身体介護や生活援助など、高齢者のご自宅に伺って日常生活をサポートする訪問介護のお仕事。慣れない調理やサービスの時間配分など悩みは尽きません。
今回は、訪問介護サービスの事業所に転職した先輩の「調理」「時間配分」に関するお悩みを、介護求人ナビ編集部からのアドバイス付きでご紹介。初めて訪問ヘルパーに転職する人も、訪問介護の仕事に慣れている人も、ぜひ参考にしてください!
《事例1》訪問介護の仕事を始めたけれど、料理が苦手で利用者さんに申し訳なくて…
43歳/男性/秀司
介護施設で10年勤務したのち、家庭の事情で時間の融通が利く訪問ヘルパーに転職しました。
身体介護は問題ないのですが、料理だけは苦手で困っています。今のところ調理を必要とする利用者様の担当は少ないのですが、反面、なかなか上達しません。栄養バランスなどは考えて調理しているつもりです。
ですが、毎回、私のヘタな料理を召し上がっていただくのは心苦しくて…。やはり訪問ヘルパーは料理も上手な方がいいですよね。
《アドバイス》
訪問介護の仕事は、掃除や洗濯、入浴介助、排泄介助、買い物など、いろいろありますよね。
調理はそのなかの一つにすぎません。もちろんオールマイティにこなせるのが理想のヘルパーでしょう。
でも、誰にでも得手不得手はあるのですから、最初から完璧を求めずにコツコツと努力してみませんか?
たしかに食事は、多くの利用者にとって楽しみの一つでしょうし、栄養面から支えるという点でも重要です。
そこで、まずは利用者の体調はどうか、食べたいメニューは何か、好きな食材や好みの味付けは…といった情報を入手することが大事になってきます。
調理のスキルも大事な要素ではありますが、そもそも食欲がなかったり、嫌いなメニューだったら、利用者の食は進みません。
また、嚥下機能が低下している利用者もいると思います。
そこで、調理をしたらおしまいではなく、できるだけ利用者が食べているときの様子をしっかり観察してください。
もし食べにくそうだったり、飲み込むときにむせたりしていたら、次からは、具材の大きさを変えたり、とろみをつけたりといった工夫が必要になるかもしれません。
糖尿病のように食事制限がある利用者向けに調理する場合は、特に注意が必要です。
料理が苦手で利用者に申し訳ないという気持ちがあるのなら、あとは練習あるのみです。
実際の訪問で調理をする回数が少ないならば、日常生活で、自分のためや家族のために作ってみてはいかがですか? 包丁にも慣れ、徐々に味付けや手順のコツもつかめるはず。
レパートリーを増やしておけば、訪問先にある材料を見て臨機応変に作れるようになります。簡単にできる高齢者向けのレシピをインターネットで検索したり、本を探したり、調理のポイントを同僚や先輩に聞いてみると良いでしょう。
利用者が、料理が得意というケースもあるはず。
そんなときは、料理が苦手なことを正直に伝えて、一緒に作ることを提案してみては? 下ごしらえだけはあなたが行い、味付け部分を一緒にやりながら教わるというのも一つの手です。利用者が喜んで手伝ってくれるならば、ご本人の自立支援にもつながります。
こうした努力をしてみても一向に上達せず、調理が不得意なことに悩まされるようであれば、上司に相談してみてはいかがでしょうか。
調理が必要な利用者は、それが得意なヘルパーに任せる、などの判断をしてくれる可能性もあります。
最初にも説明したとおり、訪問介護のサービスは調理だけではありません。
そのほかの生活援助や身体介護も大事な要素。現在の職場で要望がうまく通らないようであれば、自分の強みを発揮できる職場への転職を再検討してみても良いかもしれません。
訪問介護と同様に、時間の融通が利く訪問入浴などへの転職も選択肢の一つになるでしょう。
《事例2》いつも規定の時間内に仕事が終わりません。訪問介護は向いていないのかな…
37歳/女性/安恵
老人ホームから訪問介護の事業所に転職しました。
ホームでの仕事と違って、訪問介護では利用者宅での滞在時間が決まっていますが、なかなか時間通りに終わらせることができません。もともと仕事をテキパキと器用にこなすタイプではないので、いつも時間が足りなくなってしまいます。
私のように要領が悪い人は、訪問ヘルパーには向いていないのでしょうか。
《アドバイス》
訪問介護は、決められた仕事を時間内に終わらせるのが原則です。もちろん利用者の状態も毎回違いますし、すべてが予定通りに進むとは限りません。
しかし、規定時間を頻繁に超過するようであれば、対応を見直す必要があります。
「要領が悪い」のひと言で片づけず、なぜ時間が足りなくなるのかを自分で検証してみましょう。
たとえば、どの業務に予定外の時間がかかっているか、把握していますか?
いつも同じ業務で時間を取られているのなら、どうすればそれを改善できるかを検討する必要があります。
もしかすると、すべてを完璧にやろうとして一つ一つの作業に時間をかけすぎているのでは?
丁寧なのは良いことですが、時間内に終わらないのであれば問題です。
訪問介護という仕組みの中では、ある程度の割り切りも必要。手を抜くのではなく、どう効率を上げるかを考えましょう。
また、利用者の話を聞いたり、おしゃべりをしているときに手が止まっていませんか?
もちろん利用者とのコミュニケーションは大事です。
しかし訪問介護では、利用者の生活機能向上のために必要なサービスを時間内に提供することが求められています。おしゃべりが長くなって作業のやり残しが発生すれば、本末転倒です。
老人ホームのときと違って戸惑いもあるかもしれませんが、利用者の話に耳を傾けながら、上手に手を動かすことを心がけてみてください。
あるいは、利用者からの突然の申し出にまで対応してはいませんか?
緊急性のない要望であったり、介護計画にはない業務であれば、引き受けることはそもそもNGです。
ただし断る際には、利用者との信頼関係を壊さないよう丁寧な説明を。
また、計画書にはないけれど利用者に必要なサービスだと思ったら、そのときはサービス提供責任者(サ責)に相談しましょう。
上記のようなことを検証したうえで、あらためて、計画書に沿って作業内容の時間配分を考えてみましょう。
どんな流れで行うかもポイントです。それぞれの作業に予定している平均的な所要時間をサ責に聞いて、参考にすると良いでしょう。
いろいろ試してみても、それでも毎回時間が足りなくなるということならば、それはあなたの対応の悪さというより、介護計画そのものに問題があるのかもしれません。一度、サ責に相談してみてください。
その結果、サービス提供時間を増やすなどの解決策が出てくる可能性もあります。
もし、こうした改善に取り組んでも、やはり訪問介護の仕事に向いていないと感じるようなときは、転職を検討してみるのも選択肢のひとつ。
あなたがめざす介護のスタイルをもう一度見直し、そうした介護が実践できる場所を探してみてはいかがでしょうか。
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