ここ数年、増え続けているサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。
仕事内容をよく知らずに転職したけど、イメージと違った…。仕事内容や職場の雰囲気など、他の施設との違いに戸惑った…という声も。
ここでは、「サービス付き高齢者向け住宅」に転職した先輩たちの失敗談を、介護求人ナビ編集部からのアドバイス付きでご紹介。
せっかくの転職を失敗に終わらせないためにも、ぜひ参考にしてください!
《事例1》やることといえば安否確認。介護のスキルが活かせないなんてショック…
43歳/女性/節子
最近よく耳にしていた「サービス付き高齢者向け住宅」が近所にできたのを知り、オープニングスタッフとして転職。訪問ヘルパーで身につけた介護スキルを施設で活かせると張り切っていたのですが…。
実際の入居者様はお元気な方ばかりで、私の主な仕事は、安否確認。「サービス付き」というから、てっきり「介護サービス」のことだと思ったのに…。
これじゃあ、せっかくの介護のスキルがムダになってしまいます。
《アドバイス》
高齢者向けの施設には様々な種類があります。
介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームのような介護を提供する施設もあれば、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のように、住宅機能がメインの施設もあります。
勘違いしがちですが、サ高住は介護施設ではありません。あくまでも高齢者向けの賃貸住宅です。
入居者は、賃貸マンションに住むのと同じような感覚で生活し、介護サービスを利用する場合は、外部の訪問介護事業者と個別に契約することになります。
サービス付き高齢者向け住宅の「サービス」とは、「介護サービス」ではなく、安否確認や生活相談などの「見守りサービス」を指します。
サ高住に所属する職員は、定期的にお部屋を訪問したり、食事の際などを利用して安否確認をしたり、ナースコールにも対応するほか、生活全般の相談や各種手配といったフロントのような業務を担当するケースがほとんど。
しかし、サ高住はどこも自立の元気な高齢者ばかり、というわけではありません。アクティブな老後を送りたい人のために、設備や食事を充実させ習い事やイベントなどを用意する施設がある一方で、ケアに重点を置き、訪問ヘルパーや看護師が24時間常駐するところもあります。
施設によって、入居者や、求められる仕事内容も異なるので確認が必要です。
転職を検討する際には、まず希望する転職先が、どんなサービスを提供している施設なのかを確認しましょう。
●介護施設なのか、高齢者向け住宅なのか?
●どんなケアやサービスを提供するのか?
●サ高住の場合、施設の特徴は?
あなたのケースでは、求めていた仕事内容とのギャップが大きいようです。
現在の職場では仕事内容に満足できないということであれば、より介護スキルを発揮できる特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームへの転職を検討してみるのも一つの手です。
なお、サ高住では多くの場合、訪問介護事業所が同じ敷地内に存在します。入居者が介護サービスを利用する場合は、それらの外部の訪問介護事業者と契約します。
こういったケースでは、併設する訪問介護事業所が、サ高住と同じ法人であることも少なくありません。
もし同じ法人であれば、あなたの働きかけ次第で、法人内での異動という形で、職場を変えてもらえるかもしれません。上司に相談してみてはいかがでしょうか。
《事例2》前職と同じ「サ高住」勤務なのに。 雰囲気も仕事内容も大違いでとまどっています
33歳/男性/トシオ
前に勤めていたサービス付き高齢者向け住宅は元気な入居者様が多く、料理教室や絵画教室、外出イベントなど、生活を楽しむメニューが充実していました。
ところが転職先のサ高住は、要介護度の高い方や認知症の方も入居可能で、お元気な方がほとんどいません。ナースコールは頻繁に鳴るし、先日の夜勤では急変された方がいて救急車を呼びました。
雰囲気がまるで違って同じサ高住とは思えません。以前のようにわいわい楽しい雰囲気の中で仕事がしたいんです…。
《アドバイス》
一口にサ高住といっても、施設によってそれぞれ特長があります。「安否確認」と「生活相談サービス」が基本のサービスであることは変わりません。
しかし、訪問介護や訪問看護、定期巡回・随時対応サービスなどの事業所を併設したり、医療機関との密な連携によって、充実した内容の介護・医療サービスを提供するサ高住も増えています。
受け入れる要介護度や、認知症対応も異なり、重度の方のケアや看取りに対応している施設もあります。
転職先としてサ高住を選ぶ際には、その施設で提供するサービス内容をしっかりチェックしましょう。
求人情報だけでなく、施設や法人の公式サイトも確認するといいでしょう。
以下のような点に注意して見れば、現場で介護職がどんなケアが求められるのかが想像できます。
●利用者にどんなサービスを提供しているのか?
●併設する事業所は?
●受け入れる要介護度は?
●どんな医療ケアに対応しているのか?
●認知症対応はどうなっているか?
近年、特別養護老人ホームの待機者の増加が社会問題になっています。特別養護老人ホームの空きを待つ間に、賃貸マンションの感覚で入居できるサ高住を利用するケースも少なくないようです。
介護が必要な方のニーズが高くなっているのに合わせて、重度なケアに対応するサ高住も増えています。そうした現状を知っておくことも、失敗しない転職先選びの大事なヒントになるでしょう。
あなたの場合は、自立の元気な入居者が多いサ高住で働きたいということなので、今の職場は負担が大きいと感じられるかもしれませんね。
しかし今後、要介護度が高い入居者を受け入れるサ高住はますます増えると考えられます。
将来のキャリアを考えると、今回の転職はあなたのスキルの幅を広げるうえでも良い経験になるかもしれません。まずは、そういう意識を持って取り組んでみてはいかがですか?
それでもどうしても合わないと感じるのであれば、上記の注意点を押さえて、転職先を探してみてはいかがでしょう。
《事例3》あるときはフロント業務、あるときは身体介助。兼務だなんて、聞いてなかった!
36歳/女性/由希
介護付き有料老人ホームから、訪問介護事業所が併設されたサ高住に転職しました。
私の仕事はサ高住でのフロント業務ですが、訪問介護のスタッフとして身体介助もさせられ、大忙し。兼務だなんて聞いてなかったのに…。しかもサ高住のスタッフとして行うことと、訪問介護スタッフとして行うことは違うとか。
「こんなに面倒な職場だとは思わなかった」というのが本音。このまま続けられるか自信がありません。
《アドバイス》
サ高住では、入居者が外部の訪問介護事業者と契約して、必要なときに必要な介護サービスを利用します。
訪問介護事業者は、多くの場合、同じ建物内などにあり、サ高住と同じ法人が運営しているケースも少なくありません。
そうした訪問介護併設のサ高住では、スタッフが両方の仕事を兼務することもあります。
あるときはサ高住の職員として安否確認や生活サービスを提供し、あるときは訪問介護事業所の職員として介護サービスを行うということになります。
まさに一人二役、と言いたいところですが、実は、どちらの役も同時にこなすことはできません。
訪問ヘルパーとして関わるときと、サ高住の職員として関わるときとで時間や提供できるサービスを明確に線引きしなければいけません。
ですから、自分はこの時間帯はどちらの職員としてサービスを提供しているのかを把握しておく必要があります。最初はその線引きに混乱してしまうケースも多いようです。
《サ高住のスタッフとして見守りや生活サービスを提供する場合》
●ナースコールや相談事への対応など。利用者の要望・都合に合わせて臨機応変に対応
●日常的な生活サービスも提供
《訪問介護事業所の職員として、介護サービスを提供する場合》
●ケアマネジャーが作成したケアプランに添ってサービスを提供
●訪問時間は厳守
●介護保険外の日常的な家事サービスは不可
サ高住に関連する求人には、以下の3種類があります。
1.フロント業務や見守り・生活サービスのみの仕事 (所属はサ高住)
2.訪問介護サービスのみの仕事 (所属は訪問介護事業所)
3.フロントと訪問介護の両方が求められる仕事 (上記2つの兼務)
この違いを意識せずに入職してしまうと、「サ高住だからフロント業務だけだと思っていたのに、身体介助までさせられる」とか、「介護をしたかったのに仕事が物足りない」などと不満を感じることになるでしょう。
転職してから後悔しないために、事前にどんな仕事内容なのかを求人情報などでしっかり確認しておくことが大切です。
もし訪問介護が兼務になる場合は、面接の段階でできるだけ具体的に、業務区分や人員配置、勤務時間の区分けなども聞くようにしましょう。
今回のケースでは、あなたは予想外の仕事内容に驚き、とまどわれているようですね。しかし、もともと介護付き有料老人ホームを経験されていますし、慣れてくれば、悩みも解消するかもしれません。
もちろん、やりたい仕事とのギャップを抱えながら続けるのは難しいものです。その場合は、自分がやりたい介護の内容や、働きたい施設形態をあらためて検討しましょう。
今回のように、介護サービスは別の外部事業者が提供する、という形態は、住宅型有料老人ホームも同じです。
サ高住や住宅型有料のフロントを選択されるのであれば、特に業務内容に留意して転職活動を進めるようにしましょう。
●○● 介護業界で転職する時の 基本ノウハウ ●○●
介護求人ナビの求人数は業界最大級! エリア・職種・事業所の種類など、さまざまな条件で検索できます