毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は「下の世話は大変」という話題について紹介します。
介護の仕事って、おむつ交換ばかり?
「介護」という単語はニュースや新聞などに頻繁に登場するが、現場では切実な問題なのに、なかなか報じられないのが「排泄ケア」。関西地方の事業所で訪問ヘルパーとして働くTさんは、「排泄処理をしたくない、できない人はヘルパーにはなれないし、なるべきではない」と言う。
数年前にTさんの下で働き、わずか1年半ほどでヘルパーをやめてしまった20代の男性。Tさんがその後輩に退職の理由を尋ねたところ、
「介護の仕事って、車いすを押しながらお年寄りと話したり、歩く時に手を貸したりするような仕事だと思っていたのに、実際はおむつ交換とか排泄処理ばっかりじゃないですか」
という返事が返ってきたという。Tさんはその返事を聞き、
「相手がして欲しいことをするのがヘルパーの仕事。しかも老人たちは、自分で排泄をしたくてもできないの。それをやりたくないというのなら辞めなさい」
と、激昂してしまったそうだ。
しかし今では、「まだ親の介護経験もない20代の男の子が、『一生、お年寄りの排泄物の処理をしていくのか…』と考えてしまった気持ちは分からなくもない」と、一定の理解を示している。
つまり、ヘルパーの仕事において「排泄処理」は、それほどのパーセンテージを占めているのだ。
実は、先輩Tさんにも職業病が…
Tさんは、これまでのヘルパー歴において、数えきれないほどの排泄ケアをしてきた。認知症の利用者のお宅を訪れた際には、廊下や床などにポロリと排泄物が落ちていたり、それを踏んでしまったりといったことも何度も経験してきた。
「そんなことをいちいち気にしていたら務まらないのがヘルパーという仕事ですから」と言うTさん。しかし、そんなTさんにも職業病がある。
Tさんは、外見が排泄物に似ている食べ物は、苦手なそうなのだ(読者が同じ思いをしないよう、あえてその料理名は伏せておく)。当初、避けていた記憶はまったくなかったそうだが、ある時から意識するようになってしまい、なんとなく食べる気が起きなくなったそうだ。
介護スタッフを悩ませる排泄の問題。しかし排泄は、自分自身も含め、すべての人に起こる生理現象。決して避けて通ることはできない。また、適切な排泄ケアは、高齢者の尊厳を守る専門性の高い仕事。正しい排泄ケアやトイレ誘導によっておむつが不要になり、認知症や要介護度が改善した、という例も多い。
「私が一番やりがいを感じるのは排泄ケアです!」
今後、そんなヘルパーが増えることを期待したい。
公開日:2015/5/18
最終更新日:2019/5/25