毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「新規オープンの施設で働く良い点・悪い点」という話題について紹介します。
未経験で転職を決意!新規オープンの老人ホームに転職したヒロタさん
このコーナーでは、介護現場で見かけた“ちょっとおもしろい人”“おかしな事件”などについて紹介してきたが、世の中の大部分の人は、おもしろエピソードなど滅多に起こさない普通の人ばかり。
介護業界の“ごく普通のスタッフ”は、実際にはどんな環境で働いているのだろうか?
関東地方の某県にオープンしたばかりの介護付き有料老人ホームで働く30代の女性・ヒロタさんに、本音も交えて労働環境について尋ねてみた。
ヒロタさんが働く老人ホームは、2018年の春、新線の開通により注目度が俄然高まっている地域にオープンした介護付き有料老人ホーム。
ヒロタさんがその施設を選んだきっかけは、新聞の折り込み広告だったという。
『新規オープンの施設なので、あなたたちの力で良い施設に』
「単純にすごく条件が良かったんです。
私は介護職は未経験でしたが、広告には『未経験者歓迎!』『研修サポート体制が充実』『資格取得の費用は施設が全額負担』と書かれていたので勇気を出して応募することにしました。
『新規オープンの施設なので、あなたたちの力で良い施設に』というキャッチフレーズにも心惹かれました」
折り込み広告を見てすぐに連絡し、履歴書の送付、面接と簡単な筆記試験を経て、その施設で働くことになったヒロタさん。
無資格ということで、シーツの交換、配膳など、今のところは比較的簡単な仕事をしているヒロタさんは、施設の待遇には満足しているそうだが、福利厚生の中には広告に書かれていた通りになっていないものも含まれているという。
給与や待遇には不満なし!でも厳しいのは…
「待遇に関しては、募集要項に何ら偽りはありませんでした。
入社祝い金、年2回の賞与、年1回の給与見直し、時間外手当、通勤手当などは何の問題もなく支払われており、サービス残業とも無縁です。
給与水準は他の介護施設と比べて高い方ではありませんが、各種保険、まかない料理、職員旅行や飲み会への補助、関係施設の割引などが充実しているので、給与面で不満はありません」
そんなヒロタさんたちスタッフが気にしているのは、“休日”についてだという。
「休日に関しては、なかなか厳しい状況です。
本来であれば、『4週で8休』『半期ごとに3日の休暇あり』『年間で113日休み』『有給休暇は初年度10日付与』なのですが、半期ごとの休暇や有給休暇はなかなか取れません。
現時点では『まだ初年度だから』と、スタッフも納得していますが、そろそろ不満の声が上がり始めました」
オープニングスタッフならではの人間関係の悩みが発覚
さらに別の問題も発生している。
前の仕事を人間関係のトラブルで辞めているヒロタさん。新たな人間関係を作りたいという理由もあって新規オープンの施設を選んだという。
しかし、現在の職場では、結束の固さがかえって問題になることがあるそうだ。
「私達はオープニングスタッフということでスタッフ間の仲間意識が強く、とても居心地が良いのですが、後から入ってきたスタッフがまるで転校生のような扱いになってしまい、なかなか定着しないというのが目下の問題点です。
もう少し経てばスタッフも少しずつ入れ替わり、違和感がなくなるのでしょうが、人手が足りないのに新規スタッフが定着しないので、休みが取れないという悪循環に陥っています」
アイドルグループにも見られるように、“一期生”が別格扱いになってしまうのはよくあること。
新規オープンの施設には、スタッフの派閥争いや“暗黙のルール”など、古くからある施設にありがちなトラブルは少ないが、新しい施設ならではの悩みも存在するようだ。
それでも、ヒロタさんが言うように、新しい人間関係でスタッフ間の結束力が高まるのも本当のこと。
オープニング施設のメリット・デメリットを見極めて職場を選ぶと、満足がいく環境で働くことができそうだ。