毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「やっぱり芸は身を助く?」という話題について紹介します。
行きがかりでヘルパーを始めることに…
「働く」という行為は、「好きだから」や「自分を高めたい」という理由もあると思うが、「お金のため」という人が多いのではないだろうか。ところが世の中には色々な人がいるもの。兵庫県在住のTさんは、ちょっと後ろ暗い理由からヘルパーになったが、結果的に人生が好転したという。
Tさんは都内で生まれ育ち、結婚で兵庫県に嫁いだ40代の女性。兵庫では、夫の実家で義父母や子どもとともに暮らすTさんがヘルパーを始めたのは、どちらかと言えば後ろ向きな理由からだった。Tさんはこう話す。
「私たち夫婦には子どもが3人いて、20代は子育てしているうちに終わってしまいました。けれども、一番下の子どもが小学校に通うようになると、日中、家にいるのは義理の母と私だけ。義父母はいつも『こんな田舎に嫁いできてくれて……』と言い、私にとても良くしてくれたんですけど、やっぱりずっと家にいるのは気詰まりで……(苦笑)。そんな話しをママ友にしたら、『だったら働きに出ればいいじゃない』って言われたんです」
しかしTさんが働くのは、一筋縄ではいかなかった。義父母からは、「お金が無いならいくらでも援助する」「嫁を働きに出したら、ご近所から陰口を言われる」などと言われてしまったため、Tさんは“行きがかり”で、「人のためになりたい」と、発言。それゆえ、選べる職業は自然と限られてしまい、Tさんはヘルパーを選んだ。
介護職をやりつつ、“特技”でもお金を稼ぐ
そんなTさんだが、特技が彼女の人生に新たな彩りを与えることになる。
「当初は、ヘルパーとして生活援助をやっていたんです。けれどもある時、私が書いた報告書を見た事業所のスタッフが、『Tさんって字がとても綺麗ね』と、言って下さって。実は小学生の頃からずっと書道を習っていて、字にはちょっと自信があったんです。そんな話しをしたら、スタッフが『もったいない! ウチの系列の老人ホームで、レクリエーションの一環として書道をやってるから、そこで教えてくれない?』と、言われたんです。もちろん、喜んで引き受けました」
かくしてTさんは、ヘルパーもやりつつ、書道を教えに老人ホームを回り、図らずも好きなことをしてお金を頂く生活が実現した。Tさんが書道を教えに回っている老人ホームには、自分の趣味の陶芸を教えたり、レクリエーションの麻雀に参加したり、「昔習った」というピアノを披露したりと、利用者を楽しませつつ自分も楽しんでいるスタッフが何人もいるのだそう。芸は身を助くということわざがある通り、趣味や特技が役立つケースは、介護業界でもあるようだ。
公開日:2016/11/28
最終更新日:2019/5/4