毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「故郷を捨てた?!若手介護職に心の変化が」という話題を紹介します。
介護の仕事の魅力の1つは、様々な経験を積んできた人生の先輩から色々な教えを学べること。
特別養護老人ホームで働き始めてまもなく丸2年が経つサカモトさんは、利用者さんと触れ合う中で、故郷に対する頑なだった気持ちが和らぎつつあるという。
“何もない”地元を10代で離れ上京
サカモトさんは現在30代。北関東の小さな町で生まれ育った彼女は、幼い頃に両親が離婚して母の女手1つで育てられ、10代のうちに故郷を離れて上京した。
お世辞にも裕福とは言えない家庭に育ったサカモトさんは地元が大嫌いだったという。
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都会の便利さを知ってしまうと…
「私が生まれ育ったのは、電車が1時間に1本しか来ないような田舎町でした。母親はいつも仕事で家を空けていて、私はいつも狭い家で一人ぼっち。寂しい思い出ばかりで、高校を卒業するとすぐに東京に出てきました。
ウチの地元では、高校を卒業すると地元を離れるのが当たり前で、同級生の大半が東京や埼玉に出てきています。故郷に帰っても遊ぶ場所はないですし、仕事は忙しいですし、帰省には時間もお金も掛かるので、故郷には年に1回帰れば良いほうでした」
1度でも都会の便利さを知ってしまえば、娯楽の少ない場所にはなかなか帰れないのは、確かに当然かもしれない。
老人ホームのお年寄りが語る『故郷』
これまでの仕事では、里心がつくことなど1度も無かったサカモトさん。介護業界で働き始めた当初も、故郷の話をするお年寄りの気持ちはわからなかったという。
「利用者の方の中には、足を悪くして自分で歩けなかったり、脳梗塞で障害が残り、ベッドで寝たきりの方などがいたりしますが、そういった方は皆、
『ふるさとに帰りたい』
『あと1回でいいから、故郷の○○を見たい』
と仰います。
私が担当している利用者さんの中には、北海道出身で、50年以上も北海道に帰っていないという方や、離島出身で、この数十年で1度しか里帰りしていないという方がいて、会う度に“いかに故郷が素晴らしいか”“自分がどれほど故郷に帰りたいか”をしきりに話していました」
故郷に対する思いを話す利用者に対し、当初は「私はまったく故郷に帰りたくない」「2度と帰れなくても構わない」と思うだけだったとサカモトさんは語る。
地元を離れた介護職に心の変化が
しかし、利用者さんから何度も何度も『故郷に帰りたい』という話を聞くうちに、サカモトさんにも徐々に故郷への思いが湧き上がってきたという。
「これまでの仕事では、ゆっくり花を見る時間などありませんでしたが、いま、介護の仕事をしていて、利用者の方の車椅子を押しながら梅や桜などを見ていると、
思い出すのは故郷の風景なんですよね。時々、突き上げるように“故郷に帰りたい”と思う瞬間があります。
最近、東京に出てきていた同級生がポツポツと地元に帰り始めています。そういった友達に話を聞くと、
『結局最後まで都会には馴染めなかった』『やっぱり地元の方が落ち着く』と言うんです。若い頃には絶対考えられませんでしたが、“私もそろそろ帰ろうかな”と思う気持ちが芽生えてきました」
『故郷への思い』がきっかけで利用者さんにも寄り添えるように
サカモトさんは今の仕事にとてもやりがいを感じており、まだしばらくは帰郷する予定はないが、望郷の念が芽生えたことで、故郷に思いを馳せる利用者さんに、より深く寄り添えるようになったのだそう。
利用者さんをお世話することが、お世話をする介護職の内面も成長させてくれるケースもあるようだ。
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