毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「訪問ヘルパーが車通勤でトラブル?!」という話題について紹介します。
移動が必要な訪問ヘルパーの車事情
訪問ヘルパーの仕事は移動が基本。
公共交通網が充実した都心部ならともかく、地方では車移動が中心だ。
車が便利であることは言うまでもないが、訪問ヘルパーの周りでは車にまつわる大小のトラブルが起こるそうだ。
北関東地方のある介護事業所では、車にまつわる珍事件が頻発しているという。同事業所で働くカナイさんが語る。
「私が働く介護事業所は駅から遠く、車を使わないと来られないような場所にあります。
基本的に車を一人一台持っているような地域で、利用者のお宅を回る訪問ヘルパーの車利用率も100%です。
ただ、車のトラブルは少なくありません。
まだ重大事故は起きていませんが、側溝に落ちる、塀にこする、ライトを消し忘れてバッテリーが上がる、停めた場所が悪くて駐車禁止の張り紙を貼られる、スピード違反のネズミ取りに引っかかる、一時停止違反で捕まる……報告を受ける管理者は、一通りのトラブルは聞いたことがあると言っています。
仕事もプライベートも車移動が多い地域で“トラブル慣れ”しているのか、ヘルパーも冷静に対応できるのは心強いです」
ヘルパー業務前後の車移動時のトラブルは基本的に労災の範囲内だが、仕事帰りにそのまま出掛けた時などは、補償の対象から外れることもある。また、交通違反に関しては当然ドライバーの責任だ。
ヘルパーと連絡が取れない!数時間後、車で…
さらに、事故などとは別のタイプのトラブルもある。
「以前、ある利用者さんから
『ヘルパーの○○さんが来ない』と連絡が入りました。事故かと思って何度も携帯電話に連絡しても一向につながりません。
利用者さんのお宅には別のヘルパーを派遣し、介護サービス自体は無事に完了。
連絡が取れなかったヘルパーの安否を心配していると、数時間後に連絡が入りました。
どうやら利用者のお宅に早く着きすぎたので、近所のホームセンターの駐車場に車を停めて休んでいたところ、
そのまま車の中で寝てしまい、起きた時には4時間以上経っていたそうです」
決して寝やすいとは言えない車のシートで4時間も熟睡してしまうとは、寝不足や疲れすぎが心配だが……。
事業所ステッカーがトラブルに!
そしてつい最近起きたのが、ステッカーに関するトラブルだという。
「ウチの事業所では、ヘルパーが自分の車で移動する際、会社名と電話番号が入ったマグネット式のステッカーを車に貼るようにお願いしています。
ヘルパーの安全運転への意識を高めるためです。
しかし、ある女性ヘルパーが、“どうしても貼りたくない”と文句を言ってきました」
カナイさんが話を聞いてみると、その女性ヘルパーが乗っている車は夫と共用で、ハンドルやホイール、車高に至るまで、あらゆるところが改造されているという。どうやら夫が車好きで、塗装も自分好みにするなど、かなりお金を掛けてこだわっているそうだ。
車がきっかけで、夫婦ゲンカが勃発?!
「ある日、事業所のステッカーを貼った車で利用者のお宅に行くところを夫の友人に見られ、夫が『お前の車、ステッカーなんて貼って走ってるのか』とからかわれたため、夫婦の間で
『あの車に勝手にステッカーを貼るな!』
『仕事で貼らなくちゃいけない決まりなんだもん!!』
と、ケンカになったようなのです」
こだわりの車に「○○介護事業所」というステッカーが貼られているのは確かに滑稽だが、決まりは決まり。
ただ、カナイさんには強く言えない事情があった。
「表向きは『ヘルパーの安全意識を促すため』ということになっていますが、実際は宣伝効果の方を期待している面もありまして……。
ステッカーは廃止しようという話もあるのですが、地元の人の目につきやすいステッカーは広告効果が非常に高くてやめられないんですよね」
“走る広告塔”は現在も続いているが、ヘルパーにはステッカーを貼るメリットがないため、「ステッカーはいずれ廃止する方向」(カナイさん)だとか。
「働きやすさ」と切っても切れないのが「職場への通いやすさ」。
おかしいと感じた時は声を上げることも、仕事を続けていく上で大事なことのようだ。