毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「訪問ヘルパーとして働き、料理の腕は上がったが…」という話題について紹介します。
産地にこだわる利用者
訪問ヘルパーとしての大事な仕事の一つが、家事援助の一環として行なう「料理」だ。しかし食事というのは、人間の欲求にダイレクトに繋がるもの。ヘルパーが皆、料理の達人であるはずもなく、トラブルは少なくないようだ。
例えば、都内の事業所で働くHさんは、料理の腕は確かな女性。しかし、かつてある利用者に煮物を出したところ、食材の産地を尋ねられ、それが外国産であることを告げると激怒されたことがあるという。
高齢者は“柔らかめ”がお好きでしょ?
またHさんによれば、60歳を過ぎてヘルパーの仕事を始めたAさんという女性は、それが本人の好みなのか旦那さんの好みなのかは不明だが、ご飯を“超柔らかめ”に炊くのが毎度の流儀。
利用者からは直接的・間接的に幾度となくクレームが入っているのだが、「年寄りは柔らかいご飯が好き」と信じ込んでいるのか、一向にそれを改める気配はなく、利用者の不興を買っているという。
料理は上手になったけれど…
一方、高校卒業と同時に介護業界に飛び込んできたCさんは、料理が致命的に下手だった。より正確に言えば、高校卒業まで実家暮らしで、料理を手伝わされることもなかったため、学校の授業以外ではただの1度も自分で料理をしたことがなかった。つまり“下手以前”のレベルだった。
そんな彼女だが、ヘルパーとして稼働し始めると、やがて家事援助も担当することに。当初は「失敗するはずがないから」との母親のアドバイスにより、カレーと肉じゃがを交互に作っていたが、それもすぐに限界が訪れたため、やむなく自宅で料理を練習するようになった。
そして今では、かつおぶしで出汁を取り、野菜の面取りを施して和風の和え物を作ったり、利用者の冷蔵庫の残り物を適当にアレンジして2~3品の料理をササッと作ったりと、料理の腕はメキメキと上達。「これでいつでも嫁に行ける」と、母親はすっかりご満悦だが、本人は悩みがあるという。
というのも、仕事が忙しすぎるCさんは、自宅に帰って料理をする気力が湧かず、結果的にスーパーやコンビニで買った“他人の料理”を食べる毎日なのだという。時には、利用者が自分が作った手作りカレーを食べている同じ日に、自分はレトルトカレーを温めているようなこともあり、ふと虚しさを感じてしまう瞬間があるそうだ。
公開日:2015/4/27
最終更新日:2019/3/30