毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「機械音痴でも介護職は務まりますか?」という話題について紹介します。
介護業界にもデジタル化の波が。機械音痴でも大丈夫?
歌が下手な「音痴」、地図が読めない「方向音痴」、スポーツができない「運動音痴」など、音痴にも色々あるが、日常生活にとりわけ影響が大きいのが「機械音痴」だ。
パソコン、携帯電話、家電製品など、あらゆるものがデジタル化した現代社会。
介護業界にもテクノロジーの進化が押し寄せているが、いわゆる機械音痴の人でも働くことはできるのだろうか?
その疑問に対する1つの答えとして、都内の介護付き有料老人ホームで働くナカガワさんの例を見てみよう。
50歳でパートとして就職!でもネックは極端な機械音痴で…
ナカガワさんは、介護付き有料老人ホームで働き始めて6年目の60代の女性。
長らく専業主婦をしていた彼女は、50代になって「パートに出たい」という希望を抱いたが、大きなネックが機械音痴だった。世の中には機械が苦手な人は少なくないが、ナカガワさんの機械音痴はかなりのレベルだという。
ナカガワさんが語る。
「自分の年齢が50を超えた時、『元気な内にお金を稼いでおきたい』と考えましたが、最大の不安点が機械音痴でした。
私はとにかく機械が苦手で、TV番組を録画したり、留守番電話を聞いたりできませんし、5年近く前に買った自宅の電子レンジはボタンが多すぎて、使い方がいまだによく分かりません。
銀行のATMは、後ろに人が並んでいると焦ってパニックになってしまうので、娘に頼んだり窓口でお金を降ろしたりしています」
以前は駅の自動券売機が鬼門だったが、簡単にチャージできるICカードを持つようになって楽になったというナカガワさん。
当然、パソコンなども触ったことがなかったナカガワさんだが、介護職として働くうえで、問題はなかったのだろうか?
介護業界にはパソコンが苦手だった人も多い!
結論から言えば、ナカガワさんの機械音痴ぶりは、大した問題ではなかったそうだ。
有料老人ホームでナカガワさんを指導した、リーダーのハセガワさんが語る。
「介護業界は、他の業界と比べてデジタル化が遅く、ウチの会社もかなり最近まで手書きの書類を使っていましたが、最近になってパソコン入力する書類も増えてきました。
ウチの施設で働くスタッフは半分以上が還暦を超えています。その世代の人たちは、パソコンが使えないのが当たり前。ワードやエクセルなどを使えるどころか、その単語さえ聞いたことがなく、パソコンのスイッチの入れ方さえ分からない人など珍しくも何ともありません」
パソコンを教えるのは●●な人!
さらに、施設でのパソコン指導について、ハセガワさんはこのように語る。
「パソコン操作ができないスタッフがいる場合、我々はあえて、『もともとパソコンが使えなかった人』に指導してもらうようにしています。
もとから機械が得意な人は、機械に弱い人の気持ちが分からないので、ついつい必要な説明を飛ばしがちです。
その点、もともとパソコンが苦手だった人が指導するときには、『分かりにくいわよね~』『私も全然できなかったのよ』と、共感してもらえるので、安心できるようです」
老人ホームで働くまでは、携帯電話でメールをやり取りすることさえできなかったナカガワさんだが、今ではパソコンを使ってエクセルにケアプランを入力できるまでになったのだとか。
「我々には、どんなにパソコンができない人でも驚かない経験値と、丁寧に教えるためのノウハウがあります」と語るハセガワさん。
このような状況は他の会社でも大して変わらないはず。
“機械音痴”を理由に就職を躊躇してしまう気持ちは分かるが、「どんな人でも受け入れる」という環境が、介護業界では整っていると考えて良さそうだ。