病院から自宅への橋渡しのような場所、それが介護老人保険施設(老健)。医療と近い老人ホームだから、学べることが多かったけれど、理想の介護、利用者さんとのコミュニケーションを考えたとき、もっと違う道もあるのでは、と思えてきて……。Nさんが決めた転職先は、こぢんまりとした高級有料老人ホームでした。
*N・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
N・Rさん(37歳)の転職経験
大学卒業後、1年間、百貨店でケーキ販売の仕事に就く
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高級和食店のフロントの仕事を3年務める
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和食店在職中にヘルパー2級を取得し、介護老人保険施設(老健)に5年間勤務。介護福祉士の資格を取得
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高級と言われる介護付き有料老人ホームに5年間勤務
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住宅型有料老人ホームに併設する訪問介護事業所に1年余勤務。現在、介護職を続けながら、ケアマネジャー資格取得の準備中
小ぢんまりしたホームでケアしたい
老健は、ケガや病気などで入院し、そのまま自宅に帰るには少し難しい高齢者のための施設。医療ケアやリハビリを受けながら回復し、自宅復帰につなげる、という意味合いが強い場所です。介護の必要ももちろんありますが、リハビリなどに重点が置かれているのが現実。身体の回復に力を注ぎ、「心地よく過ごしていただくこと」は、どうしても二の次になりがちです。
そもそも「回復」といっても、骨折や脳梗塞で倒れた高齢者の方々に、健常者のようになっていただくことは難しい場合も多々あります。それでも、「回復のために」と計画が組まれ、利用者さんにとっては厳しい内容になっていることもあります。
「ノーマライゼーション(=高齢者や障害者ができるかぎり、一般の人と同じ生活が送れる社会を築くという考え方)」という言葉を学ぶと、老健での仕事が、少し虚しく思えてきます。いくらリハビリしても障害はなくならない方の身体のケア、心のケアも大事なのではないか――。障害を持っていてもできることはあります。ご本人の気持ちを考えながら、障害とともに生きることをサポートする介護もあると思うのです。
高齢で、回復が難しい状況で生きていく方々。そういう方々によりよく生きていただく場所こそが、私が介護職として働きたい場所なんだ、という思いはますます強くなり、老健という場所から転職しようと決心がつきました。
「終の棲家」という意味では特別養護老人ホーム(特養)もありますが、もっとこぢんまりとした利用者さんの自由度が高いところがいいな、と思いました。100床もあるホームで目まぐるしく働いていて、きめ細かいケアができていなかった、という反省もあって。おひとりおひとりに目が届くところがいい。そして、高級和食店で働いていたキャリアを活かすためにも、少し高級なホームで働いてみたい、と思って、小さくてグレード感のある有料老人ホームの求人をインターネットで探しました。
幸いにも、自宅からほど近い場所にみつかり、面接を受けると合格。同じ業界で正社員採用といっても、これまでとまったく違う介護を仕事にすることになりました。
有料老人ホームらしい介護を学んだ
新しい職場は、とても魅力的でした。27床ほどの小さなホームで、入居している方々も和気あいあい。いわゆる高級有料老人ホームなので、気さくながら品のいいマダムもたくさんいらっしゃいます。アクティビティも、そういう方々が満足するような内容で、クラシック音楽鑑賞、クッキング、お茶会など、私にとっては新鮮なことばかりでした。
また、流れ作業的な接し方ではなく、おひとりおひとりにふさわしい接し方を望まれます。そのため、それぞれの方とよく接して観察し、ご性格を知ることが大事になります。入居前の生活歴や身体の細かい状況、ご希望などもしっかり把握する必要があります。でもそれは、むしろやりたくても老健ではできなかったことなので、とてもうれしく、やりがいを持って取り組むことができました。
ただ、技術的なところでは、愕然とすることが多かったですね。5年間介護技術を学んで、ある程度自信を持って入社したのですが、むしろ「今まで何やってきたんだろう」と反省することも多かったです。車椅子からベッドへの移乗のときなど、先輩から「うちは、そんなふうにズボンを持って移乗なんかしないのよ。もっとていねいに」と諭されます。利用者さんに失礼にならない介護、本当の意味での心地良い介護を要求されるのです。老健ではあたりまえのことが、ここでは通用しない。場所が変われば介護も変わるのだとわかり、「学ばせていただいている」とありがたく思いました。
たしかに、厳しく叱られるとつらいですが、理由なく怒られることはないですし、最初からうまくいくわけもない、と腹をくくっていました。また、ここにも同期で心を開いて付き合える友人ができたので、励まし合ってやっていけました。人に恵まれているんですね。
この有料老人ホームでの日々は、とても充実していました。けれど、途中で東日本大震災が起こり、「生きること」、ライフスタイルについていろいろと深く考えてしまって。また、入社4年目に結婚したこともあって、一度、仕事を休んでみようか、という気持ちも起こりました。
常に、利用者さんのことを考える介護の仕事は終わりがありません。私の場合、休みの日も、仕事のことが頭を離れません。知らず知らずのうちに、疲労をためていたのかな、と思います。大好きな仕事だけれど、一度区切りをつけよう、そのほうが逆に続けていけるかも知れない、という思いもありました。
最終回の次回は、今まで考えていなかったキャリアアップを視野に入れるNさんをお伝えします。
*N・Rさんの「私が転職した理由」…
1回目、
2回目、3回目、
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