一度は退職した介護の仕事。けれど、辞めてみたら焦燥感ばかりが押し寄せ、ウツになりかけたというM・Rさん。「こんなに介護の仕事が好きだったなんて」。あらためて自覚すると、仕事への取り組み方も変わってきました。最終回は、ケアマネジャーとして、どう介護の仕事にかかわっていくのかを語っていただき、今後の介護職としての在り方を見つめ直します。
*M・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
M・Rさん(52歳)の転職経験
10代で結婚。短大卒業後、大手メーカーで事務として9年勤務
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東京に上京し事務として勤務。その後派遣に転職し、働きながら音楽活動。その間に二度目の結婚、出産
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実家が介護事業所の友達に誘われ、訪問ヘルパーとして3年勤務
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グループホームに転職。介護福祉士の資格取得。しかし介護の仕方に疑問を持ち異動願い。訪問介護のサービス提供責任者に異動
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サ責の仕事が多忙で夫の不満がつのり退職。しかし無職状態にウツになりかける
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仕事復帰しグループホームに就職。ケアマネジャーの資格を取得
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介護職を辞め、新たなグループホームに転職しケアマネジャーに
ホーム長が変わると雰囲気が一変
復帰後の仕事場をグループホームにしたのは、前のグループホームでの勤務に後悔が残ったからでもあります。もっと利用者さんのために介護の仕事をしたい。もっと利用者さんの心に触れたい。いい介護ができるグループホームで力を発揮したい。そんな思いが募っていました。あらたに友人の紹介で務めたグループホームは、ホーム長のポリシーがすばらしく、ここでなら、自分の思いを受け止めてくれると確信できました。
実際にそのホーム長のもとで働いてみると、それぞれの利用者さんの意思を尊重して接しているのがわかります。だからこそ、利用者さんの認知症の周辺症状の現れ方も穏やかで、「理想的な介護」だと思えました。私自身も介護福祉士としての勤務だったので、介護の専門性の高さを期待され、「もっと技術を上げなければ」と意欲が出てきました。やっと理想の職場を見つけた、という思いでした。
ところが、尊敬するホーム長が辞めて、異業種から参入してきた男性職員がホーム長になると、ガラリと変わってしまいました。まず、介護のポリシーがない。技術もない。職員をまとめることもできないし、利用者さんへの対応もバラバラに。ホーム長が変わると、ここまで変わってしまうのかとびっくりしました。
尊敬できない上司のもとで仕事をするのはつらいです。また、新しく入ってきたケアマネジャーも、私から見ると、利用者さんへの思いが薄く、尊敬できない方でした。こんな方たちに使われるのはいやだ。その思いは強くなるばかりです。でも、自分に権限がなければ、口は出せません。…それなら、自分でケアマネジャーを取ろう。はじめてそう思いました。
これまでは、「資格なんていらない」「試験勉強が面倒だ」と避けていましたが、この仕事で生きていくためには、やはり専門的な知識や技術、そしてみんなに認められるような資格がなければ意味がないと思うようになりました。
以来、ちょっとした間も惜しまず、勉強しました。50歳を超えての試験勉強は、記憶力が鈍っていることも含めて大変でした。でも、とにかく取るんだ、取らなければ、という思いが強く、苦手な暗記もがんばり、なんとかギリギリで合格することができました。
ケアマネの資格を得たら、今の職場を辞めよう。そして、ケアマネジャーとして新たな職場で一歩を踏み出そう。そう考えていたので、合格するとすぐに、辞表を出す準備をしました。
行先は、新しく立ち上げるグループホームにしようと考えました。お局様のようなヘルパーさんが仕切っているところではなく、キャリアも技術もないサービス提供責任者が仕切っているところでもない。みんなで作り上げていくようなホームがいいと思いました。
いくつかの介護の求人サイトに登録し、自分の住まいから遠くない職場を探しました。応募する前に事業者のサイトでホームの運営ポリシーなどをよく読んでから、採用担当者にコンタクトするようにしていました。そうしたところ、自分にピッタリな職場を発見。自ら売り込んで、採用してもらいました。
自分が中心になっていいホームを作る
今の職場は若いスタッフが多く、活気があります。ホーム長も自分よりずっと若いですが、以前のホーム長と違って、意欲にあふれ、利用者さんのために自分たちが動くのだ、という思いが強い人。もちろん、「これはいただけない」ということもありますが、私もケアマネジャーですし、みんなをまとめる立場でもあります。いいチームワークを作りながら「利用者さん本位のグループホーム」を作っていこうと思っています。
自分の過去を振り返ると、職場に不満を持っていた時期も長かったと思います。でも、それは自分が未熟であったことも関係していたと思うのです。自分に力がついてくれば、利用者さんとしっかりと心を通わせることができる。入浴や排せつを拒まれても、利用者さんの心を和ませながら、スムーズにできるようにもなりました。押してばかりでなく、引いて実現できることもたくさんあるのだな、と気づくようにもなりました。
夫はそんな私を見て、「うちのお母さんもなかなかやるよね」と言ってくれるようになりました。息子も将来の職業を考える年齢になりました。介護の仕事を無理に勧めようとは思いませんが、ときどき職場を見せるようにはしています。将来の仕事を決めるときには、選択肢のひとつにしてもいいんじゃないかな、と思っています。
60歳まではこの仕事でがんばろう。そして、がんばり切ったら、そのあとはピアノ教室で好きな音楽を教えたいとか、70歳からはたこ焼き屋をやりたいとか、たくさんの夢があります。その夢を実現するためにも、今、介護の世界で納得のいく仕事をしていきたいと強く思っています。
*M・Rさんの「私が転職した理由」…
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