老老介護が「あたりまえ」にできるよう介護サービスの充実が望まれる(写真はイメージです)
介護の最新ニュースをネットでの反響を交えてわかりやすく解説する“クローズアップ介護ニュース”。ただ読んでいるだけではわかりにくい時事テーマのポイントを絞ってお伝えします。今週のテーマは「急速に進む老老介護」です。
参考:「老老介護」初の5割超え 急速な高齢化浮き彫り
出典_2014/7/15 日本経済新聞 他
2001年の調査以来、「老老介護率」は最高の比率に(2013年のまとめ)
<65歳以上の介護が必要な65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、介護する人も65歳以上である「老老介護」の世帯の割合が51.2%に達し、初めて5割を超えた>ことが日本経済新聞などで報じられました。
2001年の老老介護率は40%程度…報道された老老介護率は、2013年の国民生活基礎調査を厚労省が分析したもの。2001年の初調査時(老老介護率は40%程度)とくらべ、介護を担う同居家族の高齢化が進んでいることに改めて注目が集まっています。
背景には家族構成の変化が…同紙によると、全国の世帯総数は2013年6月現在で5011万2千世帯。65歳以上の高齢者が1人でもいる世帯は、2242万世帯。世帯総数の半数近くは65歳以上の人を含んでいることになり、老老介護率の上昇とリンクしていることがわかります。
訪問診療は減速傾向 定期巡回・随時巡回型訪問介護は増加傾向
「地域が一体となって介護を支える」という考え方のもと、在宅介護推進は国の重要政策としてうたわれています。介護を担う人の高齢化が進んでいる現状からも、在宅介護を支える介護サービスのいっそうの充実が求められるところです。
高齢者向け訪問診療報酬は減額へ…在宅介護を医療面で支える訪問診療。サービス付き高齢者住宅の中には常勤の医師を置くなど、積極的に取り組んでいるところもありますが、厚労省が<高齢者向けの施設・集合住宅への訪問診療の報酬を4月から従来に比べ約7割引き下げたところ、155カ所で医師の撤退や交代が起きた>と報じられています(
高齢者向け訪問診療、撤退・交代155件 報酬減額で 7.15 日本経済新聞)。
定期巡回•随時巡回型訪問介護サービスの普及度は?…在宅介護を24時間365日体制で支えるサービスを、という目標を掲げてはじまった定期巡回•随時巡回型訪問介護サービス。地域で介護を支えるという点からも、国が力をいれてきた重要施策ですが、はじまって約2年。今年の3月末の集計をもとに、
定期巡回サービス 434事業所に(6.17 シルバー産業新聞)と報じられました。
厚労省が現在公表している
最新データ/5月末集計【PDF】によると、サービス提供事業者は489、利用者は7942人。昨年同月比末では、事業者数で197増、利用者数で5057人増と伸びが目立ってきました。当初の事業計画では、1年目の利用者数を6000人と想定したことを考えると、時間はかかったといえますが、ここにきて事業者数、利用者数とも増えてきたことは注目されます。
介護サービスの総合力が求められる時代に
老老介護の限界•••
75歳、認知症の妻介護 「自分の体力がもつかどうか」(7.16 朝日新聞デジタル)では、ひとつ年上で認知症を患う妻の介護を12年間続けている男性の介護生活の一部が紹介されています。日中のデイサービスだけでは老老介護を長く続けるにはむずかしいことが、記事を通して伝わってきます。
介護の総合力アップに向けて…老老介護の不安はさまざまに指摘されています。
-介護する人も高齢であるため、介護する人にも大きな負担がかかっていること
-介護する人が病気やケガなどで介護ができなくなった場合、 他に家族がいないため、在宅介護を続けることが難しくなること
こうした不安を解消するには、まずは在宅介護を支援する公的な介護サービスの充実と普及が望まれますが、先に触れた定期巡回•随時巡回型訪問介護サービスの普及に加速がついてきた最近の状況は、明るい兆しのひとつといえるでしょう。
「これからの介護は、医療•看護に介護が加わるのではなく、介護という大きな世界の中に医療や看護が含まれるのが望ましいのでは」という現場の医師や介護士からの声も聞こえてきます。国の方針にも「介護と医療•看護の連携」は示されているように、こうした新しい介護観は、介護の総合力を高めていく意味でも、指針になっていくのかもしれません。