介護福祉士として働くうえで気になるのが年収です。この記事では施設形態別・雇用形態別の平均年収や今後の見込みについて解説します。資格取得のメリットも紹介しており、これから介護福祉士を目指す方にも役立つ内容です。
目次
■ 介護福祉士の平均年収はいくら?
・過去5年間の推移
・介護業界で働く他職種との比較
・介護職が介護福祉士を取得すると年収はいくら上がる?
■ 【施設形態別】介護福祉士の平均年収
■ 【雇用形態別】介護福祉士の平均年収
■ 介護福祉士の給料は今後上がる?
・資格取得や転職でさらに年収アップが狙える
■ 給料以外にも!介護福祉士取得のメリット
・介護の専門性を高められる
・挑戦できる仕事や職種の幅が広がる
・キャリアアップにつながる
・転職で有利になる
■ 介護福祉士に関するよくある質問
・年収400万・500万・600万も目指せる?
・介護福祉士の年収は低い?
■ 介護福祉士は将来性のある仕事です
厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の平均月給は331,080円。
月給×12カ月で計算した平均年収は、3,972,960円です。(常勤・介護職員処遇改善支援補助金を取得の事業所の場合)
役職や勤務先によっても異なりますが、一般的な介護福祉士の年収は400万円前後だと考えてよいでしょう。
対して、厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、全国の平均賃金は318,300円。年収に換算すると3,819,600円です。
介護福祉士の平均年収は、全国平均に比べて約15万円高いことがわかります。
介護福祉士の平均給与額の推移を表にまとめました。なお、年収は平均月給×12カ月で計算しています。
■平均月給の推移
平均月給 | 前年比 | |
2018年 | 313,920円 | +9,290円 |
2019年 | 313,590円 | -330円 |
2020年 | 322,680円 | +9,090円 |
2021年 | 328,720円 | +6,040円 |
2022年 | 331,080円 | +2,360円 |
■平均年収の推移
平均年収 | 前年比 | |
2018年 | 3,767,040円 | +111,480円 |
2019年 | 3,763,080円 | -3,960円 |
2020年 | 3,872,160円 | +109,080円 |
2021年 | 3,944,640円 | +72,480円 |
2022年 | 3,972,960円 | +28,320円 |
過去5年間のデータを見ると、介護福祉士の月給は31~33万円、年収は300万円台後半を推移しています。
2021年以降は平均年収390万円を超えており、介護福祉士の給与は年々増加傾向にあると言えるでしょう。
介護福祉士と介護業界で働く他職種の平均年収を比較すると、以下の通りです。
職種 | 平均月給 | 年収換算 | 介護福祉士 との差 |
介護福祉士 | 331,080円 | 3,972,960円 | ― |
介護職員* | 317,540円 | 3,810,480円 | -162,480円 |
生活相談員 支援相談員 |
342,330円 | 4,107,960円 | +135,000円 |
介護支援専門員 | 376,770円 | 4,521,240円 | +548,280円 |
看護職員 | 373,750円 | 4,485,000円 | +512,040円 |
事務職員 | 307,960円 | 3,695,520 円 | -277,440円 |
調理員 | 260,090円 | 3,121,080 円 | -851,880円 |
*介護職員…介護福祉士含む
出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
介護福祉士の平均年収は、介護支援専門員や看護職員など、より上位の資格や医療分野の専門資格を持つ職種に比べると低い傾向にあります。
一方、介護職全体や事務職員などと比べると介護福祉士のほうが高くなっています。
介護職として働きながら年収を上げたい場合、介護福祉士の資格取得を目指すとよいでしょう。
無資格から介護の仕事を始める場合、以下の順に資格を取るのが一般的です。
①介護職員初任者研修(以下初任者研修)
②介護福祉士実務者研修(以下実務者研修)
③介護福祉士
介護職の保有資格別の平均給与額は以下の通りです。年収は月給×12カ月で計算しています。
保有資格 | 平均月給 | 年収換算 | 介護福祉士 との差 |
介護福祉士 | 331,080円 | 3,972,960円 | ― |
実務者研修 | 302,430円 | 3,629,160円 | -343,800円 |
初任者研修 | 300,240円 | 3,602,880円 | -370,080円 |
資格なし | 268,680円 | 3,224,160円 | -748,800円 |
介護福祉士の平均年収は、無資格者より約75万円、初任者研修修了者より約37万円、実務者研修修了者より約34万円高くなっています。
一概にどの職場でもこれだけの金額が上がるとは言えませんが、段階的に資格を取得すると年収アップにつながるでしょう。
介護職は持っている資格によって、ボーナスの額にも差が生じる傾向にあります。
介護従事者の保有資格別のボーナス支給額は以下の通りです。
保有資格 | 平均賞与額 | 介護福祉士 との差 |
介護福祉士 | 629,134円 | ― |
実務者研修 | 486,322円 | -142,812円 |
初任者研修 | 473,650円 | -155,484円 |
資格なし | 419,200円 | -209,934円 |
介護福祉士の平均的なボーナスの額は、無資格者より約21万円、初任者研修修了者より約16万円、実務者研修修了者より約14万円高くなっています。
年収アップを叶えたい介護職は、積極的に介護福祉士の取得を目指すとよいでしょう。
介護福祉士の、施設形態別の平均給与額は以下の通りです。年収は平均月給×12カ月で計算しています。
平均月給 | 年収換算 | |
介護老人福祉施設 | 360,840円 | 4,330,080円 |
介護老人保健施設 | 349,850円 | 4,198,200円 |
介護医療院 | 332,230円 | 3,986,760円 |
特定施設入居者 生活介護事業所 |
330,650円 | 3,967,800円 |
訪問介護事業所 | 323,470円 | 3,881,640円 |
通所リハビリ テーション事業所 |
313,430円 | 3,761,160円 |
認知症対応型 共同生活介護事業所 |
304,190円 | 3,650,280円 |
小規模多機能型 居宅介護事業所 |
303,270円 | 3,639,240円 |
介護療養型医療施設 | 290,310円 | 3,483,720円 |
通所介護事業所 | 290,120円 | 3,481,440円 |
介護福祉士の平均年収を施設別に見ると、介護老人福祉施設と介護老人保健施設が特に高く、400万円を超えています。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で働く介護福祉士は、原則要介護3以上の方の日常生活を支援し、食事、排泄、入浴などの身体介助を行います。
基本的には夜勤があり、利用者さんの介護度が高い傾向にあることから、年収が高くなりやすい施設形態です。
主な運営母体は社会福祉法人で、比較的給与が安定しやすいと言えるでしょう。
介護老人保健施設で働く介護福祉士は、リハビリや医療の専門職と連携しながら、主に在宅復帰を目指す要介護者をサポートします。
介護老人福祉施設と同じく基本的に夜勤があることなどから、他の施設と比べて給与が高いと考えられます。
一方、最も平均年収が低かったのは通所介護(デイサービス)事業所です。
デイサービスでは、自宅から通う要介護者に対して、食事、排泄、入浴などの介助やレクリエーションを提供します。
年収400万円を超える施設に比べると給与は低めですが、宿泊サービスがある事業所を除いて原則夜勤はありません。
日中のシフトで働けるため、子育てや家族介護など、プライベートとも両立させやすい点が特長です。
介護福祉士の、雇用形態別の平均給与額は以下の通りです。年収は平均月給×12カ月で計算しています。
平均月給 | 年収換算 | |
月給・常勤 | 331,080円 | 3,972,960円 |
日給・非常勤 | 162,330円 | 1,947,960円 |
時給・非常勤 | 134,680円 | 1,616,160円 |
非常勤の場合は常勤よりも年収が低い一方、勤務時間や日数の融通が利きやすく、ライフスタイルに合うシフトで働けるというメリットがあります。
給与は就業先を選ぶ上で重要な指標のひとつですが、勤務時間や休日日数などを踏まえたうえで、自分に合う雇用形態を選ぶとよいでしょう。
内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、2023年10月1日時点の日本の高齢化率は29.1%で、過去最高を記録しました。2037年には国民の3人に1人が65歳以上の高齢者になると推計されています。
全国的な高齢化の進行に伴い、国は介護人材を確保するため、処遇改善の取り組みを行ってきました。
介護福祉士の給料も年々増加傾向にあり、賃上げのための施策は今後も進むことが予想されます。
2024年介護報酬改定では、処遇改善加算の加算率が引き上げられ、介護福祉士含む介護職全体のベースアップが期待されています。
事業所がキャリアパスや昇給の仕組みを整えるなど、一定の要件を満たせば加算が算定され、賃金が上がる見込みです。
加算による賃金改善については柔軟な対応が認められていますが、基本は「特に経験・技能のある職員に重点的に配分すること」とされています。
そのため、介護福祉士に優先的に配分する事業所もあると想定され、介護福祉士の資格を取得している方はいっそうの年収アップが期待できるでしょう。
【2024年介護報酬改定のポイント】
●2024年6月~「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」が「介護職員等処遇改善加算」に1本化
●従来の制度より加算率が引き上げられた
●2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップへつなげる狙い
●この改定により、申請する事業所の事務負担の軽減や介護職員のベースアップが後押しされる
すでに介護福祉士の資格を持っている方が年収アップを目指すなら、以下の方法がおすすめです。
・介護支援専門員の資格を取得する
・手当による給与増を目指す
・今より条件の良い職場に転職する
介護福祉士を取得してから通算5年以上かつ900日以上の実務経験を積むと、「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の受験資格が得られます。
介護支援専門員の資格取得により、年収アップにつながる可能性は大きいです。
以下の表に、介護福祉士と介護支援専門員を持っている方の平均月給・年収を比較しました。
保有資格 | 平均月給 | 年収換算 |
介護福祉士 | 331,080円 | 3,972,960円 |
介護支援専門員 | 376,770円 | 4,521,240円 |
また、介護福祉士は夜勤手当や役職手当、資格手当など、支給される手当によって収入アップを目指すこともできます。
特に保有資格に応じた資格手当がある職場なら、介護福祉士取得後に大幅な給与の増加が見込める場合もあります。
「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査」によると、介護福祉士の62.9%は資格手当が「ある」と答えており、平均支給額は月9,055円です。
以下に、資格手当の支給額の割合を記載しました。
資格手当の金額(月額) | 割合 |
5千円未満 | 19.4% |
5千~1万円未満 | 31.7% |
1万~2万円未満 | 34.3% |
2万~3万円未満 | 5.9% |
3万~5万円未満 | 2.0% |
5万~7万円未満 | 0.3% |
7万円~10万円未満 | 0.1% |
10万~15万円未満 | 0.0% |
15万円以上 | 0.1% |
出典:社会福祉振興・試験センター「社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査(令和2年度)結果報告書」
資格手当の支給額は5,000~2万円未満の割合が多くなっていますが、勤務先によっても差があることがわかります。
手当がつかない・または少額の場合は、現在の職場よりも収入や待遇の条件が良い職場に転職するのも一つの方法です。
求人を見る際は転職直後の給料だけでなく、将来的に昇進・昇給の仕組みがあるかもチェックするとよいでしょう。
国家資格である介護福祉士を取得するメリットは、年収アップだけではありません。以下も利点として挙げられます。
ここでは、介護福祉士の資格を取得するメリットについて解説します。
介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格であり、取得の過程で介護の専門知識・スキルが身につきます。
利用者さんに対してより質の高いサービスが提供できるようになり、現場の介護職を引っ張る存在となるでしょう。
職場の同僚だけでなく、利用者さんやその家族からの信頼を得て、さらなる成長にもつながります。
介護の専門知識を深めることで、現場のリーダーや教育係など、責任ある役割を担う可能性が生まれます。
人材育成に携わりより良い事業所作りに貢献できれば、利用者さんへの直接的な介護とは異なる視点でもやりがいを感じられるでしょう。
また、介護福祉士を持っていることで、挑戦できる職種の幅も広がります。
訪問介護のサービス提供責任者の資格要件を満たせるほか、自治体によっては生活相談員になることも可能です。
身に付けたスキルを活かして、介護業界でのキャリアを考えてみるとよいでしょう。
介護福祉士を取得して一定の実務経験を積むと、認定介護福祉士や介護支援専門員の受験資格が得られます。
「認定介護福祉士」は、より質の高い介護の実践力や地域・他職種と連携するスキルなどを身に付けた介護福祉士に与えられる資格です。
取得すると、現場で教育・指導・マネジメントを担うほか、行政の支援センターや病院など幅広い立場の人と連携して活躍することが期待されます。
「介護支援専門員(ケアマネジャー)」を取得すれば、介護保険制度やケアマネジメントに必要な知識を習得できます。
試験合格後に所定の研修を受けて手続きを行うことで、ケアマネジャーとして働くことも可能です。
介護福祉士の取得によって、その後のキャリアの幅が広がる点は大きなメリットだと言えるでしょう。
人手不足の介護業界では、未経験や無資格からでも転職可能ですが、資格があると即戦力として歓迎されやすくなります。
なかでも国家資格である介護福祉士の保有者は貴重な人材であり、より好条件で採用される可能性が高いです。
無資格者に比べて応募できる求人の幅も広がるため、自分の希望に合う職場を見つけやすくなるでしょう。
介護福祉士として働くうえで、以下の疑問を持つ人も多いでしょう。
ここでは介護福祉士の年収について、よくある質問と回答を紹介します。
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」のデータをもとに計算すると、介護福祉士の平均年収は3,972,960円でした。
そのため、介護福祉士として働けば、年収400万円は目指せるラインです。
一方、年収500万円は努力や環境次第、600万円は管理者等にステップアップしないとハードルが高いと考えられます。
年収500万円を目指すには、まず1カ月あたりいくら収入を増やす必要があるのか考えてみましょう。
介護福祉士の平均年収は3,972,960円で、500万円にあと1,027,040円足りません。
つまり、1カ月あたり約8.6万円アップが必要という計算になります。
この差額を埋めるためには、収入アップにつながる以下の方法を検討しましょう。
・手当の対象になる資格を取得する
・夜勤回数を増やして夜勤手当を増やす
・勤務先のリーダー職や責任者になる
・条件の良い職場に転職する
資格取得や役職に就くことで収入アップを目指せますが、それでも勤務先によっては、支給額が頭打ちになるケースも考えられます。
今の職場で年収アップが見込めない場合、これまでのスキルや経験を活かし、条件の良い職場へと転職する方法も効果的です。
介護福祉士の平均年収は約400万円で、全国の一般労働者の平均賃金より高いです。
■介護福祉士の平均年収
平均月給 | 年収換算 |
331,080円 | 3,972,960円 |
■一般労働者の平均年収
平均月給 | 年収換算 |
318,300円 | 3,819,600円 |
「介護職の給与は安い」というイメージを持っている方もいますが、介護福祉士の年収は全国平均より153,360円高く、決して低い水準ではないことがわかります。
介護福祉士の平均年収は約400万円で、全国の一般労働者の平均額を上回っています。
さらに高齢化が進む日本では、国が介護人材確保のための処遇改善を進めており、今後も取り組みによる給与アップが期待できるでしょう。
介護福祉士の資格取得は、収入面だけでなく、キャリアアップや転職で有利になるなど、多くのメリットがあります。
介護の専門スキルを磨くことで、強みを活かした働き方が可能になるでしょう。
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