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2019年12月05日

人を増やして離職を減らす!「潜在介護人材」の活躍で介護の未来は変わる? | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

2060年、要介護者が約1.8倍に。介護職は…?

高齢化の進展で、介護職不足はこれからますます深刻になっていくと言われています。
地方都市ではすでに高齢化のピークを過ぎ、特別養護老人ホーム(特養)などに空きが出ているところもあると聞きます。

今後は、都市部での高齢化が急速に進みます。
ある医師の試算によれば、東京23区では2015年に約35万人だった要介護者が、2060年には約63万人にまで増加するとのこと(*)。
要介護者が約1.8倍に増える一方で、介護職は約640万人から約330万人と半減に近い状態に。こうして介護崩壊が起きるというのです。

介護職不足は長く指摘されてきましたが、こうして具体的な数値を見ると、改めてその深刻さを感じます。
介護現場で働いているみなさんも、採用をかけても応募がないなど、介護職不足は日常的な問題かもしれません。


「いつか介護で働きたい」潜在介護人材が存在する!

では、今後、介護職として活躍してくれそうな人のあてはないかというと、そうではありません。

介護福祉士の有資格者数は、2018年度も約6万600人増えて、合計約162万人にも上ります。
しかし、資格を取っただけで介護の仕事に就いていない、“潜在介護福祉士”は少なくありません。
少し古いデータですが、厚生労働省によれば、2014年時点では、介護福祉士有資格者で介護職に従事していたのは5割強。介護福祉士の資格を取っても、4割を超える人が介護職以外の仕事に就いていたのです。

2018年1月には、厚生労働省の補助金事業で、潜在介護人材についての調査が行われています。ここでの「潜在介護人材」とは、今は介護職ではないが以前介護職として働いていた人と、介護の仕事についたことがない介護福祉士有資格者・介護職員実務者研修(ヘルパー1級・介護職員基礎研修含む)修了者・介護職員初任者研修(へルパー2級含む)修了者を指します。

回答した1,030人のうち約4割が30代以下の女性、約2割が40~50代の女性。そして、回答した「潜在介護人材」の7割弱を介護職経験者が占めていました。

調査時点で、「潜在介護人材」の職業で最も多かった回答は、専業主婦(主夫)。
過去に介護職を経験している人でも、34.2%は他の職には就かず、専業主婦(主夫)になっています。

性別・年代別に見ると、30代女性の44.9%、40代女性の35.5%が専業主婦です。結婚、あるいは出産で仕事を辞めて、専業主婦になった人たちが多いのかもしれません。

この調査によれば、こうした「潜在介護人材」のうち、介護職経験者の半数弱、介護職未経験者の3割強が、介護職として働きたいという意向を持っています(「すぐにでも働きたい」+「いつか働きたい」)。
「働きたい」と回答している「潜在介護人材」に、介護職として活躍してもらわない手はありません。すぐにでも、介護職として働いてもらえる環境づくりを考えていく必要があります。


「託児サービス」「育児休暇」で離職率が下がった例も

介護事業者の中には、子連れ出勤を認めている、あるいは推奨している法人がしばしばあります。事業所の近隣の小学校に通う子どもがいる場合は、学校が終わると自宅ではなく事業所に来させて、親の勤務が終わるまで、利用者と共に過ごさせているという法人もあります。
子どもたちと共に過ごすことを、楽しいと感じる利用者も多いからです。

また、従業員のための託児所を用意する法人も増えています。
ある法人の従業員専用の託児所は、給食付きで利用料は無料。デイサービスの送迎車を活用して学校まで迎えに行き、小学生も預かっています。また、男性も含め、育児休業の取得を推進しているとのこと。
この法人では、託児サービス、育児休業取得推進を始めてから、20%前後だった離職率が5%前後まで大幅に減少。今では業界平均の15.4%(2018年度)を大きく下回っています。

これは、子育て支援という一側面ではありますが、就業環境が離職と大きく関わっていることがよくわかる好例です。
こうした環境が整っていれば、結婚や出産による離職が減るだけでなく、出産で退職した職員も復職しやすいのではないでしょうか。

人は誰でも、自分が大事にされてはじめて、他者を大事にできるものです。
介護事業者が利用者を大切にするのは当然のことですが、それ以前に、まず、いま働いてくれている“人財”を大切にし、気持ちよく働ける環境を整える必要があります。

現場で働く“人財”を大切にできる法人が増えていけば、離職率が高く、人材が常に不足している介護業界の状況は、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>

*介護崩壊 2040年への序章/番外編 迫る都市部の危機 在宅医・小野沢滋氏に聞く(毎日新聞 2019年11月15日)

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