毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、
「今さら覚えられない!介護業界のパソコン基本スキル」という話題を紹介します。
パソコンが苦手な大人たち…
今の中学生や高校生は、生まれた時からパソコンや携帯電話があるデジタルネイティブ世代。学校の授業でパソコンを使う機会もあり、パソコンに対する抵抗感は無いという。
一方で、50代以上ともなれば、働き始めた頃には職場に自分用パソコンが無いのは当たり前で、「パソコンが苦手」という人は少なくない。
介護記録やデータは、ほぼ手書き!
都内のある介護付き有料老人ホームでは、いまだに書類は手書きが主流だ。同施設で働くモリさんがいう。
「私は介護業界歴が20年以上あり、色々な施設で働いてきましたが、いまだに“手書き文化”が残っているところも多く、今の施設でも多くの書類が手書きです。
現在、施設で使っている入居者のファイルには、『口腔ケアについて、より丁寧に行うように毎日、声かけする』『“買い物に行きたい”との希望アリ』『浴室が湿気で滑るので、担当者はよく拭くこと』など、担当者からの伝達事項が手書きで書かれており、チェックシート、定期的に行う体重測定の結果も手書き。
入居者のデータが記された昔ながらのバインダーが、ずらりと並んでいます」
まるでパソコンアレルギー!「勉強するくらいなら…」
一向にデジタル化が進まないのは予算的な問題もあるが、一番のネックはベテランスタッフのパソコンスキル。中には「いまだにインターネットを使ったことがない」という“猛者”もいるという。
「還暦を超えたスタッフの中には、
『パソコン=難しい』というイメージを抱いている人が多く、『携帯電話はいまだにガラケー。使えるのは電話とメールだけ』という人もゴロゴロいます。
完全に中年になってから登場したテクノロジーなんですから、無理もありませんよね。
会社は手書き書類を使う状況をすぐにでも改めたいようで、パソコン講習を受講する際には、受講費は100%会社負担で受けさせてもらえます。
でも、
『今さらパソコンを勉強しなくちゃいけないぐらいなら辞める』と公言するスタッフもいて……。アレルギー反応は相当なものです」
パソコン使える介護士、募集中
そこで施設では、パソコン音痴のスタッフを段階的に減らすべく、数年前から求人広告に「要:パソコン基本スキル」との一文を添えているが、「基本スキル」というあいまいな表現が、しばしば珍事件を生んでいる。
「『パソコンはあんまり分からないんですけど……』と言いながら、パワーポイントや時には動画編集ソフトまで巧みに使いこなし、会議の資料をササッと作ってしまう若手がいる一方で、面接では『パソコンが使える』と言いながら、いざやらせてみたら、『ウチのパソコンと違うから』と言って、パソコンの電源さえ入れられない人もいます」
「パソコンが使える」と言っていたけど、実は…
「先日転職してきた50代の女性は、あまりに何もできないので、『本当にパソコンを使ったことがあるんですか?』と確認したら、『メールのやりとりはできる』『いつもネットで動画を見ている』とのこと。ワードは使えず、エクセルに至っては、単語さえ知りませんでした」
ただその女性は人柄が大変穏やかな上、介護スキルは抜群で、コミュニケーション能力も高いため、会社的には「採用して大正解」だったとか。
そういうモリさん自身も、文字入力は“一本指打法”というクチなので、大きなことは言えず、「基本スキルって何なのかしら」と、時々考えてしまうそうだ。
パソコンが使える人にとっては当然だと思えるようなスキルも、案外新しく覚えるのは難しいもの。仕事や趣味でパソコンをよく使っている人は、介護業界で重宝されるかも?!