介護施設でアルバイトをしながら、学生時代から音楽活動をしてきたBさん。テレビ出演を果たすなど人生を賭けて続けてきたバンドが解散し、悩んだ末に、介護一筋に。そのいきさつを語っていただきます!
お話を伺った介護士さん
■今、どんな仕事をしていますか?
認知症がある高齢者の方向けの介護施設であるグループホームで、施設長をしています。
主な業務は、営業、売上管理、シフト管理、採用業務が中心で、現場には人手が足りないときに入る程度です。施設のケアマネジャーも兼任しています。
■仕事のスケジュールを教えてください。
現場の介護職員は日勤と夜勤の交替制ですが、施設長になってからは日勤のみの働き方になっています。
9:00 朝礼。夜勤者からの申し送りを聞き、共有。課題があれば話し合い、共有する。
9:20 メールチェック。法人幹部と連絡。
9:30~ ケアマネとしての書類作成、会議の資料作成。入院先、地域の居宅介護支援事業所などにオンラインで営業。合間に、利用者さんとのふれあい。
12:30~13:30 昼休憩。利用者さんと同じ昼食を食べる。食後は事務所でひと休み。
13:30~15:30 業者の搬入の対応、家族の面会の対応などをする。現場に人が足りなければフォロー。
15:30~16:15 本部との会議、業者対応など。
16:30~17:30 職員の個人面談。ときどき話を聞くことで、悩みや疑問点などを解決して働きやすいように改善していくのも、施設長の仕事。
18:00 事務処理をすませて退社。
■以前はどんな仕事をしていましたか?
子どものころから音楽が好きで、高校生の頃からバンド活動をしていました。バンドをやるためにアルバイトをする、という生活で、飲食店やスーパーなどさまざまなバイトをしましたが、学生時代にヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)を取り、介護老人保健施設(老健)、デイサービス、障害者向けの作業所などでもアルバイトをしていました。
特に介護に興味があったというわけではなく、コミュニケーションには自信があったし、年代関わらず人としゃべるのは好きだったんです。今後の時代を見据えると介護ってありかな、資格ぐらい取っておくかな、と軽い気持ちでした。
音楽の専門学校卒業後、本格的に音楽活動を始めて、カラオケの配信や雑誌掲載、テレビ出演、グッズ販売と展開していきました。正直、持ち出しが多くて、売上のほとんどは経費や将来への投資に消えていきました。
ですから、介護のアルバイトやその他のアルバイトも必要だったんです。
■介護職に転職したきっかけは?
専門学校卒業後、1つの施設で腰を据えてアルバイトがしたいと思い、いくつかの施設に面接に行きました。
当時僕は金髪だったのですが、「髪色を戻してからじゃないと採用できない」と言われることがほとんどで。
ダメもとで面接を受けに行ったグループホームで「この髪色じゃダメですよね?」と聞いたら、「見た目で人を判断しないからOK!夢を追っている人を応援したいんだ」と言われ採用してもらいました。それが今も働いているグループホームです。
グループホームでアルバイトしつつ、人生を注いで音楽活動をしていましたが、人間関係のもつれでうまくいかなくなってバンドは解散。
そんなときに、会社から「主任にならないか」と声をかけてもらいました。別のバンドで音楽活動を続けるのか、音楽をあきらめて正社員の介護職になるのか、1カ月くらい悩みました。
結論としては「介護をやろう」になったんです。
7年間、バンド中心の生活を応援してくれた上司や仲間たちに報いたい気持ちが強かったですね。ちゃんと恩返ししなきゃ、と決心しました。
■未経験で介護職として転職することに不安はありませんでしたか?
当初は、料理が不安でした。
うちのグループホームでは、利用者さんが食べる料理は全部手作りで作っています。自炊の経験もない20歳そこそこの男子にはハードルが高かったです。
■転職後、その不安は解消されましたか?
料理が得意な先輩たち・料理に慣れている先輩たちに、がっちり教えてもらいました。勤務のたびにスパルタで教えてもらい、半年くらいでようやく一人で一通り調理できるようになりましたよ!
■転職する前に準備したことはありますか?
ヘルパー2級を持っていたことですね。学生のときにお年玉で取ったヘルパー2級の資格があったから、金髪のバンドマンでもなんとか採用してもらえたと思います。
■転職前にしておいてよかったことはありますか?
デイサービスや老健など、いろいろな施設でアルバイトをしておいたことでしょうか。グループホームとは少し形態は違いますが、確実に役立っています。
■介護職に転職してよかったことは何ですか?
土日にも勤務がある分、平日に休みを取れることですね。
音楽活動をしていた当時のアルバイトでも、ライブなどこちらの都合を勘案してシフトを組んでくれたので働きやすかったです。
今では、平日休みの生活に慣れてしまうと、土日の混んだレジャー施設に行く気がしません。2人の子どもを連れて、人の少ない遊園地で安心してゆったり遊べます。役所関係とか銀行とかも時間を気にせず行けますしね。平日休めるのは本当に助かります!
■介護職に転職して大変だと思ったことは何ですか?
施設長になってから、自分のことより、スタッフの大変さが気になるようになりました。
長くコロナ禍が続き、職員は感染予防に神経を使い、ストレスが増えていると感じます。
利用者さんの健康を守ることの責任感で、どうしてもがまんする場面も多くなっています。
職員一人一人ががまんのし合いにならないように、施設長として積極的に面談をするなどコミュニケーションを密にして、良い人間関係が作れるように、常に考えています。
■これまでの経験やスキルで転職後に役立ったものはありますか?
バンドではいつもリーダーをやっていました。個性的なメンバーをまとめ、対外的にいろいろ説明したり、交渉したり、お金の管理をしたりしていたので、そのマネジメントスキルは、施設長の仕事にとても役立っています。
■今後の目標や、やりたいことはありますか?
音楽活動をすっぱりやめた今、介護の仕事で自己表現をしていきたいと思っています。せっかく携わった介護の仕事の良さを、もっと広くたくさんの人に知ってもらいたいので、SNSを使って発信しています。仲間を増やして、いろいろと表現していきたいですね。
そして、いずれは独立して、自分の介護事業所を持ってみたいと考えています。どんなサービス形態にしたいかは未定ですが…。
自分の理想のメンバーで、自分の理想の介護をする。そんな夢を持っています。
その夢に向けて、条件が整ったら主任ケアマネや社会福祉士など、さらなるステップアップができる資格にもチャレンジしようと思っています。
社会福祉士、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級。
幅広くライターとして活動中、親の介護を機に2012年に社会福祉士国家資格を取得。以後、法定成年後見人として支援が必要な方の財産管理や身上監護も行う。
現在は介護、医療、教育、子育て、食などのテーマを中心にWEB・雑誌・書籍などの記事執筆を多数担当。
社会福祉士、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級。
幅広くライターとして活動中、親の介護を機に2012年に社会福祉士国家資格を取得。以後、法定成年後見人として支援が必要な方の財産管理や身上監護も行う。
現在は介護、医療、教育、子育て、食などのテーマを中心にWEB・雑誌・書籍などの記事執筆を多数担当。
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