除あり
②レポートを提出する
③修了試験に合格する(修了試験がないスクールもある)
【受講要件】
規定なし(無資格・未経験でも取得可)
介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉法」に基づく、介護分野で唯一の国家資格です。
資格取得により、専門的な知識と技術を身に付けた介護のプロであることが証明できます。
介護福祉士の資格を取ったあとは、現場のリーダーとして介護チームの中核を担い、より質の高いケアを実践していくことが求められます。
【取得方法】
以下の受験資格を満たして、国家試験に合格する
【受験資格】
1~4のいずれかを満たすこと
1. 指定の養成施設を卒業
2. 実務経験3年以上かつ、実務者研修または介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修を修了
3. 福祉系高校を卒業(特例高校は実務経験9ヵ月以上が必要)
4. EPA介護福祉士候補者として実務経験を積む(外国人対象)
認定介護福祉士は、介護の高い実践力やマネジメントスキル、多職種・地域と連携するための知識などを習得した介護福祉士に与えられる資格です。
取得するには、介護福祉士を取得してから5年以上の実務経験が必要で、認定を受けると知識・技術共に高い水準にあるとみなされます。
多職種連携の要となり介護チームを引っ張っていきたい方や、介護福祉士からさらなるキャリアアップを目指す方におすすめの資格です。
【取得方法】
以下の受講要件を満たして、養成研修を受講する(計600時間)
【受講要件】
1~4の条件をすべて満たしていること(4は免除の場合あり)
1. 介護福祉士の資格を持っている
2. 介護福祉士資格取得後の実務経験5年以上
3. 介護職員を対象とした現任研修の研修歴がある(100時間以上)
4. 研修実施団体のレポート課題または受講試験で一定の成績を修めている
なお、認定介護福祉士は、5年ごとに更新が必要な資格です。
更新には、認定有効期間中に2年以上の実務経験があること、現任研修または介護福祉に関する研修で講師等の活動があることなどの条件を満たす必要があります。
介護支援専門員(ケアマネジャー)とは、介護を必要とする方が適切なサービスを受けられるように、施設や市町村など関係機関との連絡調整を行い、ケアプランの作成や給付管理を担う専門職です。
ケアマネジャーになるためには、まず「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格し、資格を得る必要があります。
【取得方法】
以下の受験資格を満たして、介護支援専門員実務研修受講試験に合格する
【受験資格】
1または2の実務経験が通算5年以上かつ900日以上
1. 介護福祉士、社会福祉士、医師、看護師などの国家資格等に基づく業務
2. 生活相談員、支援相談員などの相談援助業務
試験合格後は「介護支援専門員実務研修」の全日程を受講します。
受講後、3カ月以内に各都道府県の「介護支援専門員資格登録簿」へ登録申請し、「介護支援専門員証」が交付されれば、ケアマネジャーとして勤務可能です。
なお、介護支援専門員証には5年の有効期間があります。都道府県によっては、更新通知が発送されないため、注意しましょう。
必要な更新研修または専門研修の手続き方法は、各都道府県のwebサイトで確認できます。
介護のスキルアップにつながるおすすめの資格・研修には、以下が挙げられます。
■認知症ケア関連 |
・認知症介護実践者研修 |
■介護予防・レク関連 |
■医療的ケア関連 |
■難病患者や障害者へのケア関連 |
■国家資格 |
介護関連の資格は、介護福祉士などの主要なものだけではありません。
認知症、医療的ケアなど特定の分野に特化した研修・資格にも挑戦すると、ケアの知識や技術を深められます。
資格を取得すると、介護業界で働くうえでさまざまなメリットが得られます。
ここでは、上記4つのメリットについて詳しく解説します。
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、保有資格ごとの平均給与は以下のとおりです。
上位資格を取得するごとに収入が上がっていることがわかります。
保有資格 | 平均月給(常勤) |
介護支援専門員 | 376,770円 |
介護福祉士 | 331,080円 |
実務者研修 | 302,430円 |
初任者研修 | 300,240円 |
資格なし | 268,680円 |
施設・事業所によっては、保有資格に応じた資格手当を支給しているケースも少なくありません。
具体的な金額は職場によっても異なりますが、給料アップを目指す方は、積極的に資格を取得するとよいでしょう。
介護職は無資格・未経験からでも入職できますが、知識や技術を身に付けて資格を取ると、自信を持って利用者さんにサービス提供できるようになります。
「介助中に事故を起こしたらどうしよう」「利用者さんとのコミュニケーションの取り方がわからない」といった不安が軽減され、働きやすくなるでしょう。
また、介護スキルの向上は、自分の体を守ることにもつながります。
例えば、介助時の正しい身体の使い方(ボディメカニクス)を知らずに業務を続けると、介護職自身が足腰を痛めてしまうケースが少なくありません。
資格講座等で介護技術を磨くことで、利用者さんはもちろん介護職にとっても安全で負担の少ないケアが可能になります。
資格取得を通して身に付けたスキルは、日々のケアに役立つでしょう。
資格を取得すると、対応できる業務の幅が広がります。
例えば、介護福祉士や認定介護福祉士の資格を取ると、介護現場の中心的役割を担えるようになります。
リーダーとしてチームを引っ張り、ほかの介護職員への指導・育成を任される機会も増えるでしょう。
また、喀痰吸引等研修を修了して都道府県から認定証を交付されると、痰の吸引等のケアを行うことが可能になります。
新たに対応できる業務が増えると、自身の成長ややりがいにつながるでしょう。
資格を取得することで、応募できる職種の幅も広がります。
例えば、訪問介護のサービス提供責任者を目指す場合、実務者研修以上の資格があると要件を満たせます。
また、介護福祉士や介護支援専門員の資格を取ると、多くの自治体では生活相談員の資格要件を満たせます。
これまでの経験を生かして介護業界でキャリアチェンジしたい方は、希望職種の要件を確認して、必要な資格取得を目指すとよいでしょう。
資格があると、身に付けたスキルを客観的に証明できるため、転職活動でも有利に働きます。
特に即戦力を期待する職場では、無資格者に比べて採用されやすくなるでしょう。
たとえ現場経験がなくても、初任者研修などの資格があれば、介護の基礎知識を理解していると同時に、仕事に対して意欲的であることをアピールできます。
また、応募できる求人は保有資格によっても異なります。
上位資格を取得すると求人の選択肢が広がり、より希望に合う職場で働ける可能性が高まるでしょう。
介護に関する資格は種類が多く、受験要件もさまざまなため、以下の疑問を持つ方も多いでしょう。
介護の資格に関するよくある質問を取り上げ、わかりやすく回答します。
以下は、実務経験なしで取得を目指せる資格の一例です。
・認知症介護基礎研修
・介護職員初任者研修
・介護福祉士実務者研修 など
特に認知症介護基礎研修や初任者研修は、介護の資格のなかでも基礎的な内容を学べるため、未経験の方におすすめです。
また、初任者研修や実務者研修は、民間の資格スクールのほか、ハローワークでも取得できます。
受講条件や日程を確認し、自分に合う方法で取得を目指すとよいでしょう。
働きながら資格取得を目指す際、特に気になるのが「仕事と両立できるのか」ということでしょう。
多くの資格は、学習のための時間や費用がかかります。働きながら効率よく資格を取るには、以下の方法が有効です。
・無理なく通えるスクール(コース)を選ぶ
・国や自治体の支援制度を活用する
・資格取得支援制度のある職場で働く
スクールで資格取得を目指す場合は、講座の日程、レポートの提出スケジュール、かかる費用などをよく調べたうえで、仕事と両立できるコースを選びましょう。
通信学習だけでなく通学も必要な資格であれば、自宅や職場からの通いやすさも大事なポイントです。
コストを抑えて資格を取りたい方は、国や自治体の支援制度をチェックしましょう。
資格によっては「教育訓練給付制度」や「介護福祉士修学資金等貸付制度」などが利用でき、研修の受講料や試験対策にかかる費用を負担してもらえます。
勤務先の資格取得支援制度を活用するのもおすすめです。
支援体制の整った職場なら、費用やシフトの面でのサポートが期待できます。
働きながら無理なく資格を取りたい方は、転職・就職先を選ぶ際に、資格取得支援制度があるかも見ておくとよいでしょう。
スクールに通わず、完全に独学だけで取得できる介護関連の資格もあります。
介護職以外の職種も含め、介護業界で働く際に役立つ資格の例を紹介します。
認知症介助士は、認知症の方に寄り添うためのコミュニケーションや接遇・接客、正しい知識を身につける資格です。
取得することで、認知症を持つご本人やご家族への適切な支援につながります。
転職の際には、履歴書に保有資格として記載でき、仕事への熱意や認知症に関する知識をアピールできます。
受験資格の規定は特になく、検定試験を受けて合格すれば誰でも取得が可能です。
セミナーと試験がセットになった受験コースもありますが、自宅や会場で試験のみ受けることもできます。
【試験問題】30問(1問1答)
【試験時間】40分
【合格基準】21点以上
【合格率】約8割
【受験料】以下の通り(税込み)
・セミナー+検定
└テキスト込み:19,800円
└テキストなし:16,500円
・検定試験のみ:3,300円
介護事務は、介護施設・事業所において、来客対応や事務作業を担当する職種です。
介護事務に必須の資格はなく、無資格・未経験でも働けます。
ただし介護報酬請求業務など、介護保険制度の理解が必要な業務などもあり、知識が乏しいと難しく感じる場合もあります。
以下の資格を取得しておくと、介護施設全般の事務やレセプト作成業務に関する知識が得られ、入職後もスムーズに仕事を覚えやすくなるでしょう。
・介護事務管理士(R)
・ケアクラーク(R)
・介護報酬請求事務技能検定試験
上記に受験資格の規定はなく、試験に合格すれば資格を取得できます。
一定の知識を持っている証明になるため、転職時のアピールにもつながります。
【受験料】以下の通り(税込み)
・介護事務管理士(R):5,500円
・ケアクラーク(R):7,920円
・介護報酬請求事務技能検定試験:6,600円
福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障害者にとって快適な住環境を提案するアドバイザーです。
検定試験では、適切な支援のために必要な医療・福祉・建築の知識が問われます。
福祉用具を扱う福祉用具専門相談員のほか、利用者さんやご家族のニーズを聞く機会が多いケアマネジャーにも役立つスキルが身に付くでしょう。
公式のテキスト・練習問題を活用して学習を進めれば、合格の可能性が高まります。
また、1級・2級・3級ともに受験資格の規定はなく、途中の級からの受験も可能です。
【受験料】以下の通り(税込み)
・IBT方式:5,500円(3級)7,700円(2級)
・CBT方式:7,700円(3級)9,900円(2級)12,100円(1級)
※IBT方式…インターネット環境があれば自宅や会社でも受験できる
※CBT方式…テストセンターで受験する
介護の資格は、受講・受験要件などがない場合、順番を問わず取得可能です。
一方で、基礎的な資格から始めて段階的に上位資格を目指すと、知識を身に付けやすく、取得効率が上がるでしょう。
資格を取ると、給与やキャリアアップのチャンスが広がるなど、さまざまなメリットが得られます。
働きながら受講できる研修や独学で学習可能な資格もあるため、積極的に取得を目指してみてください。
また、仕事と両立して資格取得を目指すなら、無理なく通えるスクールを選ぶほか、自治体や職場の支援制度を活用するとよいでしょう。費用を抑えて効率よくスキルを磨くことが可能です。
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