■書名:なぜ、「回想療法」が認知症に効くのか
■著者:小山 敬子
■出版社:祥伝社
■発行年月:2011年3月10日
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目からウロコ!「認知症ケア」の入門から実践まで、認知症に対する考え方が変わる一冊
認知症を進行させないために効果的だと言われている「回想療法」。著者である小山敬子氏が冒頭で「回想療法を家庭で実践して欲しい」と伝えているように、本書は認知症ケアを家族が行うためには、という視点で書かれている。
最初は「家族とプロの介護は違うから…」と敬遠してしまうかもしれない。しかし、読みすすめるうちに、介護職がぶつかる「認知症ケアの壁」とも言える悩みやジレンマをすっきり解決できるヒントや介護職へのメッセージがあふれていることに気づくのではないだろうか。
例えば、あなたがまだ認知症ケアを体験したことがないのなら、ぜひ本書の前半を熟読して欲しい。
認知症も他の病気と同様、早期発見が大切だが、そのサインを見落としてしまうことも多い。そこで役立つのが「認知症判定テスト」だ。さりげない会話のなかで、認知症かどうかを確認する方法を詳しく解説しているため、気になる利用者がいればすぐにでも取り入れることができる。
また、認知症の原因や薬物以外の認知症療法についても、介護の現場の目線で紹介しているため、「認知症とは何か?」をすんなり理解できる。
あなたが今、認知症ケアにたずさわっているなら、本書の後半で詳しく紹介されている「回想療法」をすぐにでも実践したくなるのではないだろうか。
<回想法の目的をひとことで言ってしまうと、「昔を思い出して、皆で語り合うことで楽しい気分、幸せな気分になる」ということです。>
「利用者と話すだけなら、いつもしていることだ」と思うかもしれない。しかし、回想療法を意識し、ちょっとした小道具や「場」を用意するだけで、その効果はまったく変わる。本書を読めば、回想療法が認知症に与える影響に驚き、その効果が高い理由に納得するはずだ。
また、利用者が「急に不穏になる」「騒ぐ・あばれるなどの問題行動がある」「男性の利用者がレクを嫌がる」といった認知症ケアをしているなかでよくあるケースについても、その理由と対処法を実例を交えて紹介しているため、明日からのケアに活かすことができる。
小山氏は本書の中で、介護者に向けてこんなメッセージを伝えている。
<楽しい介護の時間のために必要なひとつの考え方は、「皆、同じ場を共有する仲間なのだ」と思うことではないでしょうか。「介護」を挟んで「する側」「される側」になるのではなく、ひとつの共通の場に一緒にいる仲間と考えるのです。>
<特にこれは介護施設関係者の方に気づいていただきたいことなのですが、介護施設関係者はどこか「諦めて」いるように感じられることが多いのです。>
<認知症になっても彼らは終わっていない。死ぬまで人間は絶対に「終わらない」のです。そう思うだけで、介護施設での介護は変わっていくと期待しています。>
実践的な認知症ケアはもちろん、介護職として利用者とどう向き合うべきか?を見つめ直し、認知症の親を持った家族の気持ちを知ることができる。「人として生きる」とは、どういうことなのかをもう一度考えさせてくれる一冊だ。
著者プロフィール
小山 敬子(こやま・けいこ)さん
久留米大学医学部卒、熊本大学大学院医学研究科博士課程修了。2000年医療法人社団大浦会・社会福祉法人照敬会の理事長に就任、2003年傘下組織を「ピュア・サポートグループ」と総称し、その代表に就く。「医療・介護・福祉の共同体で地域を支える善い型を創る」ことをめざし、その一環として回想療法による介護施設「おとなの学校」を展開。認知症改善の成果を上げている。介護事業経営研究会 最高顧問なども兼ねる。