毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「人の話をよく聞く人はヘルパーに不向き?」という話題について紹介します。
利用者の話をよく聞くことを心掛けたヘルパー
どんな仕事であれ、「人の話をよく聞く」というのは大事なこと。
とりわけ人と人のコミュニケーションがもっとも大切な介護業界では、人の話を聞けない人は不向きなように思われる。
ところが、訪問ヘルパーをすでに10年以上続けている40代の女性によれば、「人の話を聞き流すこと」も、ヘルパーの大事なスキルだという。
ミホコさんが語る。
「私がヘルパーになりたての頃は、利用者の言うことを一言一句聞き逃すまいと、常に神経を張り詰めていました。
『利用者さんがして欲しいことは全部してあげないと』と、利用者ひとりひとりが言ったことを、1人あたり1ページでノートにまとめて、訪問する前にチェックしていた時期もありました。
でも半年も経たずに『これはムダだ』と思ってやめてしまいました」
利用者の状態を細かく把握するのは、ヘルパーとしてとても大切なこと。
利用者ひとりひとりには連絡ノートがあるので、ミホコさんがやっていた作業はある意味で二度手間だが、「ムダ」とまで言い切るには、それなりの理由があったそうだ。
話の内容が180度変わってしまう利用者
「人間ってこれほどまでに言うことがコロコロ変わるものだということを、この仕事を始めてから知りました。
『熱いお茶が好きだ』と言ったかと思えば、『こんな熱いお茶は飲めない』と怒る。『風が気持ち良いから窓を開けてくれ』と言ったかと思えば、『ホコリが入るから窓を閉めろ』という。『テレビは大嫌いだ』と言ったかと思えば、『朝のドラマは欠かさず見ている』という。
そんなことの繰り返しです。
また男性の利用者だと、時にはセクハラみたいな質問もあるんですよね。そんな質問に対して、『そういう質問をされると困ります』といった具合にマジメに答えていたら、正直言ってこの仕事は務まりません。
決して利用者が仰ることを聞いていない、聞く必要がないというわけではありません。
ただ、すべてを真剣に聞いて対応しようとすると、時間もかかり、時にはストレスになってしまうことも。なので状況によっては、聞き流しながら相槌をうったり、聞こえなかったフリをするのも、ヘルパーの大事なスキルだと思います」
利用者の中には、他のヘルパーの悪口を延々と吹き込んでくる人もいて、その対象がミホコさんの苦手な人だったりすると、つい話にのりたい気持ちになってしまうそう。
だが、一緒になって悪口を言ってもあまりいいことはないので、心の中で頷きつつも、「へー、そうなんですか」と適度な相槌をうつようにしているそうだ。
利用者への対応は、その時々で変えることも大事なのかもしれない。