■書名:福祉の仕事に就く人に、絶対に読んでほしい55の言葉
■著者:阿部美樹雄
■発行元:大揚社
■発行年月:2011年6月29日
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「心に添う」仕事に就く人に、仕事と生き方のヒントと勇気を与えるメッセージ集
介護の現場で、ふと、仕事の意味に迷うこともあるだろう。
利用者や入居者とのコミュニケーションに悩んだり、職員同士の人間関係に振り回されている人もいるかもしれない。そんなとき、本書に書かれた言葉が、道しるべとなって勇気を与えてくれるだろう。
著者は、重度の知的障害者施設の責任者。もともとは、その施設の職員に伝えたいことをホームページ上にメッセージとして綴ってきたものだと言う。そのため、自閉症の利用者に重点を置いた内容もあるが、「生きにくさの中で精一杯生きている方」という点では、介護を必要としている高齢者にも当てはまる部分は多い。
著者は、福祉に携わる人への心構えを次のように説く。
<私どもが大切にしてきた支援に、「心に添う」ということがあります。表層で見えていることではなく、背景にある辛さや哀しさに心を同調させようとする行為です。>
<このようなつらい状況に置かれているご本人、ご家族の方たちに、「ご安心ください。がんばらなくてもいいんですよ!」と言うメッセージを発することができるようにならなければなりません。「がんばらなくていいんですよ!」ということを言えるように、私たちはがんばらなければなりません。>
こうした言葉からは、福祉の仕事に、「誇りを持とう」というメッセージがひしひしと伝わってくる。
たとえば、福祉とは「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉だと言う。だから、「生きていくうえで必要なケア」をするだけでは、「福祉をしている」ことにはならない。著者は次のように強調する。
<言葉が不自由で意思確認が難しい人たちでも、その方々の「言葉にならない言葉」と会話をしていく力・支援・技術がこの仕事の真髄です。>
高齢者の介護の現場においても同様ではないだろうか。必要なケアをこなすことで満足感を得てしまいがちだが、介護の仕事の真髄は、その先にある。まさに「心に添う」という部分だろう。そうしたことを本書は改めて問いかけてくれる。
また、生き方そのものに迷ったときのヒントになる言葉も数多くある。
<人生はパラダイスではなく、さまざまなことが起こるのが当たり前で、そのときにたんたんと、正しいと思えることを行っていくしかない>
<人との関係とは自らが踏み出さなければよくなりません。少しの勇気が必要です。でも失敗はありません。フィードバックがあるだけです。“起こったこと”を真摯に受け止め、次に生かしていくのです。>
簡潔な文章で書かれているため読みやすい。気持ちが挫けそうになったときにパラパラめくり、心に響く言葉を探してみてはいかがだろうか。
<小田>
著者プロフィール
阿部美樹雄(あべ・みきお)さん
人間学修士。社会福祉法人 みずき福祉会 町田福祉園ゼネラルマネージャー(統括施設長)。「人材育成」「人権擁護」などのテーマで全国各地にて講演を行っている。代表的な著書には「よくわかる知的障害者の人権と施設職員のあり方」(編著)、「心のケア=対人援助技術」(監修)など。