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2015年02月18日

【2015 介護保険改正3】介護サービス利用時の、払い戻し額が減る!? | 介護求人ナビ お役立ち情報

3_12015年度の介護保険制度改正で変わる、利用者の費用負担について解説する連載は第3回目を迎えます。今回は「高額介護サービス費の負担上限の引き上げ」についてお伝えします。

実は、この引き上げの影響を直接受けるのは、現役並みの所得がある利用者さんだけです。「それなら、影響は少ない」と思う人もいるかもしれません。
しかし、この「高額介護サービス費」自体は、第2回で語った介護サービス費の自己負担と関係してきます。

昨年まで「高額介護サービス費」とは縁のなかった利用者さんも、今回の改正で支払が高額になり、この払い戻しを受ける対象になる可能性があります。

「介護報酬や利用者さんの支払いの金額はケアマネジャーにお任せ」、「介護職員やヘルパーには関係ない」、という人は多いでしょう。しかし、介護の基礎知識としてみなさんに知っておいてほしい内容です。この際、きちんと把握しておきましょう。東洋大学 准教授の高野龍昭さんに解説してもらいました。

*適用されるのは介護保険の第1号被保険者です。第1号被保険者とは、市町村内に住所がある65歳以上を指します。

<監修・解説:東洋大学 准教授 高野龍昭 / 文:三輪泉(ライター・社会福祉士)>


高額介護サービス費とは、自己負担を軽減してくれる仕組み

高額介護サービス費とは何か、まずはそこから解説しましょう。

介護サービスを利用して支払った1割の自己負担額が、1カ月の合計で下の表の「上限額」を超えた場合、その超えた分を、介護保険から高額介護サービス費として払い戻ししてもらえる制度です。自己負担が多くなりすぎてしまった人を救済するために設けられており、月ごとに計算します。
ただし、要介護度に応じて介護保険でまかなう介護サービスを超えて、「自費」で支払ったサービスについては、該当しないので、注意してください。

介護サービス費の自己負担の上限額は、下の表のように、所得に応じて4段階に分かれ、低所得の方ほど上限額を低く設定。負担が少なくてすむように考えられています。



●高額介護サービス費の1カ月あたりの自己負担上限額(2015年3月まで)
無題11

この4段階が、2015年8月から下記の通り5つの区分に変わります。



●高額介護サービス費の1カ月あたりの自己負担上限額(2015年8月から)
無題13
なお2015年4月~7月は、8月からの段階変更に向けて整理・統合が行われるため下記のようになります。
(基本的には2015年3月までと同じですが、段階の名称などが変わっています)



●高額介護サービス費の1カ月あたりの自己負担上限額(2015年4月から7月まで)
無題14
上限額の設定は、旧第1・第2段階、新第1段階は個人単位ですが、そのほかは世帯単位になっています。同じ世帯に複数の介護保険利用者がいる場合は、世帯で合算して計算します。

では、下記の2つの例を見てみましょう。

例 1
世帯全員が住民税非課税で、年金収入が80万円以下の場合 <第2段階に相当>
介護保険サービスを利用して負担する1割分が夫婦それぞれ1万9800円以上だったとします。この場合、1人あたりの負担上限額が1万5000円なので、
1万9800円-1万5000円=4800円。
1人あたりの自己負担上限額を越えた分として、4800円の払い戻しを、夫婦それぞれが受けられます。

例 2
世帯全員が一般世帯(住民税課税)の場合 <第4段階に相当>
夫が3万円、妻が2万円の介護保険サービスの1割負担をしたとします。
この場合、世帯あたりの負担上限額が3万7200円ですから、3万円+2万円-3万7200円=1万2800円。
1世帯あたりの自己負担上限額を越えた分として、12800円が払い戻しされます。

なお、上記1万2800円は夫婦の合計額ですが、実際にはそれぞれ支払った金額の比率によって計算され、個人に対して払い戻されます。この場合、夫に7680円、妻に5120円と分けられます。


高額介護サービス費の恩恵を受けにくくなるのは、現役並みの所得のある人

3_22015年8月の改正では、前述の「第4段階」、つまり一般世帯の自己負担金額が増えます。
と言っても、一般世帯すべてが対象ではありません。第4段階をさらに2つに分けて、所得が「現役並み」とされる世帯だけに、負担が増えます。
現役並みの所得とは、単身者では所得383万円以上、夫婦世帯は520万円以上が対象。この場合、上限額の月額3万7200円が4万4400円に引き上げられます。
年金収入だけの方なら、ほぼ該当しないでしょう。

ただし、注意が必要なのは、2015年8月分からは、全員の自己負担限度額が月額4万4400円に一旦引き上げられる点です。
そのうえで、現役並み所得者以外の人は市町村に「現役並み所得者ではないこと」の申請を行い、限度額を月額3万7200円に引き下げる措置を受ける必要があります。この引き下げの申請は、申請を行った日の翌月の利用料から対象となりますので、あらかじめ申請手続きをすることが欠かせません。それを行わない場合、現役並み所得者として扱われますので、くれぐれも忘れないようにしてください。


自己負担が2割に増える人は、高額介護サービス費の払い戻しを受けやすい

3_3介護保険の利用料はもともとそんなに多くないし、現役並みの所得もない。そんな利用者でも、第1回で解説したように、年金収入が280万円以上の人は、今回の改正で介護サービス費の自己負担分が2割になります。

今までの自己負担金が2万円だったとしたら、2015年の8月から4万円に上がるということです。すると、高額介護サービス費の対象となり、上限金額を超える場合があります。

具体的に見てみましょう。

夫の収入が290万円、妻が66万円の場合だった場合、介護保険改正後には、夫の自己負担は2割に増えます。いままで夫の自己負担金額が2万円だったとしたら4万円になります。このとき、妻は自己負担1割のままですから、1万円だったとしたら、改正後も1万円のままです。

<介護保険改正前>
2万円(夫の自己負担1割分)+1万円(妻の自己負担1割分)=3万円
この世帯の場合の自己負担上限額は3万7200円のため、上限内におさまっており、払い戻しはなし
yajirusi1





<介護保険改正後>
4万円(夫の自己負担2割分)+1万円(妻の自己負担1割分)=5万円
この世帯の場合の自己負担上限額は3万7200円のため、それを超えた分は払い戻される。
5万円-3万7200円=1万2800円。
1万2800円の払い戻しがあるため、実際の負担額は5万円-1万2800円=3万7200円になる。




2割負担には増えたものの、高額介護サービス費の給付対象になったため、実際の負担額増は3万円を超えた分の、7200円のみ。1割が2割になったものの、金額が2倍になったのではなく、1.24倍にとどまったということになります。

影響の受け方は、第1~4のどの段階にいるのか、実際に払っている金額がいくらなのかによって異なります。



例えば、収入額の条件は上記のままだったとして
現在の夫の自己負担金額が3万円、妻が2万円だったとした場合、改正前後で金額は変わりません。

<介護保険改正前>
3万円(夫の自己負担1割分)+2万円(妻の自己負担1割分)=5万円
自己負担上限額を超えているため、5万円-3万7200円(自己負担上限額)=1万2800円。
1万2800円の払い戻しがあるため、実際の負担額は5万円-1万2800円=3万7200円。
yajirusi1

<介護保険改正後>
6万円(夫の自己負担2割分)+2万円(妻の自己負担1割分)=8万円
自己負担上限額を超えているため、8万円-3万7200円(自己負担上限額)=4万2800円。
4万2800円の払い戻しがあるため、実際の負担額は8万円-4万2800円=3万7200円。

4万2800円は高額介護サービス費から払い戻してもらえるため、2割に増えることで実質的に2倍になった自己負担金も、帳消しになります。
つまり、自己負担が1割から2割になった人でも、高額介護サービス費の区分で「現役並み所得者ではない階層」に該当する場合は、その前と遜色なく暮らすことができる場合があります。
(ただし、現役並み所得者ではないという申請を必ず行う必要があります)

と言っても、上記は、以前から自己負担金額を超えていたケース。自己負担条件金額を超えない限り、やはり金額の負担は増える仕組みになっています。



「ややこしくて、お手上げ!」と放り出さないでください。利用者さんの費用負担が変われば、事業者に求められることも変わります。最悪の場合、利用をストップすることも考えられます。払い戻しの原則を頭にいれ、該当しそうな利用者さんを、事業者全体で把握しておく必要があります

施行は8月なので、「まだ間がある」などと思っていると、あっという間に時間が過ぎ去ります。早い段階で会議を開き、該当する利用者さんをピックアップして、それぞれに対策を考えることが必要でしょう。

次回は、特養などの居住費や食費が負担軽減されなくなる事例に注目します。


*「2015年介護保険改正」特集の記事をすべて見る

●こちらの記事も参考に
→介護職なら知っておきたい!2018年度介護保険改正で介護医療院を新設
→次回、2018年の介護保険改正はどうなる?全員2割負担、市町村の指導…

プロフィール

prof東洋大学 ライフデザイン学部 准教授 
高野龍昭(たかの・たつあき)
社会福祉士・介護支援専門員。医療ソーシャルワーカーと高齢者分野の社会福祉士の業務を経て、‘94年に介護支援専門員(ケアマネジャー)に。通算19年の相談援助の現場実践を重ねたあと、’05年より東洋大学で教員に。著書に『これならわかる<スッキリ図解>介護保険 2015年速報版』(翔泳社)など。
3月には『速報版』をさらに詳しく論じた『これならわかる〈スッキリ図解〉2015年完全版(仮)』(翔泳社)が出版予定。

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