毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「敬老の日で一騒動」という話題について紹介します。
介護業界と縁深い祝日「敬老の日」
「敬老の日」といえば、介護業界には縁が深い祝日。
その日、多くの介護施設では催しが行われる。職員が出し物を行ったり、手品師、音楽家、コーラスグループなどを招いたり、ビンゴゲームを行ったり、普段よりも豪華なメニューの食事が出されたりなど、その内容はさまざまだ。
しかし、東京都S区にある介護付き有料老人ホームでは今年、敬老の日を巡ってある騒ぎが起こったという。
その施設で働くエイジさんが騒動を振り返る。
「ウチの施設では、敬老の日には毎年カラオケ大会と職員の寸劇を行っています。
寸劇は、いつも時代劇をパロディ化したものをやっていて、今年は『水戸黄門』を土台にしたものでした。
なぜか毎年、ホーム長が悪役を演じることが恒例行事なんです。
黄門さま役の新人スタッフが悪役のホーム長を叱るシーンでは、『もっと下の者の給料を上げてはいかがかな?』『もう少し痩せた方が健康によろしいぞ』といったセリフも登場。
入居者にもスタッフにも大ウケでした」
そんな寸劇の様子からも、施設内の良好な雰囲気が伺われるが、騒動が起きたのは敬老の日の3日前、9月15日だったという。
利用者が落ち込んでいた、まさかの理由
エイジさんはその騒動に関して、こう続ける。
「今年の9月15日は金曜日でした。ウチの施設では金曜日には体操の先生を呼んでエクササイズを行っているのですが、いつも体操を楽しみにしている利用者のYさんが、エクササイズをやる大広間にやって来ないのです。
そこで若いスタッフが部屋に行ってみると、ベッドに寝転んでいて、話しかけても『何もしたくない』『もうイヤだ』などと言うばかり。体調が悪いのかどうかを尋ねても、煩わしいそうに応対するだけで、すっかり困ってしまって……」
そこで施設一のベテランスタッフのミチコさんが出動し、Yさんから“事情聴取”を行うと、Yさんの異変の理由が判明した。
ミチコさんが語る。
「Yさんは、朝のニュースで9月15日という日付を見て、『今日は敬老の日だ』と思ったようなんです。ところが、子どもからも孫からも連絡がなければプレゼントもなく、すっかり『見捨てられた』と思ってしまったようなんです。
私が一生懸命、『9月15日は敬老の日じゃないの。敬老の日は来週の月曜日』と言っても、『いや、敬老の日は9月15日だ』と言うばかり。カレンダーを見せてようやく納得させました」
かつて9月15日で固定されていた敬老の日は、2003年から「9月の第3月曜日」に移っているが、Yさんの頭に刷り込まれた「敬老の日=9月15日」という記憶は、よほど強固なものだったようだ。
ちなみにスタッフは全員忘れていたのだが、Yさんは去年も同じ騒動を起こしており、今回の騒動により「Yさんの敬老の日問題」は、申し送り事項として全スタッフに共有されたそうだ。