医療機関での医療職のアシスト役として欠かせない存在である「医療事務」。医療に関する専門的な知識や技能を要する職業なので、資格を取得することでスキルや技術の証明となり、医療事務への就職や転職の際は採用への強みになるでしょう。この記事では、医療事務におすすめの資格試験について解説します。
目次
1 医療事務とは
2 医療事務が資格を取るメリット
3 医療事務におすすめの資格試験
医療事務技能認定試験
医療事務検定試験
医療事務認定実務者試験
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
医事コンピューター技能検定試験
医科医療事務管理士技能認定試験
診療報酬請求事務能力認定試験
4 医療事務の資格試験に合格して就職を有利にすすめよう
医療事務とは病院やクリニックといった医療機関で働く事務職を指します。
医療機関での受付や会計など患者さんへの対応のほか、レセプト業務やクラーク業務、入退院受付対応などさまざまな業務を担います。
特別に必要な資格はなく未経験でも挑戦できるうえ、結婚や育児、介護などで離職した場合も復職しやすいので、女性からの人気が高い職業の1つです。
医療事務の特徴の1つとして、特定の資格や免許を持っていなくても就職できる職種ということが挙げられます。
ただし、医療報酬の計算やレセプト業務など専門的な知識を要するので、医療事務として活躍を望む場合は資格を取得することがおすすめです。
また、資格を取得していれば就職や転職を希望する際に医療事務に必要な技能を証明できるので、採用への強みとなるでしょう。
医療事務に関する資格の多くは民間資格であり、資格試験の種類は下記のように多岐にわたります。
ここでは、医療事務におすすめの資格試験の概要や難易度について解説します。
自分のレベルや目指すスキルに合わせて資格を取得しましょう。
医療事務技能認定試験とは、技能認定振興協会が主催する医療事務を目指す方向けの資格試験です。
医療事務を目指す方にとって理解しておくべき基本的な事項や診療報酬の算定ルール、要件を理解していることを認定・評価します。合格することで「医療事務技能試験合格」の認定合格証が交付されます。
医療事務技能認定試験の概要については、下記の表のとおりです。
試験場所 | 在宅試験 | インターネット試験 |
受験資格・年齢制限 |
なし | なし |
試験内容 |
実技試験が10問・学科試験が40問(選択式) | 実技試験が10問・学科試験が40問(選択式) |
受験料 |
5,000円(税込み) | 5,000円(税込み) |
合格基準 |
総得点の80%以上 | 総得点の70%以上 |
試験は在宅もしくはインターネット受験が可能です。
なお、試験にはテキストの持ち込みが可能となっています。出題された問題に対して、参考書から的確に情報を探し出し回答できるかが合格へのポイントとなるでしょう。
試験勉強としてレセプトを多く作成することが、合格の秘訣です。
医療事務技能認定試験の合格率は85%程度となっています。
合格率は比較的高く、難易度はそれほど高くないと言えるでしょう。
医療事務検定試験は、日本医療事務協会が主催する試験です。
医療保険制度や患者さんへの対応、医療費計算などの医療事務業務全般の基本的な知識と技術を審査します。
試験に合格すると、転職や就職の際に履歴書の資格欄に「日本医療事務協会主催 医療事務検定試験 合格」と記載が可能です。
医療事務検定試験の概要については、下記の表のとおりです。
試験場所 | 会場受験 | 自宅受験 |
受験資格 |
医療事務講座(通学・通信コース)の受講生であること。(全10回の授業のうち8回以上出席) | 医療事務講座(通学・通信コース)の受講生であること。(全課題の提出が必要) |
試験内容 |
実技試験:会計欄作成(外来・入院1問ずつ) 学科試験:記述問題5問・正誤問題20問 |
実技試験:会計欄作成(外来・入院1問ずつ) 学科試験:記述問題5問・正誤問題20問 |
受験料 |
7,700円 | 7,700円 |
合格基準 |
非公開 | 非公開 |
試験は会場もしくは自宅で受験できます。
試験には教材や資料の持ち込みができ、実技試験では計算機の使用が可能です。
直近の2022年度の試験合格率は90.5%です。
全体的に合格率は高いので、難易度は高くはないと言えるでしょう。
医療事務認定実務者試験は、全国医療福祉教育協会が主催する試験です。
医療事務に関する基礎知識やレセプト作成問題などが出題され、医療事務の実務による基本的な熟練度を、試験を通して客観的に判断されます。
医療事務認定実務者試験の概要については、下記の表のとおりです。
試験場所 | 会場受験 | 在宅受験(日本国内のみ) |
受験資格 |
なし | なし |
試験内容 |
実技試験:診療報酬明細書の作成 学科試験:マナー・医療機関での各種制度・医療事務や診療報酬に関する知識など30問 |
実技試験:診療報酬明細書の作成 学科試験:マナー・医療機関での各種制度・医療事務や診療報酬に関する知識など30問 |
受験料 |
5,000円(団体受験4,500円) | 5,000円 |
合格基準 |
実技・学科の正答率がそれぞれ6割以上 | 実技・学科の正答率がそれぞれ6割以上 |
試験には、資格勉強で使用したノートや資料の持ち込みができます。
また、実技試験の診療報酬明細書の作成には、計算機の使用が可能です。
医療事務認定実務者試験の合格率は60~80%と結果にやや幅があります。
難易度自体はそれほど高くはありませんが、油断をすると不合格になってしまう可能性があるので、しっかりと対策を行いましょう。
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)は、一般財団法人 日本医療教育財団が主催する試験です。医療事務業務に従事するための基本的な知識や技術が審査されます。
試験に合格することで「メディカルクラーク」の称号が与えられます。医療事務職として就職や転職する際に、医療機関に求められるような能力を有しているという証明になるでしょう。
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の概要は、以下の表のとおりです。
試験場所 | IBT方式(インターネット受験) |
受験資格 |
なし |
試験内容 |
学科50分:医療事務知識(入力・〇×選択方式)60問 実技70分:患者接遇(入力・選択方式)2事例、診療報酬明細書の作成(入力・選択方式)2症例、基本診療料および特掲診療料の計算(入力方式)15問、外来会計の点検・病名との突合(入力・選択方式)2症例 |
受験料 |
8,800円(税込) |
合格基準 |
学科試験および実技試験の得点率がそれぞれ70%以上 |
試験結果は、学科試験と実技試験の受験が終了した後に、試験画面に結果が表示されます。合格の場合は、Web画面より合格証書が交付されます。
医事コンピューター技能検定試験は、一般社団法人 医療秘書教育全国協議会が主催する試験です。
準1級・2級・3級のレベルに合わせて、医療事務としての知識だけではなく、レセプトのオンライン請求などの医療機関におけるIT化に対応できる技能が、試験を通して判断されます。
医事コンピューター技能検定試験の概要については、以下の表のとおりです。
試験場所 | 在宅試験(日本国内のみ) |
受験資格 |
なし |
試験内容 |
医療事務・コンピューター関連知識・実技やオペレーション(3級・2級・準1級により、それぞれ扱う領域が異なる) |
受験料 |
3級:6,400円、2級:7,500円、準1級:8,600円 (3級・2級の併願:13,900円、2級・準1級の併願:16,100円) |
合格基準 |
医療事務・コンピューター関連知識・実技(オペレーション)についての問題の正解率がそれぞれ60%以上 |
医療事務と実技(オペレーション)の受験の際は、資格勉強に使用したノートや参考書などの持ち込みができます。
一般社団法人医療秘書教育全国協議会の公式ホームページには医事コンピューター技能検定試験準1級~3級いずれも合格率や難易度の記載はありません。
油断せず試験に挑むのが良いでしょう。
医科医療事務管理士技能認定試験は技能認定振興協会が主催する試験です。
日本で最初の「医療事務の資格」として医療機関に幅広く認知されています。
医療保険制度や診療報酬の仕組みを理解し、正確に診療報酬を算定するスキルを身に付けることで、医療現場を事務の側面からサポートする専門家としての知識やスキルが身に付きます。また、試験に合格することで「医療事務管理士」の資格が取得できます。
医科医療事務管理士技能試験の概要については、以下の表のとおりです。
試験場所 | 会場・在宅試験 | インターネット試験 |
受験資格 |
なし | なし |
試験内容 |
学科:法規、保険請求事務、医学(択一式10問) 実技:レセプト点検、レセプト作成(択一式3問) |
学科:法規、保険請求事務、医学(択一式50問) 実技:レセプト点検、レセプト作成(択一式60問) |
受験料 |
7,500円(学科や実技の免除があると5,400円) | 7,500円(学科や実技の免除があると5,400円) |
合格基準 |
学科試験:約80点以上 実技試験:各作成・点検問題ごとに約60%以上の得点かつ3問の合計が約80%以上 |
70%以上の得点 |
不合格であっても学科・実技どちらかが合格ラインに達していると、半年間は科目免除となるのがポイントです。半年以内の再受験であれば、1科目に注力すれば良いため勉強がしやすくなりそうです。
医科医療事務管理士技能試験の合格率は50%となっています。
合格率が高くはないので、比較的取得が難しい資格と言えるでしょう。
診療報酬請求事務能力認定試験は、公益財団法人 日本医療保険事務協会が主催する試験です。
医療事務などの診療報酬請求事務に従事する方の資質の向上を目的としています。
専門学校等の教育機関においては「医療事務資格の最高峰」とも言われており、合格を目指す学生も多いです。そのため、医療事務としての実務経験がない方でも、診療報酬請求事務能力認定試験に合格していると、医療事務・診療報酬に関する一定の知識を有していると考えられ、就職や転職の際に一定の評価が期待できるでしょう。
試験に合格すれば、合否の通知及び認定証の交付が行われます。
診療報酬請求事務能力認定試験の概要については、以下の表のとおりです。
試験場所 | 札幌市、仙台市、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟市、金沢市、静岡市、愛知県、大阪府、岡山市、広島市、高松市、福岡県、熊本市、那覇市 | |
受験資格 |
なし | |
試験内容 |
学科試験:医療保険制度等・公費負担医療制度の概要、保険医療機関等・療養担当規則等の基礎知識、診療報酬等・薬価基準・材料価格基準の基礎知識、医療用語及び医学・薬学の基礎知識、医療関係法規の基礎知識、介護保険制度の概要 実技試験:診療報酬請求事務の実技 |
|
受験料 |
9,000円(税込) | |
合格基準 |
非公開 |
試験会場には、診療報酬点数表などの資料の持ち込みが可能で、実技試験の際に使用できます。
診療報酬請求事務能力認定試験の第1回から第57回までの合格率の平均は約30.4%となっています。合格率が低く、医療事務向けの資格の中でも難易度の高い試験と言えるでしょう。
医療事務として働くために有利となる診療報酬請求事務能力認定試験や医療事務技能認定試験、医療事務検定試験などの資格試験について詳しく解説しました。
医療事務に関する資格は民間試験のみであり、資格試験の種類や難易度は多岐にわたるので、自分が目指すレベルやスキルに合わせてぴったりの資格の取得ができるでしょう。
医療事務の資格試験に合格することで、医療事務に必要な知識や技能を証明できます。
就職時はもちろん、未経験の転職の際も採用への強みとなるので、今回の記事を参考に、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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