2018年度介護報酬改定は0.54%の小幅アップで決着
いよいよ近づいてきた2018年度の報酬改定。介護、医療に加え、障害福祉の報酬も改定されるトリプル改定の年となります。
前回(2015年度)改定の時は、介護事業者に支払われる介護報酬は2.27%の引き下げでした。
その前年の2014年時点では、最も収支差率(利益率)の高かった通所介護が10.6%。施設サービスも、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が8.7%と高水準でした。
前回の報酬改定での引き下げの背景には、こうした高水準の収支差率がありました。
報酬改定後、多くの介護事業所の収支が悪化。2016年度、全サービス平均の収支差率(利益率)は3.3%となりました。
最も収支差率が高い、通所リハビリテーション、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)ですら5.1%です。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は1.6%にまで下がりました。
今回は、前回とは反対に収支差率の悪化から、0.54%とごくわずかながら報酬の引き上げが決まりました(*)。
利用者の自立支援・重度化防止に向けてた報酬の設定へ
全体としては報酬が引き上げられる一方で、以下の報酬引き下げが予定されています。
・集合住宅居住者(有料老人ホーム等)への訪問介護
・長時間の通所リハビリテーション
・大規模なデイサービス など
今回の報酬改定では、上記サービスの報酬を引き下げ、そのぶん他の加算の報酬を上げています。そうすることで、利用者の自立支援や重度化防止に注力するよう、国からのメッセージを色濃く出しているのです。
加算が付くのは、たとえば以下のようなところです。
●看護職員を手厚く配置しているグループホーム、たんの吸引などを行う特定施設
●ターミナル期に頻回に利用者の状態変化の把握等を行い、主治医等や居宅サービス事業者へ情報提供している居宅介護支援事業所
●一定の医療提供体制を整えた特別養護老人ホーム(特養)内で、実際に利用者を看取った場合
●訪問介護、デイサービス、特養等で、通所リハビリ事業所等のリハビリ専門職等と連携して作成した計画に基づいて介護を提供した場合
●デイサービスで、自立支援・重度化防止の観点から、一定期間内にその事業所を利用した者のうち、ADL(日常生活動作)の維持または改善の度合いが一定の水準を超えた場合
●特養等の入所者の褥瘡(床ずれ)発生を予防するため、褥瘡の発生と関連の強い項目について定期的に評価し、その結果に基づいた計画的な管理を行った場合
●排泄障害等のため、排泄に介護を要する特養等の入所者に対し、多職種が協働して支援計画を作成し、その計画に基づいて支援した場合(おむつはずし等)
ガン末期の利用者のための改善も
このほか、報酬改定とは違いますが、ガン末期の利用者のケアマネジメントについては、主治医の助言を受けることを条件に、サービス担当者会議を省略してケアマネジメントを進められるようになります。
病状の進行の早いガン末期の利用者の在宅療養では、制度に則っていると介護サービスの対応が遅れがちになることが指摘されていました。
急速に状態が悪化していく利用者を見守る家族に対して、サービス担当者会議の開催どころか、サービス契約すら言い出しにくいという介護関係者もいます。
また、ケアマネジメントについて言うと、質の向上と公正中立性の確保の観点から、居宅介護支援事業所の管理者は、主任ケアマネジャーを要件とすることが決まりました。
この要件適用には経過期間が設けられ、これが完全に適用されるのは2021年からとなります。
この件については、次週、改めて取り上げたいと思います。
報酬改定の方向性はだいたい固まりましたが、詳細が決まるのはこれから。今後も注目していきたいですね。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*介護報酬0.54%上げ 政府、6年ぶり増額(日本経済新聞 2017/12/15)