■書名:現場で使える 認知症ケア便利帖
■著者:田中 元
■発行:翔泳社
■発行年月:2016年7月
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うまくいく認知症ケアとは? 実践に基づいた認知症ケアのノウハウ集
本書によると、要支援・要介護認定を受けた人のうち、半分以上は認知症日常自立度II以上というデータがあるという。
日常自立度II以上の人は、認知症があることで、「日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さ」が見られる状態だ。
つまり介護現場での業務の大半は、認知症に関わる対応を行うことが予想される。「認知症ケア」は、介護現場で働く人のスキルの土台ともいえるものだ。
本書は、そのような現場での必須スキルとも言える「認知症ケア」についてのノウハウをまとめた一冊。
「認知症の人を施設に受け入れる」といっても、対応にあたるスタッフが認知症やケア方法についてバラバラの意識を持っていては、まとまりのある対応をすることはできない。
そこで大切なのは、認知症についての基本知識をベースとしつつ、現場における実際のケアを組み立てていくこと。
本書ではどのようにチームで情報を共有し、実践して、モニタリングをしていくかを、さまざまなケースに応じて解説している。
最初は、「認知症ケアの基本的な流れ」として、認知症がどのような病気なのか、なぜ早期発見が必要なのかを解説。認知症について理解を深めたあとに、「認知症ケアの計画作成」に入る。
認知症ケアにはとても大切な初期情報の取得についてや、認知症になっても自分らしく過ごせる環境を考えるためのアセスメントの取り方なども細かく紹介。
文章での解説だけでなく、実践シートも紹介されているため、どうケアしていけばいいのか一目瞭然だ。
シートは本書に記載されているURLから無料ダウンロードすることができ、チームでの情報共有に役立てることができる。
シートは、下記のようなものなどさまざまな種類が用意されている。業務の見直し・改善など、チームケアに有効に使えるのではないだろうか。
・認知症の人の生活像を知るためのシート
・認知症ケアのための課題分析シート
・現場での事故防止シート
・服薬管理シート
・認知症の人の「家族」援助ノート
・従事者のための「相談申請」ノート
・利用者との向き合い方シート など
本書では認知症ケアのノウハウを紹介しているが、入職したての新人やチームを束ねるリーダー、管理職まで、発信している情報は幅広い。
新人が心がけておくべきことや、現場に慣れてきたころに実践したいスキルアップ方法、スタッフの成長に向けたプラン計画などの情報も満載だ。
<どんなに知識にふれても、いざ現場に入って認知症の人と接したとき、どこまで「その人らしい生活」を実現するためのケアができるでしょうか。
(中略)具体的にどこから何をすればいいのかについては、特に入職間もない中での現場に慣れていない人は戸惑いの連続になりがちです。
(中略)戸惑いの連続は、心と身体をすり減らすことになりかねません。これを防ぐには、認知症の人を受け入れる入口から、チームとして適切なケアの流れを築くことが必要です。>
認知症ケアのノウハウのほか、医師や看護師、リハビリ専門職など他の職種との連携や、地域との関わり方なども解説。自分のポジションによって、多くの使い方ができるのではないだろうか。
また巻末には、治療薬、制度や相談機関、用語集などの情報も掲載されており、施設や事業所に1冊あればさまざまな場面で役立つ一冊となっている。
著者プロフィール
田中元(たなか・はじめ)さん
群馬県出身。立教大学法学部卒業。介護福祉ジャーナリスト。出版社勤務後、雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。主に高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオでのコメンテーター、講演等の活動を精力的に行っている。