■書名:対人援助の現場で使える 聴く・伝える・共感する技術 便利帖
■著者:大谷 佳子
■出版社:翔泳社
■発行年月:2017年8月
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介護職にも必要な「コミュニケーションの技術」をわかりやすく解説!
人に対して援助サービスを提供するとき、専門的な知識や技術に加えて必要なのがコミュニケーション力だ。
この力を高めるためには、コミュニケーションの「技術」について学んで身につけていくことが望ましい。「想い」だけでは不十分なのだ。
本書では、心理学をベースに、コミュニケーション技術をわかりやすく解説している。
大まかにコミュニケーション技術とはどのようなものかを知るには、巻頭の「こんなコミュニケーションになっていませんか?」が役に立つ。
3つのシチュエーションでの会話形式になっており、ありがちな失敗例とその改善例が比較できるようになっている。
改善例では、多くのコミュニケーション技術を活用しており、コミュニケーションが劇的に改善しているのがよくわかる。
本書では、この技術を「聴き上手になる技術」「伝え上手になる技術」「共感上手になる技術」の3つに整理し、1章ずつをあてて詳しく説明している。
抽象的な一般論ではなく、良い例・悪い例などを挙げながら具体的に書かれているので、すぐに介護の現場で使えそうだ。
たとえば、「聴き上手になる技術」の一つ「聴きたい気持ちを表現しよう」では、聴こうとする気持ちを伝える姿勢、相手に話す意欲を低下させる姿勢について詳しく解説している。
「何でも話してほしい」「あなたの話が聴きたい」というメッセージを相手の心に届けたいときには、次のような姿勢が良いのだという。
<猫背にならないように姿勢をよくして、腕を組んだり、足を組んだりせずに座ります。背もたれを使わずに、少しだけ相手のほうに身体を傾けてみましょう。あなたが話に興味を持って、耳を傾けていることが効果的に伝わります。>
「共感上手になる技術」の章では、共感とはどのようなものか、どうすれば上手に共感できるかなどが解説されている。
なかでも特に役に立つのが言葉の具体例だろう。
相手に共感していること、さらには共に前に進もうとしていることを伝えたいとき、次のような表現が本書ではすすめられている。
「とてもつらいのですね。そのお気持ち、わかります」
「よかったら、もう少しお話を聴かせていただけますか」
「一番つらいこと(苦しいこと、大変なこと)は何ですか」
「何か、私にできることはありませんか」
気持ちの落ち込みがひどく、前を向く気力もない人には、「共にありたい」「共に進みたい」という気持ちを伝える言葉こそが、相手の心に届くのだという。
「がんばってください」ではないのだ。
コミュニケーション技術のいずれの項目も、見開き2ページで説明が完結。大きな見出し、アンダーライン、イラストや箇条書きなどで重要なことが整理されているため、とてもわかりやすい。
心理学の用語なども積極的に紹介されているが、やさしい言葉で書かれているので無理なく読める。
「便利帖」とタイトルにあるように、構えず気軽に手に取ってみてほしい一冊だ。
著者プロフィール
大谷 佳子(おおや・よしこ)さん
昭和大学保健医療学部講師。認定看護管理者教育課程講師。認知症介護実践リーダー研修講師。介護相談員養成研修講師。その他、医療、福祉、教育の現場の援助職を対象に、コミュニケーション研修及びコーチング研修、スーパービジョン研修などを担当。
主な著書に、『基礎から学ぶ介護シリーズ 利用者とうまくかかわるコミュニケーションの基本』(中央法規出版/共著)、『介護福祉士養成テキスト2 人間関係とコミュニケーション 体験学習型ワークブック』(建帛社/共著)などがある。