■書名:こわい肺炎から命を守る!ゴエン予防体操
■著者:久野 秀隆
■出版社:SDP
■発行年月:2018年4月
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楽しく簡単なエクササイズで、飲み込む力を鍛えて肺炎を予防しよう!
「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」は、高齢者の死亡原因の一つ。
気道内に唾液や食べ物が誤って入ることから発症するこの「誤嚥性肺炎」という病気は、嚥下(えんげ)する力(飲み込む力)の低下が原因と言われている。
高齢者の飲み込む力を維持することは、介護の世界ではごく当たり前のこととなってきている。
しかし、実際にどのようなケアや対策を行えばよいのかとなると、悩む方も多いのではないだろうか。そのような時に役立つのが本書だ。
著者の久野さんは、65歳以上の高齢者の方を対象に、健康づくりの方法や運動を指導する介護予防トレーナー。
各地を巡ってたくさんの高齢者と出会ってきたが、元気な高齢者がいる一方で、要介護状態や寝たきりの人もいた。その違いは、年齢とともに衰える筋肉をどれだけ維持し、生活の質を落とさないかにあるという。
<のどとそのまわりが元気を失うと、飲み込む、喋る、笑う、呼吸をするのに不自由が生じ、やがては体全体が衰えてしまう恐れが少なくありません。介護の世界では「握力の衰えは全身の衰え」ということが言われますが、私などは「のどの衰えは生きる力の衰え」と思うこともしばしばです。>
本書では、最初にのどや口の機能について医学的な説明をして、誤嚥性肺炎が起こる仕組みが解説されている。
その上で「飲み込む」「吐き出す」「息を吸う」「息を吐く」という4つの力を維持するための体操を紹介。
のどだけではなく正しい呼吸に必要な胸やおなかの筋肉を刺激する効果も狙って、基本編5種類と応用編7種類の12種類の体操の方法が解説されている。それぞれ10回を目標に毎回の食事前にやると、口やのどの動きがよくなって、誤嚥を減らすことができるという。
基本編1 考える人体操
基本編2 カメレオン体操
基本編3 フグ体操
基本編4 アザラシ体操
基本編5 ワッハッハ体操
応用編1 手鏡体操
応用編2 柿もぎ体操
応用編3 壁押し体操
応用編4 合掌体操
応用編5 お盆持ち体操
応用編6 押し出し体操
応用編7 首回し体操
『基本編』では、のどや口を中心とした顔の筋肉を鍛え、『応用編』では胸やおなかなど上半身の筋肉にも働きかける体操となっている。
どの体操も簡単で、ネーミングもそれぞれの動作の特徴をよく捉えているので理解しやすい。オールカラーで写真も大きく、ポイントも適切に解説されている。
さまざまな筋肉を使う体操なので、誤嚥を防ぐためだけではなく、顔のたるみやしわを伸ばしたり、腰痛予防にも。この体操を続けていけば、表情をうまく作れない人に笑顔が戻るかもしれないという嬉しい効果も期待できそうだ。
さらに画面上の動きを見ながら一緒に体操ができるようDVDがついているのも嬉しい。
誤嚥についての基本知識が学べる「はじめに」から始まり、「準備運動編」「5つの基本編」「7つの応用編」「毎日の体操」の5つのチャプターに分かれており、必要な運動を選択できるようになっている。
注意すべきポイントはテロップで流れるし、体操の名称が右上に出ているので、いま何の体操をしているのかもすぐにわかるように工夫されている。
全編通しても30分程度、「毎日の体操」だけだと基本編・応用編の12の体操を10分程度で行えるので気軽に活用できる。
本書を使って自分の施設の利用者にのどを鍛えてもらい誤嚥性肺炎を予防し、楽しくおいしい食生活の実現を目指してみてはいかがだろうか。
著者プロフィール
久野 秀隆(ひさの・ひでたか)さん
有限会社ビーアウェイク代表取締役。パーソナルトレーナーとして活動後、2012年からは地域の方に会いに行くというかたちで介護予防に転身。神奈川県を中心に35市町村の町内会・自治会・老人会向けの体操指導、病院・介護保険事務所の研修や機能訓練指導を担当。延べ5,000件の教室で、年間6万人に指導を実施している。