面接のみならず社会人として基本的なマナーでもある敬語。
今回は敬語の基本から面接時でありがちな失敗例と、敬語の正しい使い方など実用的な敬語について紹介します。
面接でよく話される「尊敬語・謙譲語・丁寧語」
敬語とは、尊敬や丁寧な気持ちを相手に伝えるための表現です。
敬語には
尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類がありそれぞれ意味が異なります。
まずはその意味を確認しましょう。
尊敬語
話し相手や話中の人に対する敬意を表すために、その人の動作を述べるときの表現。
謙譲語
話し相手や話中の人に対する敬意を表すために、自分の動作などをへりくだって述べるときの表現。
丁寧語
聞き手に敬意を表して、丁寧に言うときの言い方。
(新明解国語辞典より)
「尊敬語・謙譲語・丁寧語」使い分けのポイント
面接ではケースに応じて尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つを使い分けることになります。それでは、どのように使い分けていくのかポイントを抑えましょう。
●尊敬語
尊敬語を使うときは、その人の動作を述べるときなので、面接においては
面接官の動作に対してか
面接会場にはいない目上の人(社長など)の動作を話すときに尊敬語で表現することになります。
《例文1》面接官に対しての尊敬語の使い方
面接官「私たちの介護事業所で最も重視していることは利用者様の笑顔です」
自分「(面接官)様がおっしゃるように、私にとっても利用者様の笑顔のために常に心を込めて働くことを心掛けております」
ここでは面接官が話したことに対し尊敬語の
「おっしゃる」を使っています。
《例文2》話中に目上の人が出てくるときの使い方
自分「御社のホームページで社長がこども食堂へのボランティアスタッフとしても活動なさっているのを拝見して、介護のみならず地域の課題に積極的に取り組んでいる姿に感銘を受けました」
面接会場に社長はいませんが、話中で社長に触れています。社長がボランティアスタッフとして活動しているという行動に対し「する」の尊敬語
「なさる」を使っています。
●謙譲語
尊敬語は相手の動作に対し使う表現でしたが、謙譲語は
自分の動作に対し使う表現になります。そして、謙譲語のポイントは
自分の動作を低めることで相手を立てるということです。
一見すると難しそうに思うかもしれませんがビジネスシーンでは非常に多岐にわたり使うことが多い表現ですので、面接前までにはマスターしておきましょう。
《例文1》面接日程等の連絡時の使い方
面接官「面接の日時は8月6日の午後1時半からで、場所は〇〇でお願いします」
自分「かしこまりました。8月6日の午後1時半に○○へ伺います。よろしくお願いします」
相手の言葉に対し理解したこと「分かりました」の謙譲語は
「かしこまりました」です。「承知いたしました」でも問題ありません。また、「行く」の謙譲語は
「伺う」を使います。
《例文2》面接時における謙譲語の使い方1
面接官「今、介護の現場を見学してもらいましたが、何か聞きたいことはありますか」
自分「皆様がとても元気で感銘を受けました。日々の支援について特に心掛けていることについて伺ってもよろしいでしょうか」
例文1の場合「伺う」は「行く」の謙譲語として使っていましたが、今回は「聞く」の謙譲語として
「伺う」を使っています。このように「伺う」という言葉は、ケースによって意味が異なります。
《例文3》面接時における謙譲語の使い方2
面接官「私たちの事業所の基本理念及び基本方針はご存じですか」
自分「存じております。基本理念は〇〇で基本方針は△△です」
「知っている」の謙譲語は
「存じている」です。
《例文4》面接時における謙譲語の使い方3
面接官「先ほど述べられていた数値の根拠は?」
自分「厚生労働省の〇〇調査をもとに数値を申し上げました」
自分から何か物事を言うというときは
「申し上げる」を使います。
《例文5》面接終了時の挨拶での使い方
面接官「これで面接は以上となります。本日はありがとうございました」
自分「こちらこそ、貴重なお時間をいただきありがとうございました」
面接官が面接に時間をとってくれたことに対するお礼です。求職者側の立場では時間をもらったことになるので「もらう」の謙譲語
「いただく」を使います。
●丁寧語
丁寧語は、相手や内容を問わず聞き手に敬意を表すことなので、
表現を丁寧にするときに使います。基本的に文末は
「です」「ます」を使います。
面接でよく話される敬語一覧
会う:(尊)お会いになる・(謙)お目にかかる・(丁)会います
言う:(尊)おっしゃる・(謙)申し上げる・(丁)言います
行く:(尊)いらっしゃる・(謙)伺う・(丁)行きます
いる:(尊)いらっしゃる・(謙)おる・(丁)います
聞く:(尊)お聞きになる・(謙)伺う・(丁)聞きます
来る:(尊)いらっしゃる・(謙)参る・(丁)来ます
知る:(尊)ご存じ・(謙)存じ上げる・(丁)知ります
する:(尊)なさる・(謙)いたす・(丁)します
見る:(尊)ご覧になる・(謙)拝見する・(丁)見ます
読む:(尊)ご覧になる・(謙)拝読する・(丁)読みます
もらう:(尊)お受け取りになる・(謙)いただく・(丁)もらいます
※(尊):尊敬語 (謙):謙譲語 (丁):丁寧語
間違えやすい敬語をチェック!
面接でよく話される会話の中から、間違えやすい敬語を紹介します。
どうして間違っているかわかりますか?
1.会う
(尊敬語)
× 「御社の〇〇様には支援協会のイベントで会ったことがあります」
〇 「御社の〇〇様には支援協会のイベントにてお会いしたことがあります」
(謙譲語)
× 「〇〇様にお会いできて光栄です」
〇 「〇〇様にお目にかかれて光栄です」
2.言う
(尊敬語)
× 「(面接官)様の言う通り、私も介護は心が重要だと考えております」
〇 「(面接官)様のおっしゃる通り、私も介護は心が重要だと考えております」
(謙譲語)
× 「先ほど、私が言ったように、介護は心が重要だと考えております」
〇 「先ほど、私が申し上げましたように、介護は心が重要だと考えております」
3.行く
(尊敬語)
× 「社長が、災害のたびに被災地の老人ホームへボランティアスタッフとして行っていて感銘を受けました」
〇 「社長が、災害のたびに被災地の老人ホームへボランティアスタッフとして行かれていて感銘を受けました」
(謙譲語)
× 「令和2年8月6日の午後1時に御社へ行きます」
〇 「令和2年8月6日の午後1時に御社へ伺います」
4.いる
(尊敬語)
× 「面接担当の〇〇様はいますか」
〇 「面接担当の〇〇様はいらっしゃいますか」
(謙譲語)
× 「9時まで自宅にいるので、ご連絡をお待ちしております」
〇 「9時まで自宅におりますので、ご連絡をお待ちしております」
5.聞く
(尊敬語)
× 「御社の利用者〇〇様から私のことで何か伺っていますか」
〇 「御社の利用者〇〇様から私のことで何かお聞きになりましたか」
(謙譲語)
× 「給与について聞いてもいいですか」
〇 「給与について伺ってもよろしいでしょうか」
6.来る
(尊敬語)
× 「先日、支援協会のイベントに御社の〇〇様が来てくれて、とても充実した内容になりました」
〇 「先日、支援協会のイベントに御社の〇〇様がいらっしゃって、とても充実した内容になりました」
(謙譲語)
× 「先日、御社へ見学しに来ました。スタッフをはじめ皆様が丁寧に対応くださり、ありがとうございました」
〇 「先日、御社へ見学に参りました。スタッフをはじめ皆様が丁寧に対応くださり、ありがとうございました」
7.知る
(尊敬語)
× 「(面接官)様はすでに知っていると思いますが、介護報酬の改定が令和3年度にあります」
〇 「(面接官)様はすでにご存じかもしれませんが、介護報酬の改定が令和3年度にあります」
(謙譲語)
× 「地域における公益的な取り組みの責務についてはよく分かりません」
〇 「地域における公益的な取り組みの責務については存じ上げません」
8.する
(尊敬語)
× 「御社の〇〇様が△△市の□□委員として活動しているのをホームページで拝見しました」
〇 「御社の〇〇様が△△市の□□委員として活動なさっているのをホームページで拝見しました」
(謙譲語)
× 「学生時代は老人ホームで傾聴ボランティアをしてました」
〇 「学生時代は老人ホームで傾聴ボランティアをいたしました」
9.見る
(尊敬語)
× 「私の志望動機のシートを見てください」
〇 「私の志望動機のシートをご覧ください」
(謙譲語)
× 「御社のホームページを見ました」
〇 「御社のホームページを拝見しました」
10.読む
(尊敬語)
× 「私の自己PRシートは見てくれましたか」
〇 「私の自己PRシートはご覧になりましたか」
(謙譲語)
× 「御社の〇〇様の書籍を読みました」
〇 「御社の〇〇様の書籍を拝読しました」
11.もらう
(尊敬語)
× 「事前にお送りしました自己PRシートはもらってますか」
〇 「事前にお送りしました自己PRシートはお受け取りになりましたか」
(謙譲語)
× 「企業ガイダンスの際にパンフレットをもらいました」
〇 「企業ガイダンスの際にパンフレットをいただきました」
こんな言い回しは要注意!
その他、面接の際に注意してほしい敬語は以下の通りです。
1.返事
× 「了解しました」
〇 「承知いたしました」「かしこまりました」
2.確認
× 「これで結構でしょうか」
〇 「これでよろしいでしょうか」
3.謝罪
× 「すいませんでした」
〇 「申し訳ありません」
4.謝罪の意
× 「すいませんが、もう一度お願いします」
〇 「恐れ入りますが、もう一度お願いします」
5.同意
× 「大丈夫です」
〇 「問題ございません」「差し支えありません」
6.一人称
× 「自分」「わたし」「ぼく」「おれ」
〇 「わたくし」
「えーと」「まあー」「うんと」といった有声休止は使わないこと
有声休止は話の流れを止めるので、多用するとかなり悪い印象になります。例えば
「まあ、私がまず御社を志望したのは、えーと、御社の基本理念と基本方針に感銘を受けて、えーと、ぜひともこの場所で働きたいと思うようになりました」
これでは意図が伝わらないばかりか、その場しのぎで考えているようにとらわれることもあるので有声休止は使わないようにしましょう。
「それ」「これ」「あれ」具体性のない言葉は控えたほうが◎
「それ」「これ」「あれ」は指示詞と呼ばれますが、指示対象までの距離が離れている、話中に指示対象がないなどで、面接官が何を指して話をしているのか分からない場合があります。
指示対象は明確にしておくと面接官に自分の意思が伝えられやすくなるので「それ」「これ」「あれ」といった具体性のない言葉は控えたほうがよいでしょう。
「なるほど」は面接でもビジネスシーンでもNG
相手の話に同意や納得をするときに「なるほど」という言葉を使うことが多いのですが、目上の人に使うと、上から目線にとらわれ、不快感を与えることになりかねないので、ビジネスシーンにおいては使わないほうがよい言葉です。「なるほど」ではなく「おっしゃる通り」と答えるようにしましょう。
まとめ
敬語は社会人としてのマナーです。面接時にしっかりと敬語を使えることは採用の一つの基準です。
特に介護は対人援助業務です。利用者さんの人格を尊重し、利用者さんとの関わり合いの中で、利用者さんへの対応、受け答え、挨拶などを丁寧に行うよう敬語を心掛けることが大切です。
正しい敬語の使い方を面接前までに身につけておきましょう。