■書名:認知症介護ラプソディ 笑って学ぶ認知症介護が楽になる40の知恵
■著者:速水ユウ
■発行:メディカルパブリッシャー
■発行年月:2016年9月28日
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家族の認知症介護に悩んだ保健師による「40の知恵」を紹介
本書は、大学で老年看護の指導経験もある保健師の速水ユウさんが、自身の実体験をもとに書き下ろした書籍である。
速水さんは、妊娠をきかっけに両親と“ばあちゃん”が暮らす大阪に転居。
この引っ越しが、速水さんの認知症介護の幕開けとなる。
転居してまもなく、認知症の前駆症状と思われるばあちゃんの自己中心的なふるまいに「何かおかしい」と感じた速水さん。
次第に「物盗られ妄想」「徘徊」「食事をしたことを忘れる」など、ばあちゃんの症状が進行していく。
本書では、ばあちゃんが巻き起こすさまざまな認知症エピソードを紹介。
「いくつも同じものを注文する」というものから、「コンロの上で鍋が黒焦げ」「赤ちゃんがひもでぐるぐる巻き」「寿司をのどに詰まらせる」といった一歩間違えば大惨事になる話も収録されている。
エピソードはいずれも大阪弁で書かれており、速水さんとばあちゃんの漫才のようなやりとりが印象的だ。
また、エピソードにからめ「介護が楽になる知恵」も40種類紹介。
たとえば、下記のようなものだ。
・家族が気づける認知症サインとは?
・物盗られ妄想や徘徊に隠された意味とは?
・塗り絵などの芸術的な作業を勧めてみる
・時間や季節がわかる物を身の回りに
・介護サービス事業者と積極的に交渉する
そのほか、速水さんがばあちゃんとともに訪ねたさまざまなデイサービスの体験記、認知症予防に効果的と言われているアニマルセラピーやアロマテラピーについても取り上げている。
被介護者の目線から見た「信頼できないホームヘルパー」「介護サービスは活気のあるところを選ぶ」は、介護の仕事をする人にとって勉強になることが多いのではないだろうか。
速水さんは保健師として、要介護認定調査を行っていた経験も持つ。
認知症に対しての知識は豊かであったが、実際に家族が認知症になったときの戸惑いは大きく「仕事で認知症の高齢者と接するように、祖母に接することはできない」と述べている。
家族であるがゆえの苛立ちや、複雑な気持ちが正直に描かれている点も好感が持てる。
<認知症の介護をしながら、笑って過ごせるようになるまで相当な時間を要することでしょう。
笑って過ごせる日なんてすぐには来ないかもしれません。
しかし、家族の誰かが認知症になったからといって、過度に嘆き悲しみ、家族全員がずっと暗い顔で過ごし続けることはないと思うのです>
そのほか、認知症の症状をはじめ、処方される薬など、認知症についての知識を深めるためのコラムも充実。
「認知症の受容までの家族の心理的過程」では、認知症の高齢者を抱える家族が、認知症を受け入れるまでの心理について解説されており、家族のケアにも役立ちそうだ。
著者プロフィール
速水ユウ(はやみ・ゆう)さん
大阪府立看護大学(現大阪府立大学)を卒業。
病院看護師を経て、保健師として役所の介護保険の部署にて勤務し、要介護認定調査、介護相談などに携わる。
アメリカに留学し、ミズーリ大学社会学学士課程、ミネソタ州立大学女性学修士課程修了。
帰国後、慶應義塾大学看護医療学部地域看護助教、甲南女子大学看護リハビリテーション学部老年看護助教を経て、現在は企業の保健指導員として活躍している。
認知症予防食生活支援指導員。