事務職の正社員として働いていたけれど、給料の減額を機に夜間の飲食バイトでダブルワークをしていたEさん。はじめは派遣で少しだけ…のつもりが、今や特養の正職員に。
はじめての介護職への印象や、副業をやめたいきさつについてインタビューしました!
お話を伺った介護士さん
■今、どんな仕事をしていますか?
特別養護老人ホーム(特養)で、利用者さんの介護を担当しています。生活援助から身体介助まで、生活に必要な介護全般をしています。
1つのフロア30人×2フロアで定員60人の施設で、その日の状況によって、2フロアのうちどちらかのフロアを担当します。
■仕事のスケジュールを教えてください。
特養では、日勤と夜勤のシフトがあります。うちの施設では、夜勤は月に5~6回ほどです。
日勤でも夜勤でも、基本的には1日中、利用者さんの生活に合わせて介助を行います。
【日勤の場合のスケジュール】
10:00 出勤。申し送りして現場に入る。
10:15 お茶を出し、水分補給の補助。昼食前に寝ている利用者さんを起こしていく。
12:00 昼食介助
12:30 排泄介助。合間に日誌を書く
15:00 おやつの介助、排泄介助
17:30 夕食介助、排泄介助
19:00 夜勤スタッフに申し送りをする
19:10 退社
休憩は、介助の合間の時間に職員が交互に取っています。
■以前はどんな仕事をしていましたか?
社会人になってから20年、ずっと事務職をしてきました。最後に勤めたのは、建設関連の小さな会社で、総務、人事、経理の全部を任されていました。
その前に勤めていた会社の倒産で、急いで仕事を探しているときに知り合いに紹介してもらった建設会社でした。社長の気分次第で給料の額が決められてしまい、ある日突然減額ということも…。
お給料が不安定なことに不満はありましたが紹介してくれた知り合いへの義理もあって辞めることもできず、しかたなく飲食のバイトを副業にしてなんとかやりくりしていました。
■介護職に転職したきっかけは?
事務職として働いているときに、介護職員初任者研修を受けたんです。祖父母の介護が大変になり、特養に入所することになったとき、自分はなんの知識もないけれど、いずれ両親もそうなるんだな…と思ったんですよね。
その前に、自宅介護ができるような知識や技術を得ておきたいし、必要なタイミングで入所の手続きができるようになりたい……、とにかく介護の勉強をしなきゃ、と思ったんです。
初任者研修を受けた当初は、自分の勉強のためで、介護職として働こうとは思っていませんでした。
でも、せっかく学んだ知識を活かしたいし、介護の仕事をして両親のために準備をしておくこともいいかな、と思ったんです。
事務職の仕事はどんどん待遇が悪くなってきていたので、思い切って退職して、介護職と飲食のダブルワークでやっていこうと決心しました。
■未経験で介護職として転職することに不安はありませんでしたか?
やったことがない仕事なので、最初はすごく不安でした。これまで高齢の方と接することもあまりなかったですし、排泄介助とか食事介助とかできるのかなと。
だから、いきなり正社員ではなく、まずは派遣社員として短い期間だけ働こうと思いました。
「週3日、2カ月の契約でお願いしたいです」と伝え、もし自分には合わないと感じたらやめられるようにしたんです。
■転職後、その不安は解消されましたか?
やってみたら楽しかったんです!こんなに「ありがとう」って言われる仕事はないなって思って。
事務職も飲食店のバイトも、「カネ払ってるんだ、なんでもやれ」という感じで接してこられることが多かったので、人のいやなところをみてばかりでした。生活していかなければならないからと、がまんしていた感じです。
でも、介護の仕事だと、いつも利用者さんに「ありがとう」「気持ちいいわ」と言ってもらえるんです。
「そんな、まだまだなんです、もっと勉強してがんばります!」と素直に前向きになれます。
当初は派遣で働いて飲食バイトと合わせて生活していたのですが、9カ月たったところで、職場のほうから「正職員になりませんか」と言ってもらえて。ちょうどコロナ禍が始まって飲食バイトのシフトも減っていた頃だったので、とてもありがたいタイミングでしたね。
正職員になってからは、介護職だけで生活できています。夜勤手当や処遇改善手当があるので、なんとかなっています。本当はもう少し給料が高いといいなと思いますが、介護業界全体の給料が安いですよね。
■転職する前に準備したことはありますか?
特にないですね。初任者研修も、転職のために受けたわけではなかったですし。
とはいえ、初任者研修を受けていなかったら、介護の仕事はやっていなかったと思います。介護職という仕事のことも意識しなかったかもしれません。やはり初任者研修を受けて介護とはどういうことかを知っていたことは大きかったと思います。
■介護職に転職してよかったことは何ですか?
今までやっていた仕事の中で一番楽しいと感じています。単純に利用者さんとコミュニケーションをとるのも楽しいです。世間話をして笑い合ったりして。
以前の事務職は、ほとんど人と話すことがなかったですし、職場環境もあまりよくなかったんです。ここはいい職場で和気あいあい、みんな気さくです。正社員の人はほとんどやめていないんじゃないでしょうか。
■介護職に転職して大変だと思ったことは何ですか?
入職当時は、排泄介助なんて自分にできるだろうか…と思っていましたが、1週間で慣れました。もちろん、汚物の処理ではあるわけですけれど、利用者さんが「あー、さっぱりした!」とうれしそうにしていたりするので、こちらも「よかったですね!」と思えるんですよね。
ただ、利用者さんの中には体格がいい方もいるので、介助のときに気をつけないと腰を痛めてしまいます。何歳までできるかな?と心配になることはありますが、体力が続く限りは介護の仕事を続けたいと思っています。
■これまでの経験やスキルで転職後に役立ったものはありますか?
飲食のバイトで培った接客技術でしょうか。「この人はこういう人なんだろうな」「こう言ったら怒るだろうな」など、利用者さん一人ひとりの感じ方が想像できます。よけいなことを言って怒らせることなく、穏便にお付き合いする術は、役に立っていますね。
また、介護業界は、パソコンが苦手という方が多いです。私は事務職だったので、パソコンで書類を作ることには抵抗がなく、少し役に立っているかな、と思っています。日誌もパソコンでさっと作成できますし、使い方をみんなに教えることもあります。
■今後の目標や、やりたいことはありますか?
介護福祉士やケアマネジャーの資格を取りたいです。
この先も体力が続く限り、介護の仕事をしていきたいので、ステップアップのためにも資格を取りたいと思っています。実務者研修はすでに受けているので、年数の条件がそろえばすぐに介護福祉士に挑戦するつもりです!
社会福祉士、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級。
幅広くライターとして活動中、親の介護を機に2012年に社会福祉士国家資格を取得。以後、法定成年後見人として支援が必要な方の財産管理や身上監護も行う。
現在は介護、医療、教育、子育て、食などのテーマを中心にWEB・雑誌・書籍などの記事執筆を多数担当。
社会福祉士、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級。
幅広くライターとして活動中、親の介護を機に2012年に社会福祉士国家資格を取得。以後、法定成年後見人として支援が必要な方の財産管理や身上監護も行う。
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