毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「方向音痴だと訪問ヘルパーになるのは難しい?」という話題について紹介します。
訪問ヘルパーなのに、筋金入りの方向音痴で大丈夫?
どんな人にも得手、不得手は必ずあるもの。
得意な人は「なんでそんな簡単なことができないの?」と、気軽に言いがちだが、苦手な人にとっては深刻なのが「方向音痴」だ。
ホームヘルパーという仕事は、いろいろなお宅に訪問して介護を行うものだが、方向音痴でもやっていけるのだろうか。
都内の介護事業所でホームヘルパーとして働くマツヤマさん(50代・女性)は、自他ともに認める筋金入りの方向音痴。そのスケールはケタ外れだ。
マツヤマさんが語る。
「私は昔からとにかく方向音痴で、行きたい場所に一発で行けた試しがありませんでした。
新宿駅で、西口から東口に行くのに2時間以上かかったことがありますし、新宿駅から新宿御苑に行こうとして道を尋ねたところ『ずっとまっすぐ行けば15分ほどで着く』と言われたのでそのまま進んだら、新宿御苑を通り越して1時間も歩き、皇居まで行ってしまったこともありました。海外旅行に行った際、ホテルの中で部屋に戻れなくなり、『行方不明になった』と、大騒ぎになったこともあります」
30年近く暮らした実家に久しぶりに帰った際にも、最寄駅から家までたどり着くことができず、家族に迎えに来てもらったと豪語するマツヤマさん。そんな彼女はなぜホームヘルパーとして働くことを選んだのだろうか?
「昔からお年寄りが大好きで、ずっとお年寄りに携わる仕事がしたかったんです。ただ、家庭の都合でフルタイムで働くことができないので、働く時間を自由に選べるホームヘルパーとして働こうと思い、必要な資格を取りました」
道に迷わず利用者宅へ訪問するために、必死に努力!
ホームヘルパーは、利用者のお宅にお邪魔するのが仕事だ。国立競技場や帝国ホテルなど、目立つ建物が目的地でも1人ではたどり着けないほどの方向音痴のマツヤマさんは、きちんと仕事ができているのだろうか?
「決められた時間にお宅に伺わなければいけませんので、初めて行くお宅はあらかじめ下見をします。そして、最短距離でなくても良いので、目印になるものがあるルートを見つけ、道順を詳細にメモしていました。
最近は、娘に薦められて、スマートフォンを買い、道案内をしてくれるアプリを入れました。そのアプリは、目的地を入れると音声で道を案内してくれるのです。
思えば今までは“甘え”があったようにも思いますね。『私は方向音痴だから、迷っても仕方ない』『迷って遅れても、方向音痴のせいだから、私は悪くない』と思っていたような気がします。
けれど、ホームヘルパーの私が遅刻してしまったら、社会人として失格なのは当然ですが、利用者さんの命に関わることがあるかもしれません。やっぱり人間、必死になれば間違えないようになるものです」
幸いなことに、マツヤマさんが利用者の家にたどり着けなかったことはないそうだ。それでも、広いお宅では“プチ迷子”になることはしょっちゅうで、今や彼女の方向音痴ぶりは利用者にも知れ渡っているという。
方向音痴を直すことはなかなか難しいようだが、自分が苦手なことを理解すれば、努力次第で仕事をこなすことはできそうだ。