通信会社の営業として成績を伸ばしてきたUさんですが、心機一転、介護業界に飛び込みました。
介護の仕事に就くと、すぐにこの仕事の醍醐味を見出すことができました。
瞬く間に所長代理になったその理由もわかる気がします。
*U・Hさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
U・Hさん(40歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…16年
●介護の仕事に就く前…ファミレス副店長、運送会社運転手、営業職
●介護業界での転職回数…6回
●いままでの勤務先…訪問入浴・訪問介護事業所、介護老人保健施設、大手介護関連企業
●保有資格…介護福祉士
無資格から始め、1年強で所長代理になる
はじめての介護業界で就職する際には、特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設など、社会福祉法人のほうが堅実だという声も聴きました。
けれど、ある介護職の人から聞いた言葉が響きました。
「特養などは、トップに上り詰めることが難しいという噂を聞いたことがある。
株式会社が経営する介護事業所は不安定かもしれないけれど、上り詰めるチャンスは大きいらしい」と。
それなら迷わず株式会社がいいと思ったのです。
実際、就職した先は規模が小さく、経営も不安定でした。
地元では、「介護保険が導入されたらこの会社はつぶれるんじゃないか」と言われていました。
私が入社したのは介護保険が導入される直前。
「わざわざつぶれそうな企業に入社するの?」と友達にも止められました。
しかし、なんとかなるような気がしていました。
実際、ド素人で訪問入浴を始めたのですが、当時のニーズはすごかった。
訪問入浴をする事業者はそれほど多くなく、どの家でも、契約した週1回の入浴がなかなか叶わないほどの盛況ぶりだったのです
ここで、運送会社で培ったオペレーション能力が生きました。
訪問入浴は、お伺いしても利用者さんの体調によっては同行の看護師が「今日の入浴は難しい」と判断すると、中止になることも多いのです。
そんなとき、次の入浴まで空いた時間をのんびりしていては、事業は発展しません。
スケジュールを細かく調整し、1日10件のところを12件入れたり、多いときには15件入れるなど、効率よく回すようにしたのです。
またここで、通信会社で営業職だった経験も活かせました。
こちらのスケジュールや都合だけで動かず、お客様のニーズをくみ取って行動することを心がけました。
すると、私が入社して以来、訪問入浴事業が大きく伸びたんですね。
当初4台の入浴車で訪問入浴事業を展開していたのですが、1年で12台に増えた。
たかが入浴アシスタントなのに、と驚かれましたが、介護技術も身に付け、あれよあれよという間に事業所長代理になってしまいました。
「つぶれる」と言われた会社ですが、その後に優秀な介護職が何人も入社し、運営努力も実ったのか、介護保険を導入した後も会社は大きくなっていきました。
「利用者さん本位の介護」に徹することが大事
ただ、出世欲はあったものの、私は会社を大きくしよう、自分が出世しようと思って行動したわけではありません。
介護の仕事を通じて、高齢の方やご家族とお付き合いをし、なんとかこの方々の願いを形にしたい、そのために自分たちはどう動くのがいいのか、それを追求してきたつもりです。
ご家族では身体が不自由な高齢者をうまく入浴させることができないから、訪問入浴に依頼するわけです。
ですから、入浴し終わったあとは、ご家族に感謝される。
入浴自体、とても気持ちがいいので、利用者さんも満足してくださるんです。
本当にありがたい仕事です。
最初は、利用者さんやご家族のその気持ちに対して、介護技術が追い付かなくて、恥ずかしいと思っていましたが、早く利用者さんが望む以上の介護ができるようになりたいと、純粋に思うようになりました。
それには、「個別ケア」の実現なのだと、気づきました。
1日10件、6日働くとして60件。
一週間に最低でも60のケースとニーズがある。
こちらの都合でいっしょくたにするわけにはいかないのです。
利用者さんの体調も身体の動きもいろいろ、家族関係もさまざまです。
早めに利用者さんの状況を把握し、サービスを満足していただくために、ご本人に、「ご家族とはあまり仲が良くないのですか?」などとストレートに聞いてしまうこともありました。
入浴中は、気持ちが緩んでいるので、本音が出るのですね。
ご家族のことを正直に語ってくれる方もいます。
また、かつての仕事のこと、戦争のこと、生き方……。
短い時間ですが、さまざまなことを伺うこの時間が、私にとってとても貴重でした。
気難しい利用者さんほど、その方のたどってきた歴史に感動する。
言葉のひとつひとつに重みがあり、人生を教えていただくような感覚でした。
また、そうしたスタンスでお付き合いさせていただくことが、利用者さんの満足につながるのだという実感もありました。
また、入浴の技術が向上すれば、時間内に早く入浴が終わり、余った時間でプラスアルファのケアができます。
そうしたことも、利用者さんの満足につながっていたのだと思います。
どんな仕事でも、全力で身体を動かして携わり、利用者さんのニーズに全力で応える。
それさえしていれば、仕事人として実るという経験が、介護職で実感に変わりましたね。
次回は、所長として成功するものの転職をする様子をお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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