■書名:マンガで学ぶ対人援助職の仕事:在宅介護と介護予防をめぐる人々の物語
■著者:植田 寿之
■漫画:青野 渚
■出版社:創元社
■発行年月:2019年4月
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高齢者を支える介護職が知っておきたい「対人援助」のスキルをマンガで解説
高齢者を介護現場で支える
「対人援助」の仕事とは?
「対人援助」の専門職のやりがいや、スキルアップの方法は?
高齢者を支える対人援助職に必要なスキルについて、マンガならではのわかりやすさで学べる本書。
まずはマンガで大まかなイメージをつかみ、それぞれのエピソードごとにまとめられた要点・解説ページでポイントを整理できる内容だ。
本書の魅力の一つは、オリジナル・ストーリーのマンガに描かれる登場人物の幅広さだろう。
ケアプランセンターの介護支援専門員(ケアマネジャー)、地域包括支援センターの社会福祉士、保健師、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、特別養護老人ホームの介護職、地域の自治会長、民生委員、そしてさまざまな事情を抱えた利用者とその家族。
「介護」に携わる、実にさまざまな職種と人物が登場する。
高齢者介護の仕事は、決して1人でできるものではなく、多くの専門職や仲間、地域住民と支え合うことで成り立っていることがよくわかる。
本書では、
社会福祉士の女性の成長していく姿を軸にしながら、
それぞれの専門職の役割がエピソードを通じてわかるようになっている。
さらに、対人援助職の専門技術については、第1話からマンガのストーリー展開に合わせて紹介されていく。
要点・解説のページもわかりやすいので、理解して自分の仕事にぜひ役立てていきたい。
第1話では、よりよいケアのためには、ケアを受ける利用者に本人の背景を語ってもらうことが大切だと解説。
そのためには信頼を得ることが必須であり、専門的な「態度」や「技法」が欠かせないことなどが語られる。
そして、専門的な技術の具体的な内容については、第2話以降で解説。
例えば、援助する人とされる人の「援助関係」を築くために、著者は「援助関係形成の原則」として次の7つの態度を挙げている。
1 プライバシーに留意することで安心を与える(秘密保持)
2 感情に応答することで自分の気持ちへの気づきをもたらす(意図的な感情表出)
3 援助者自身の感情や価値観を脇に置く(統制された情緒的関与)
4 あるがままを受け止める(受容)
5 決して裁かない(非審判的態度)
6 一般論で片づけない(個別化)
7 あくまでも側面から援助する(自己決定)
例えば、利用者に介護サービスを拒まれているような場合、まずはケアを受ける利用者本人が安心できる関係を築くことから始めるしかない。
そのためには
利用者の気持ちに寄り添うことが大切で、この7つの態度を意識することが役に立つはずだ。
信頼関係を築き、利用者の複雑な背景や人生の物語を語ってもらうためには、
「話を聴く技法」も知っておきたい。
第4話では、「傾聴技法」と「観察技法」が紹介されている。
傾聴技法の最も大切なポイントとは、「善し悪しの判断をせず、純粋に聴くこと」として、例文を使って解説されているので、実践にも結び付けやすい。
「対人援助は、支援を必要とする人々の暮らしだけではなく、人生を支える仕事だ」というのが著者の基本的な考えだ。それはマンガから解説まで、本書のあらゆる部分に反映されている。
介護を仕事にする人なら、スキルアップに役立つのはもちろんのこと、あらためて仕事のやりがいを見出すきっかけになるかもしれない。
著者プロフィール(引用)
植田 寿之(うえだ・としゆき)さん
1960年、奈良県生まれ。同志社大学文学部社会学科社会福祉学専攻卒業後、社会福祉法人京都府社会福祉事業団心身障害者福祉センターを経て奈良県に就職。奈良県心身障害者リハビリテーションセンターに勤務。同志社大学大学院文学研究科社会福祉学専攻博士課程(前期)に進学・修了後、梅花女子大学現代人間学部准教授などを経て、現在フリーで講演、研修講師、執筆等活動中。社団法人日本社会福祉士会理事、奈良県社会福祉士会会長などを歴任。