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2015年04月09日

ベッドの柵や身体拘束…理想の介護ができないことも、介護職員の離職理由? | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

navi12014年11月のマスコミ報道で話題になっていた、東京都内の高齢者マンションでの身体拘束。

マンション3棟に入居している約160人の高齢者のうち、約8割に当たる約130人が拘束を受けていました。拘束されていた高齢者たちの生々しい映像を覚えている方もいるのではないでしょうか。

調査に入った区と東京都は、2015年2月、拘束を行っていた訪問介護事業所を運営する医療法人に対して改善の指導を行いました。

身体拘束は介護保険制度開始とともに、介護現場では切迫性、非代替性、一時性がない限り、禁止となりました。つまり、切迫した事情があり、ほかに代替策がない、一時的な拘束でなければ認められなくなったのです。

一方、医療機関においては、今も治療のため、生命を守るために身体拘束をせざるを得ないという判断がされがちです。


動ける人の動きを妨げる対応は、みな身体拘束

身体拘束とは本人が自分の意志で動く自由を奪う対応のこと。介護職の皆さんは、よくご存じのこととは思いますが、ここで改めて何が身体拘束にあたるかを振り返ってみましょう(*1)。

<代表的な身体拘束の例>

●ベッドを4点柵で囲む
●つなぎスタイルの介護衣を着せる
●ミトン型の手袋をはめる
●抑制帯(体を固定するベルト・ひもなど)をつける
●車いすにテーブルを設置する
●一人で立ち上がれない柔らかいソファに座らせる
●向精神薬の過剰投与による過鎮静
●居室の外からの施錠


今では介護の現場では見かけなくなったものが多々あります。しかし、冒頭で紹介した高齢者マンションの入居者をケアしていた訪問介護事業所は、抑制帯やミトン型手袋の使用などについて、「医師の指示を受けて適法に拘束している」という認識でした(*2)。

報道によれば、実際に拘束を行っていたホームヘルパーは、「拘束していいのかと最初は思ったけど、『しょうがない』と自分に言い聞かせているうちに当たり前になった」とのこと(*3)。拘束はよくないという正常な感覚をマヒさせなければここでのケアには当たれなかったということかもしれません。よくないとわかっているケアを提供し続けなくてはならない環境は、介護職のプロとしてのプライドを傷つけます。


それぞれがイメージする理想の介護を提供できるように

navi2離職率が高いといわれている介護職。その離職理由として最も多いのは「人間関係」。次に多いのは、実は「収入面での不満」ではなく、「法人の理念や運営方針への不満」だということをご存じですか?(*4)。調査を担当した研究者は、これは他の業界ではまず聞かれない離職理由だといいます。

給与水準ばかりが取り上げられがちな介護職ですが、実は収入以上に理想の介護の実現を大切にしているということ。仕事にプライドを持ち、自分の理想とする介護をイメージしながら仕事に取り組んでいるのです。介護職の離職率が高いのは、そのプライドを傷つけるような職場の多さを表しているのかもしれません。

冒頭で紹介した高齢者マンションでの拘束については、改善指導を受けた医療法人が、ホームページ上で以下のような内容のコメントを発表しました。



「利用者様(患者様)の心身状況等に鑑み、その生命・身体を保護するために必要やむを得ないと医師が判断し、医師法第23条に基づいて家族(または家族に代わって利用者様のお世話をする訪問介護員等)に指示して行なわしめているものであって、介護保険施設等の従事者等が自らの判断に基づいて行なう「介護保険制度」において原則禁止されている身体拘束とは性格を異にすると主張してまいりました。
当法人としては、「養介護施設従事者等」と混同されやすい事業所の従事者が利用者様(患者様)の身体拘束の着脱に関与する従前の運用を速やかに廃止し、以降、必要やむを得ない身体拘束は、医療施設である有床診療所(在宅療養支援診療所)に所属する医師または医師の指示を直接に受けた看護要員等が行うことにいたしました。
もとより、医療行為として行う身体拘束であっても、「患者様の尊厳」と「患者様の生命・身体の安全」という二律背反を慎重に比較衡量したうえで、必要最小限度の範囲内で行わなければならないことは言うまでもありません。今後は、「医療施設における適切な医療提供」を所管する行政庁と協議し、そのご指導に従って、適切な運用を行うことに努めてまいります。」(ホームページより一部抜粋)。



医療機関においても、身体拘束をできるだけなくそうという取り組みは広まっています。介護職に続いて、医療職も身体拘束をしないという理想を掲げて患者への対応を改めて検討してほしい。そして、いつか医療関係者、医療機関においても、身体拘束ゼロが当然となってほしいですね。

<文:宮下公美子>

※写真はイメージです

*1 「身体拘束ゼロへの手引き」(厚生労働省)<PDF>

*2 入居高齢者を身体拘束か ベッド四方を柵で囲む 北区の「シニアマンション」(産経新聞2014年11月12日)

*3 ヘルパー多忙、「拘束」に慣れ 都内の高齢者マンション(朝日新聞2014年11月9日)

*4 平成25年度 介護労働実態調査<介護労働者の就業実態と就業意識調査>(介護労働安定センター)<PDF>

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