毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「まじめ過ぎるのも考えモノ」という話題について紹介します。
“マニュアル通り”にこだわる介護職
どんな職業であれ、仕事を不まじめにこなして良いはずはないが、「まじめ過ぎるのも考えモノ」なのも、これまた事実。
“まじめ”を辞書で引くと、「本気であること、真心がこもっていること、誠実なこと」とある。しかし“くそまじめ”だと「極めて物事に対して真摯で、それゆえに融通が利かない人物のこと」となる。表裏一体なのだ。
都内の介護施設に勤めるAさんは、自分の周りでこれまで何人もの「まじめ過ぎる介護職」を見てきたという。
Bさんという女性は、いくつもの介護施設を転々と渡り歩き、Aさんが働く施設に入ってきた女性。経験豊富なBさんには大きな期待が集まったが、Aさんは程なく、Bさんがなぜ仕事先を転々と変わっているのかを理解したという。Aさんが振り返る。
「Bさんは、熱心ではあるものの、とにかくマニュアル通りに仕事を進めたい人でした。先輩スタッフが何か指示を出しても、『マニュアルと違います』『○時までにこれをやらないと』、利用者が文句を言っても『規則ですから』といった具合に、とにかく聞く耳を持たない。もちろんマニュアルがあることは分かっていますが、人間を相手にした仕事ですから臨機応変に対応してもらわないと、結局他のスタッフが困ることになるんです」
挙句の果てにBさんは、「こんな所では働けない」と捨て台詞を残し、1年足らずで辞めてしまったのだとか。またこんな女性もいたという。
責任感が強すぎて、周りのスタッフと…
「Cさんは、とにかく責任感が強すぎる人でした。『前の日の仕事が終わっていない』と言って早朝出勤するような姿勢は素晴らしかったんですが…。Cさんが忙しそうな時に見かねて、『私がやるから』とか『手伝おうか?』などと言うと、『私の担当なんで結構です』って返事が返ってくるんです。そんな態度じゃ周りのスタッフとは上手くいきませんよね」
そう語るAさん。しかしかくいうAさんも、まじめ過ぎる自分を反省した“事件”があったという。
「この仕事を始めた頃、理想に燃えていた自分には、利用者とおしゃべりに興じている先輩が手抜きをしているように見えたんです。それに反発して『私は完璧にやってみせる』と、頑張っていたのですが、ある日利用者からクレームが入ったんです。『あの人は好きじゃない』と。
私は、先輩のことを『利用者とおしゃべりしてサボっているダメなスタッフ』と思っていたんですけど、それは誤っていたんです。利用者にとっての良いスタッフは、事務的に仕事をこなす自分ではなくて、おしゃべりの相手になってくれる先輩スタッフだった。仕事を完璧にやろうという気持ちが強すぎて、利用者の気持ちを汲むことが後回しになっていたんです」
Aさんがそのことに気付き、飲み会の席で思っていたことを言うと、先輩は「私も同じようなものだったから気にしないで。これからも頑張ってね」と、優しい言葉をかけてくれたのだとか。
“まじめ”なのは大いに結構だが、度が過ぎて、融通が利かない状態になっていないか、気を付けた方がいいかもしれない。
公開日:2015/11/30
最終更新日:2019/4/7