毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「食べ物フーフーは厳禁」という話題について紹介します。
ヘルパーがお粥を冷ますために息を吹きかけると…
介護の仕事で一番大事なのは、介護される側の気持ちになること。しかしときには、経験不足から善意が仇となってしまうこともあるようだ。
都内の事業所で訪問ヘルパーとして働くヒロコさんは、かつてこんな失敗をしてしまったという。
ヒロコさんは20代なかばで介護業界に転職し、現在ヘルパー歴は3年。
“事件”は、ヒロコさんがまだかけだしヘルパーだった一昨年、「要介護5」の80代の女性利用者・Yさんのお宅で起きた。
その日のYさんのスケジュールは食事介助だった。Yさんは食べ物を飲み下す力が弱く、口もあまり開かないため、さらさらのお粥を用意。
小さめのスプーンを準備し、Yさんを抱き起こし、お茶で口の中を湿らせて滑りを良くして……と、ヒロコさんは決まった手順を踏んだつもりだった。
ヒロコさんは言う。
「それまで私が担当してきたのは、介護レベルが低い人ばかりで、全粥(水1に対し5倍の水を入れたもの)の食事介助はありましたが、Yさんに用意した3分粥(米1に対し20倍の水を入れたもの)というのは初めてでした。
じっくり時間をかけて炊いてできあがったお粥は全然冷めなくて、スプーンですくってフーフーしたら、途端にYさんが怒り出したんです」
「私は赤ちゃんじゃない!」と怒る利用者
ヒロコさんは、お粥が熱すぎたため、これを冷ますためにフーフーと息を吹きかけたが、これがいけなかったのだ。
ヒロコさんが説明する。
「Yさんは、食べ物にフーフーする私を見て、『私は赤ちゃんじゃない!』と怒ったんです。私としては、『Yさんが火傷をしたら困る』と思ってしたことなんですけど、今思えば確かに失礼ですよね。
その後、先輩にも指摘されたんですが、そもそも食べ物にフーフーするのは衛生的に良くないんです。きっとどこかで習ったはずだったんですが、すっかり忘れてしまっていたようです」
先輩からも、「自分のことができないからといって、お年寄りは子供とは違うんだから」と、注意を受けたというヒロコさん。
ちなみに熱いものを食べさせるときは、「小皿に取り分ける」「かき回して冷ます」といった方法が正解だそうだ。