毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「転職フェアでの良き出会い」という話題について紹介します。
「介護」について何も知らなかったシライさん
介護の仕事に強いあこがれを持って転職活動をする人がいる一方で、自分がどんな仕事がしたいのか、はっきりとわからない人もいるだろう。
自分が進みたい職種がはっきりしていない時に有効なのが「職場見学」や「転職フェア」。
現在、介護付き有料老人ホームで働く30代の女性・シライさんが転職フェアに参加したきっかけは、「自分が世間知らずだったから」だという。シライさんが言う。
「私は学生時代、勉強が得意ではなかったので、高校を出たら就職しようと思っていました。ただ、勉強も運動も苦手で、手先も器用ではなく、そもそもやりたいこともなく……というタイプでした。
とりあえず思いついた職業は警察官。教師や友人から向いていないと言われ、結局あっさりあきらめてしまいましたが、当時は他に仕事が浮かばなかったんです。『美容師は不器用だから無理だし、看護師は血が怖いし、バスガイドは車酔いしそうだし……』みたいな感じです。
高校卒業後はアルバイトをしていましたが、家族から『きちんとした仕事に就きなさい』と言われ、介護業界の転職・就職フェアに出かけました」
介護業界には職種も働き方もたくさん!
そんな経緯で介護関係の転職フェアに“たまたま”参加したシライさん。
そこで知ったのは、「『介護』と言っても、世の中にはこんなに色々な仕事があるんだ」という事実だったという。
「私は、『介護』と言えば、お年寄りの車椅子を押すぐらいかと思っていました。
しかし転職フェアで資料をもらい、色々なブースで説明を聞くと、介護業界だけでも、介護福祉士、ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士、ガイドヘルパーなど、色々な資格や仕事があることに驚きました。
働く場所も、ホームヘルパー、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、老人保健施設、デイサービスなど、実にさまざまな場所があることを知り、いかに自分が無知だったのかを思い知らされました」
介護について丁寧に教えてくれた老人ホームに感動
そしてある老人ホームのブースで、シライさんの人生が決まったそうだ。
「偶然立ち寄ったある老人ホームのブースで、私が介護業界のことをまったく知らないことを正直に話すと、施設の方が介護業界について丁寧に説明してくれた上、『色々な施設のブースを回って、色々な話を聞きなさい』と言ってくれたのです。
普通だったら、私みたいな世間知らずの子が来たら、『とにかくウチで働いてみなさい』と言うじゃないですか?
でも、その老人ホームの方だけは『ゆっくり考えなさい』『もし興味があったら一度見学においで』と言ってくれました」
後日、実際にその施設に見学に行ったシライさんはこう語る。
「実際に施設を見学に行った時にも、丁寧に介護の仕事について教えてもらえたし、何より職員の人たちの働きぶりに感動しました。『ここでこの人たちと一緒に働きたいな』と思って、その老人ホームで働くことを決めたんです」
その選択は間違っていなかったようで、シライさんは働きながら介護の資格を次々と取り、今では転職フェアで介護業界について“説明する側”に回っているのだそう。
転職フェアで、昔の自分のような“何も知らない子“がやってきた時には、自分がされたように『色々なブースを回って、色々な人の話を聞きなさい』とアドバイスしているそうだ。
転職フェアは、多くの企業と効率良く接触でき、現場の職員の人と知り合えるチャンス。気軽に足を運んでみると、シライさんのような良い出会いに巡り会えることもありそうだ。