■書名:CD付き 高齢者のための元気が出る!音楽レクリエーション
■監修:NPO法人 オフィスリブスタイル
■発行元:ナツメ社
■発行年月:2014年10月1日
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コミュニケーションが深まる音楽レクリエーションのすすめ
高齢者向けのレクリエーションのメニューやヒントをまとめた本はいろいろあるが、本書が紹介しているのは、音楽を使ったレクリエーション「音楽レク」というジャンルだ。「音楽レク」の効能として本書では次の4つを挙げている。
●歌を歌うことで心肺機能を高める
●聴覚だけでなく五感に働きかけ、脳を活性化する
●不安を軽くしたり、感情を動かす
●音楽を通じてコミュニケーションを促す
音楽があることで楽しく進められ、自然と笑顔になれる。みんなで歌えば自然と声が出るし、音楽に合わせると体も自然に動く。そうした音楽レクならではの魅力がある。
さらに紹介するプログラムは「音楽療法」の考え方がベースになっているという。
<本書で紹介する音楽レクは、歌うだけでなく、体を動かしたり、他者とのコミュニケーションを促す内容をふんだんに取り入れており、施設職員が簡単に行える、プロの音楽療法士のワザを知ることができます。>
その内容を見ていこう。
本書には、76のプログラムが「音楽を使った体操」「音楽ゲーム」「季節の歌とお話で盛り上がるレク」「民謡を用いたレク」の4章に分けて紹介されている。歌う前の発声練習を兼ねたレクから、嚥下予防体操、ツボ押し、楽器づくりなど、非常にバリエーションが豊かだ。正しい歌詞に並べ替えたり、イントロで曲名と歌手を当てたり、『黒田節』と『炭坑節』の歌詞を入れ替えたり…と、脳の活性化につながるものも多数ある。
<歌で季節を感じたり、歌詞から昔を回想するのは、認知機能の改善にもよいといわれています。>
<日々の営みを歌う民謡は、生活の一場面や自然をテーマにしたものが多く、故郷の記憶を呼び起こす回想療法的な効果もあります。>
それぞれのプログラムごとに、進め方や楽しむためのポイントが解説される。ゲームの手順もカラーのイラストを見れば一目瞭然。また、アレンジのコツが示されているので、人数や難易度に合わせて変化がつけられるのもうれしい。付属のCDには、インストゥルメンタルの音源41曲、全63曲の歌詞カードが収録されているから、本を見てすぐに実践できる。また、「体」「頭」「ふれあい」「対抗」など、それぞれのレクリエーションの効果がアイコンで示してあるので、目的に合わせてプログラムを選べるのも便利だ。
一方、介護スタッフがレクリエーションを担当するときに最も悩むのは、盛り上げ方ではないだろうか。ただ歌って終わりだったり、ゲームをこなしておしまいでは、利用者は楽しむというより、やらされているだけになってしまう。
そこで本書には、利用者同士の対話や交流を促す仕組みが盛り込まれている。たとえば、誰かが止めないとエンドレスになってしまう『金比羅船々』を使ったレクや、民謡を舞台にみんなで日本地図を作るレク。また、イントロクイズから曲にまつわる思い出話を語り合うといったアイデアなど。
さらに、スタッフと利用者の会話を盛り上げるのもレクリエーションの大切な要素。本書には、各プログラムに、利用者との会話のきっかけを作るひと言が添えられている。会話が弾むことで、レクリエーション自体も自然と盛り上がる。利用者とのコミュニケーションを深めるきっかけにもなるはずだ。
高齢者にレクリエーションを楽しんでもらうには、スタッフ自身が楽しむ姿勢が大切だろう。本書はカラフルなイラストも楽しく、見ていると自然と「やってみたい」と思える作りになっている。ぜひ活用してみてはいかがだろうか。
<小田>
監修者プロフィール
NPO法人 オフィスリブスタイル
2006年(平成18年)設立。音楽を通してすべての人が生きがいをもち、笑い合えるようにと、社会的弱者を音楽療法の分野からサポートしている。高齢者や知的障害者、知的障害児を対象とした音楽療法活動を中心に、子どもやフリースクール、DV被害者の会などへも幅広く支援の輪を広げている。