建設業界から介護職に転職したTさん(45歳男性)の転職体験談。
高齢者介護の仕事はやりがいがあったけれど、「決まった日にしか入浴できない」など、病院でのケアの方法に疑問を感じ、もっと利用者さんに寄り添った介護がしたいと思うようになったそうです。
◆病院(介護職)・デイサービス(介護職)→訪問介護事業所(サービス提供責任者)
T・Mさん(男性・45歳)
●病院(介護職)(勤務期間:2年/月収約12万円)
●デイサービス(介護職)(勤務期間:6年/月収約15万円)
●訪問介護事業所(サービス提供責任者)(勤務期間:2年/月収約24万円+ボーナス3カ月分程度)
保有資格:介護福祉士、介護支援専門員、認定介護支援専門員
家族構成:本人、妻、長男7歳、長女4歳
*T・Mさんの「転職体験談」
第1回:
建設から介護業界へ異業種転職!本当に楽しい仕事って?〜転職体験Tさん1
【病院での介護職の仕事は?】介護は楽しいけれど、患者の意思とは正反対
入浴は短時間で決まった時間にしなければならない?
介護の仕事は予想した以上に楽しかった。
おばあちゃんやおじいちゃんたちとおしゃべりしながら入浴介助をするのは、とてもなごむひとときでした。
「入りたくない!」と怒っていた人が、気持ちよさそうにお湯につかる様子を見ているだけで、楽しくなるのです。
けれど、看護師からも介護職の先輩からも、「早く、早く」と言われる日々。
何十人もの患者さんがお風呂を待っているんだから、「もっと効率よくやれ」と。
入りたがらない人を無理矢理お風呂に入れておいて、急かすなんて、そんな人を人と思わないような介護はしたくないと思いました。
とにかく、認知症の患者さんも「人」なんだから、もっと「人」として接したほうがいいんじゃないかとミーティングで言ってみたのですが、「じゃ、その患者さんはずっとお風呂に入らないの?それでいいの?」などと責め立てられました。
本当に患者さんのためになる介護って?
ただ自分の思いだけで言っても説得力がないのだなと思い、介護の勉強を始めました。
首都圏で講演をたくさんしているような介護職の方の本を読んだり、実際に講演に行ったりして、やはり認知症の人にはていねいに接したほうがいいと学びました。
また、介護する側の都合で強引に入浴させることにどれだけの意味があるのか。
どうしても入りたくないなら、「今日はパス」でもよいのだと、確信しました。
スタッフの中には理解のない人もいましたが、次第に自分の考えは受け入れられるようになり、「私も同じように思っていた」というメンバーたちと飲みに行って、共感し合っていました。
けれど、病院は、ドクターを頂点に、次に看護師、リハビリ関係職、そして一番下が介護職、というピラミッドができあがっている。
僕らがどれだけ勉強し正しいと思えることを言っても、結局は医療職の意見が通ってしまうのでした。
【契約社員から正社員へ】介護福祉士取得への意欲をアピール!
キャリアアップのため介護の資格を取得
病院での勤務に嫌気がさすよりも前に、実務者研修を受け、介護福祉士資格を取得する準備を、自分なりに始めていました。
介護業界では、資格を取っていくことが、キャリアアップや処遇のよさにつながります。
ヘルパー2級で介護現場に入りましたが、介護福祉士、介護支援専門員、認定介護支援専門員と資格を取っていこうと決めていました。
資格があれば給料も上がる!
病院での最初の2年は、契約社員で月収は手取りで12万円くらい。ボーナスはありませんでした。
ずっとこの給料だったら、子どもができても育てていくのは大変なので、上司との面談のときに、「実務者研修を受講中です。介護福祉士資格を取得するつもりです。給料がもう少し見合うようになってほしい」と伝えたところ、「それなら正社員にならないか」と言ってもらえました。やった!と思いましたね。
でも、自分からアクションしなかったら、ずっと契約社員のままだったと思います。
キャリアアップしたいなら、きちんと人に自分の思いを伝えることが大事です。
そのためには、自分に自信が持てないと難しいので、勉強したり、研修を受けたり、資格を取ったりすることはとても大事だと思いました。
【はじめての異動】病院からデイサービスへ
「利用者さん中心のケア」ができる場所は?
正社員になると同時に、デイサービスへの異動願いを出しました。
これまでの病院勤務では、あくまで看護中心でしたが、デイサービスなら利用者さんらしく楽しむことを、介護職としてサポートできる。
仕事への意欲を保つためにも、自分にとって異動は必要だと感じていました。
介護福祉士の取得もできるということで、法人は快く異動を認めてくれました。
手作りのレクで利用者さん中心の介護を
デイサービスに勤務するようになってから、介護の仕事のやりがいを感じるようになりました。
日常の中では、「手作りのレク」をよくやりました。ボウリングのセットを利用者さんと手作りし、それを使って遊ぶなど、利用者さんと一緒になって動くレクが多かったです。
40名の利用者さんに対してスタッフ8名で、介護職が7名と看護師が1名。
僕らが利用者さんを楽しませるというより、利用者さんが主体になって作って、僕らを遊ばせてくれるようにしました。
僕らが楽しめば、利用者さんたちも満足。
笑顔が広がって、いい雰囲気のデイでした。
利用者さんにリフレッシュしてもらいたくて、月に1度はイチゴ狩りや花見などの外出レクを計画しました。
介護職が一度下見をして、バリアフリーかどうかを調べ、利用者さんにいくつか提案して、行きたいところを選んでいただくんです。
小旅行気分で、外出して遊んでもらって、利用者さんも僕らもとても楽しめました。
デイサービスでのケアでは「その人らしさを生かす介護」が実践できていると感じられたし、こういう介護がしたかった、と思いながら、最初のうちは楽しくやっていました。
デイサービスには通算6年間勤務し、4年目からは生活相談員としても働いていました。
【転職への思い】生活そのものを支える介護がしたい!
デイサービスでは利用者さんの生活の一部しか見られない
たしかに、デイサービスでの仕事は充実していました。
「ここは楽しいところだ」という認識で、利用者さんはみんなデイサービスに来ることを楽しみにしてくれている。
しかし、「楽しい場」を提供することだけで、介護に満足していていいのか、という思いがだんだん強くなってきました。
利用者さんにとって、デイサービスに来る時間は生活の中の一部です。週3回来ていても、残りの4日や夜間は、僕らに見せない顔をしているのです。
楽しいところだからこそ、暗い顔は見せないし、悩みがあっても言わない。
どこか自分を演出しているのかもしれないと思い始めました。
高齢者の生活そのものを支える介護がしたい
それに、自分自身も、ずっとデイサービスだけで働いていていいのか、という不安が沸き起こってきました。
ひとくちに介護といっても、介護現場はさまざまです。
在宅サービスでも、訪問介護もあれば、小規模多機能型居宅介護もある。
自分はあくまで昼間のアクティビティ中心のデイサービスを担っているだけです。デイサービスのスタッフは、利用者さんの家での生活にはタッチできません。
また、病院での介護は経験したけれど、特別養護老人ホームや認知症対応のグループホームも経験がない。
入居型の「暮らし」を営む施設で、利用者さんがどのように過ごすのがよいのか、どう支援するのかの実践もしてきていません。
介護福祉士の資格も、介護支援専門員の資格も取得し、デイサービスでは生活相談員を務めていましたが、まだまだ経験は不足していると感じていました。
その経験不足が自分の自信のなさにつながるのなら、もっといろんな経験をし、自分を高めたいと思うようになりました。
中でも、自分がやりたいのは訪問介護なのだ、という思いが強かった。
デイサービスで利用者さんが見せる顔は、「外の顔」です。
でも、家の中にいるときが、一番その人らしいのだろうと思ったのです。
不機嫌だったり、不安でおしつぶされそうだったり、いろいろでしょう。
でもそんな素の顔を見せるのは、自分が安心して過ごせる場だからです。
素のままの「人」としての利用者さんと付き合いたくて、訪問介護の現場に出たいという思いが募っていきました。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
利用者さんの生活をまるごと支えたい、と考えるようになったTさんが選んだ転職先は?
次回は、Tさんの転職のきっかけと、転職後の仕事内容についてお伝えします。
次回「高齢でも認知症でも「普通に暮らす」を支えたい!訪問介護のやりがい~転職体験Tさん3」は、8月19日に公開予定です。
*T・Mさんの「転職体験談」
第1回:
建設から介護業界へ異業種転職!本当に楽しい仕事って?〜転職体験Tさん1
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