■書名:看護・介護現場のための 高齢者の飲んでいる薬がわかる本
■著者:秋下雅弘、長瀬亜岐
■出版社:医学書院
■発行年月:2018年10月
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その薬、そのまま飲ませて本当に大丈夫?薬が原因の高齢者の事故を防ごう!
高齢者が飲んでいる薬を見て、「薬が多くて大変だな」と感じたことはないだろうか。
また「薬は本当にこれでいいのかな」と疑問に思ったことはないだろうか。
高齢者をケアする介護職であるからこそ、このようなモヤモヤを感じるだろう。
本書で薬の知識を身につけ、高齢者の生活や命を守る手助けができるようになりたいものだ。
まずは
「1 ポリファーマシー(多剤服用による害)」を読み、薬についてしっかりと理解することが基本になる。
「ポリファーマシー」とはどういうものか、どのように解決していけばよいかについて、秋下先生が医師として、長瀬先生が看護師目線で、それぞれていねいに解説している。
著者のお2人は、ポリファーマシーについて長年研究を続けてこられた方であり、内容の信頼性は抜群だ。
本書で取り上げているテーマは次の13。
薬が原因となる高齢者のアクシデント事例を知り尽くした著者によって、厳選されたものだ。
ポリファーマシー(多剤服用による害)/鎮痛薬の長期服用/せん妄の要因となる薬/睡眠薬の使い方/抗コリン作用のある薬/循環器疾患に使われる薬/腎排泄の薬/糖尿病治療薬/嚥下にかかわる薬/免疫抑制作用のある薬/漢方薬/早すぎる薬剤評価に注意/環境の変化に注意
それぞれのテーマでは、まずイメージしやすい「事例」が掲載されている。
その上で
「なぜこんなことに!?」というタイトルで事例の原因を推論し、続く
「これだけは知っておきたい!」で必要な薬の知識を解説。
最後に
「これだけはしておきたい!」というタイトルで、具体的にやるべきことがまとめてある。
要所要所に
「看護師目線のチェック項目」があり、より具体的なアドバイスも読むことができる。
老年医学の基礎をざっと学べるだけの豊富な内容を含んでいるので、高齢者介護に関連するあらゆるレベルのニーズにこたえてくれることだろう。
また必要に応じて専門用語の解説もある。
たとえば、高齢者が服用すると転倒のリスクが増すとされるベンゾジアゼピン系の薬については、商品名も含めた名前が表形式で見やすく整理されている。
その一方で、
「服薬状況を知りたいときに、高齢者から事実を引き出す聞き方」のような実践的なアドバイスも掲載されている。
<「みなさん、なかなか飲めてないですよね。どの程度飲まれていたのでしょうか」「5種類くらいですか」「半分くらいですか」というように質問のハードルを下げます。つまり処方通りに服用できていないことを前提に、実際の服薬状況を聞き出すのです。>
このように薬に関する幅広い情報を網羅していることは、本書の大きな特色と言えるだろう。
介護職として高齢者が飲んでいる薬について正確に知りたいとき、本書は絶好の一冊だ。
最初にポリファーマシーについての基礎を学んだ後は、どのテーマからでも興味のある項目から読んでいけばよい。
紹介されている事例を読めば、自分が関わる高齢者の症状と重なることもあるだろう。
高齢者介護の現場で、是非本書を役立ててほしい。
著者プロフィール(引用)
秋下 雅弘(あきした・まさひろ)さん
東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座老年病学分野・教授、東京大学医学部附属病院副院長、老年病科・科長。高齢者の医薬品適正使用、特にポリファーマシー問題について20 年以上研究を続け、学会・新聞・テレビ・雑誌などで注意を喚起するとともに、日本老年医学会や厚生労働省による関係の指針作成の中心メンバーとして尽力してきた。
長瀬 亜岐(ながせ・あき)さん
大阪大学大学院連合小児発達学研究科行動神経学・神経精神医学・寄附講座助教。高齢者が地域で安心して過ごせるために、急性期から地域まで一貫したケアの大切さを追求すべく、臨床・教育・研究に従事。急性期病院勤務時には、認知症ケアチームの活動を通して、高齢者のポリファーマシーに対し多職種との調整・連携を行ってきた。