毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「介護業界、女性スタッフが多くなる理由」という話題について紹介します。
男性スタッフの勘違いがもたらすもの
前々回のこのコーナーで、「介護業界では男性スタッフが人気」というネタを取り上げた。
その中で、介護事業所の採用担当Hさん(女性)の実感として、こんな声を紹介した。
・力があったほうがスムーズにことが運ぶことが多い
・男性の方が、(介護を)“家計を支える仕事”として捉えており、離職率が低い
・女性ばかりの職場だから、若い男性スタッフは職員からも利用者からもモテモテ
しかし、別の介護関係者のAさんからは、また違った視点の声があがってきた。そのAさんの声を紹介しよう。
「『力があったほうがスムーズ』という点は事実ですが、逆に言うと、男性は力があるだけに“力任せ”になる傾向があります。実際、高齢者の中には骨が脆くなっている人もおり、力任せに身体を起こしたり引っ張ったりして、腕の骨が折れてしまう事件が起きたこともあります」
介護スタッフに腰痛持ちが多いのは、介護関係者には周知の事実だが、Aさんによれば、「若い男性スタッフほど(力任せにやるので)腰痛持ちが多い」とのこと。また、「力任せにやる男性は、結果的になかなか技術を習得しない」とも語る。
そしてAさんは、「仕事として捉える」という点についても、こう述べている。
「これは半分悪い意味で、なんですが、女性と比べて男性の方が効率を重視する傾向がありますね。『1人○分でやれば、△時までに×人さばける』とか『パッパとやれば○時までに終わる』とか、ある意味“流れ作業的”とでもいうか……。手際よくやることは大事ですが、利用者が求めているのはいたわりの気持ちや細やかな愛情だと思います」
介護サービスの利用者は男性よりも女性が多い
そしてAさんは、介護業界の構造的な問題についてこう説明する。
「そもそも男性と女性の平均寿命を考えれば分かると思うんですけど、介護サービスの利用者は圧倒的に女性が多いんです(2015年、介護保険制度のサービスを受給した65歳以上の被保険者は、男性が29.2%、女性が70.8%。厚生労働省調べ)。
基本的に男性の利用者は女性スタッフでも嫌がりませんが、女性の利用者で男性スタッフを嫌がる人は少なからずいます。とりわけ入浴介助や排泄介助などは『同性でないとイヤ』と考える方が多いんです。
そうなると必然的に男性が活躍できるシーンは限られてしまう。だから、構造的に女性の方がより必要とされる職場だと思うんですよ。もちろん、男性スタッフに介護されたいと思っている利用者さんもいるんですけどね」
Aさんは、「男性スタッフは大歓迎です。男性には女性にはない視点があって、それが問題解決に繋がることもありますし、男性の冷静さも現場には必要です。ただ、いうまでもなく女性も、本当に大事なんです!」と語っている。
女性には女性ならではの、男性には男性ならではの強みがある。互いを理解し、尊重しあい、適材適所で協力し合うことが重要だ。
そして、最後に挙げた「介護業界の構造」という情報は、介護業界を目指す男性なら、頭の片隅に置いておく必要はありそうだ。