大手の有料老人ホームに就職し、介護職として10年間勤務。順調にステップアップし、施設長としても実績を上げていたKさん。なんと現在は、お金のエキスパートである「ファイナンシャルプランナー」として独立されています。介護業界から畑違いの職種へ転身したように見えますが、実は介護の仕事があったからこそつながった道。介護の経験が十分に生かされています。キャリアをどう磨き、どう将来につなげるか。悩んでいる読者に、Kさんが大きなヒントをくれました。
*M・Kさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
M・Kさん(32歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…10年
●転職回数…1回
●今までの勤務先…有料老人ホーム
●現在の勤務先…自営業(ファイナンシャルプランナー)
●保有資格…介護福祉士、介護支援専門員、ファイナンシャルプランニング技能士
介護職のきっかけは大学の教職課程
12年ほど前、大学の法学部に通っていた3年のとき、教職課程の一環で特別養護老人ホーム(特養)に1週間、実習に行きました。教職免許を取得するために必要だったためです。このホームはとても雰囲気がよく、利用者さんの笑顔が印象的でした。僕らのような実習生がつたない介護をしても、「ありがとうね、嬉しいわ」などと言ってくださり、とても感激しました。介護職は大変、などと言いますが、人に感謝される素晴らしい仕事だ、という思いを強く持ちました。
その後、介護の仕事に就くなら、何か資格を持って就活をしたほうがいいだろうと思い、すぐにヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修と同等の資格にあたる)を取得しました。ここでも、特養に実習に行ったのですが、ここでは前回とは違う意味での衝撃を受けました。昼食の献立が書いてある紙を何気なくテーブルに置いたところ、年配の女性職員に怒鳴られたのです。「そんなのテーブルに置かないで! みんなボケててわかんないんだから、食べちゃうでしょ!」
利用者さんのことを、そんなふうに言うなんて。しかも、利用者さんの目の前で、です。きっと聞こえている、と思っていたら、利用者さんのひとりが、苦々しく、小さな声でつぶやきました。「そんなの食べるわけないじゃないの」。
こういう介護はしたくない、と痛切に思いました。信頼関係のないサービスなんて、とんでもない。介護の仕事を選ぶことをやめ、さっさと別の仕事に就いたほうがいいのではないか、と思いました。それなのに、以来、その衝撃が脳裏に残り、介護の仕事が気になってたまりませんでした。
もしもこれが介護の現実なら、この現実を変えたい。自分の両親、あるいは自分自身が入居したいと思うようなホームづくりをし、サービスを提供したい。その思いがどんどん大きくなってきました。よし、介護職だ! 思いは固まりました。自分の中の反骨精神が後押ししたのです。
他業種から参入してきた事業所がいい
どこに就職しようかと考えたときに、新しく介護業界に参入してきたところがいい、と思いました。昔ながらのやり方で運営をしている事業所ではなく、他業種で実績を上げ、その手法で介護業界に切り込んでくるようなところがいい。古いやり方のすべてが悪いわけではありません。でも、そのほうが新しい視点を持って運営するのではないかと思いました。制度にしばられがちな介護業界ですが、制度を超えたところにビジネスの未来がある、と僕自身が思ったのです。
いろいろ調べているうちに、飲食業界の大手が経営する有料老人ホームがいいのではないかと思うようになりました。そこは、社長が介護に熱意を持って取り組み、大量仕入れの良さを生かしていい意味でのコストダウンとサービスの向上を実現していました。
面接に行くと、面接官と意気投合。「君のような熱意のある大卒の新人が欲しいんだ」と熱く語ってくれ、自分の活躍の場が決まったと、実感しました。
周囲からは「法学部卒なのに、介護?」と言われることもありましたが、そんなことは気になりませんでした。新しいフィールドを築いていくには、ここしかない、という思いがありました。
次回は、2年でリーダー格になったKさんの仕事ぶりを紹介します。
*M・Kさんの「私が転職した理由」…1回目、
2回目、
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●先輩たちの職場選びの失敗事例に学ぼう
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