外出自粛期間の終了、プロ野球やJリーグの観客上限緩和、GoToトラベルの開始など、新型コロナ騒動は徐々に“経済を動かしながら”というやり方に移行していますが、何をするにもコロナ対策が頭をよぎる状況は変わっていません。
今回は、コロナ下で開催された、介護業界の合同説明会での一幕をご紹介。
仕事がしたいはずなのにこんなこと言われたら、ちょっと信用できないですね……。
合同説明会は開催する?しない?コロナに振り回される採用活動
今回お話を聞いたのは、都内のある訪問介護事業所。
地元で開催される合同説明会に毎年参加してきたが、担当者のフジイさんによれば、今年は準備も本番もとにかく大変だったそうです。
「介護業界の合同説明会が例年、9月に開催されており、新年度に入ると同時に準備がスタートしていました。
今年は開催できるかどうかの判断が保留され、開催が決定したのは7月の下旬。あまりにも準備期間が短いので、参加を見合わせようかという声も上がりました。
ただ、長年付き合いのある団体が主催していること、地元自治体も絡むイベントで、欠席すると余計な軋轢が生じる可能性があること、そして何より、例年以上に参加者が増えそうだということで、参加を決めました」
合同説明会への出展は、準備が大変!コロナ対策まで…
合同説明会への出展にあたっては、パンフレットや解説パネルの作成、当日の説明会の模擬練習、大量の人員を取られるためのシフト調整、補助スタッフの手配、スタッフのお弁当の用意など、やることは大量……。
たった1か月で出展の準備をしなければいけないのに、今年度はさらにコロナ対策も必要で、みんなてんてこまい。コロナ対策については主催者から丁寧な注意やアドバイスがあり、一から考える必要はなかったものの、当日の苦労は想像以上だったそうです。
『コロナ対策万全のイベント』は裏の仕事が多かった
「合同説明会の当日は、関係者全員が消毒と検温を行い、当然のことながら関係者も参加者も全員マスク着用。
“三密”の回避のため、列は間隔を空けて並ぶように指示しますが、ブースによっては間隔が短くなったり、列が隣のブースにはみ出したりと、小さなトラブルはあちらこちらで発生していました。
来場者が使う筆記用具やバインダーなどはすべて使い捨てで、パイプ椅子もひとり座るごとに消毒スプレーとウェットティッシュで拭き、スタッフは手洗いと消毒スプレーの噴射を繰り返す1日でした」
マスク拒否の説明をしてよ…
ただ、こういった対策をすることで見えてきたこともあったという。
「コロナに対する姿勢が、どうしても採用に影響してくるのは否めません。
例えば、このご時世にマスク無しでやって来る人がおり、そういった人用のマスクを用意していましたが、着用を拒否する人もいました。
どういう考えがあるのかは知りませんが、少なくとも介護現場でマスク着用拒否はあり得ない。マスクができないならその理由を説明してほしいですし、介護現場のことを想像したことがあるのかな?と疑ってしまいますよね。
ウチのブースには来ていませんでしたが、どこか採用した事業所があったのか不明です……」
「ある一言」にカチーン!
さらに、フジイさんには気になった言葉があったと言います。
「私が話した参加者の中で気になったのは、『とりあえず』という言葉を使った人ですね。自身の窮状を散々訴えた挙げ句、結局言っていたのは『仕事も収入も減ったから、とりあえず介護で生活費を稼ぎたい』ということだけ。
私はムッとしてしまい、『いずれは前の仕事に戻りたいんですか?』と尋ねたら、マズいと思ったのか、バツが悪そうに『いや、できれば長く続けたいと……』と、答えていましたが、少なくともウチは、『とりあえず介護でも』なんて人はお断りです」
新型コロナ騒動では、悲劇的なダメージをくらった業種もあるのは万人が承知しているが、「だからとりあえず雇ってよ」という姿勢はいただけないですね。
資格や学歴を問わず、やる気があれば始めやすい介護の仕事。どんな働き方をしているのか?どんな仕事をしているのか?どんな人たちが働いているのか?介護現場を知ってほしい、というのが本音のようです。
「きっかけが何であれ、介護に興味を持ってくれたのはうれしいこと。介護という仕事のことをもっと知って欲しい」とフジイさんは語っていました。