毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「マスク狂騒曲」という話題を紹介します。
新型コロナの影響で手に入らないマスク
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、店の棚から完全に消えたのがマスク。マスクをしないで電車内でクシャミをして乗客同士がケンカをしたり、ボッタクリ同然の価格でマスクを転売する人が現れたり、転売禁止が法律で定められたりと、マスク絡みの騒動には事欠かないが、いくら時間が経ってもマスクが手に入りにくい状況は変わらない。
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「アベノマスク批判」への介護職の本音
外出自粛で自宅にいる時間帯にはマスクは不要だが、外に出て人と触れ合う介護の仕事では、業務中のマスクはマストアイテム。
介護現場でもマスクは争奪戦だ。愛知県のある介護施設で働くキムラさんはいう。
「我々は普段から常にマスクをつけており、施設には大量にストックがありましたが、ここまで事態が長引くとは思っておらず、マスクは遠からず底を突きそうな状況です。
しかし、我々の施設には、国や自治体からマスクは配られていないため、最近ではマスクを洗って再利用しています。
国民全員にマスク2枚を配布するという処置に対し、世間からは批判的な声が上がりましたが、『文句を言うなら我々に下さい!』というのが、私たち介護職の本音なのではないでしょうか」
介護スタッフにとってマスクは“マナー”ではなく“必需品”。人の命を守る現場にマスクが回らないとは恐ろしい状況だ。
介護現場の新型コロナ騒ぎを知ってほしい!
一方で、介護関係者の怒りはマスコミにも向けられている。
「ニュース番組は新型コロナ関係の話題ばかりですが、『オンライン飲み会や持ち帰りグルメが流行』だの、『芸能人の誰々のSNSが話題』といったニュースを報じるぐらいなら、少しは介護のことを取り上げて欲しいと思います。
介護現場は濃厚接触の連続で、接触8割減はイコール介護をするなということ。
衛生管理には普段以上に神経を使っていて、マスクだけでなく消毒用アルコールも在庫はなくなりそうです。
学校や保育園が休校なので、子供の世話で仕事に行けないスタッフも多く、人手のやりくりは大変です」
人の善意が集まることに感謝
ただ、そんな中でも救いがあるのは、温かい心の持ち主からの善意が寄せられているからだとキムラさんは語る。
「スタッフの中には、『自宅にたくさんストックしていたから』と、除菌グッズを自ら進んで施設内にセットしたりしてくれる人がいて、良いスタッフに恵まれたことを感謝しています。
また、利用者さんのご家族が『使って下さい』と、マスクを提供してくれたこともありましたし、先日はある団体経由で大量のマスクが施設に届き、スタッフみんなでお礼の手紙を書きました」
辛い現実に変わりはないが、人の心根の優しさに触れられるのは介護の仕事ならでは。
スタッフとして働くにも、利用者になるときにも、介護施設を選ぶ際には、建物や設備など、ハード面ばかりにどうしても目が行きがちだが、より大切なのは“ソフト”だということは心に留めておいても良さそうだ。