■書名:マンガでできる介護職員研修 考える力を伸ばす人材教育テキスト
■監修:マンガでできる介護職員研修編集委員会
■発行元:日本医療企画
■発行年月:2009年11月30日
>>『マンガでできる 介護職員研修 考える力を伸ばす人材教育テキスト』の購入はこちら
介護現場で頻発する事例をマンガ仕立てに。活発な議論を導き出す研修用テキスト
公益財団法人介護労働安定センターによると、訪問介護員、介護職員の離職率はここ数年の間、16~17%で推移している。2015年度では16.5%だった。介護業界の慢性的な人材不足が社会問題となって久しいが、必要とわかっていても、人材育成のための時間や費用、人手を割けないという現場が多いのではないだろうか。
本書は、そんな介護の現場で使いやすいように作られた研修用の人材教育テキストだ。「サービス編」「コミュニケーション編」「リスクマネジメント編」の3部構成で、21の研修テーマを収録。「介護職員が初めて現場へ出たとき、何に困り、何に迷い、何に悩んでいるのか」という視点で解説してくれる。
本書の特徴は、介護現場で頻発する問題がどのように起きるのかという部分を、「マンガ」でわかりやすく見せてくれること。マンガなので、研修用テキストという堅苦しさがなく、職員同士でイメージを共有しやすいメリットがある。
マンガの舞台は、デイサービスや訪問介護の現場、老人ホームや介護老人保健施設など。そこでの利用者に対する対応や職員同士のコミュニケーションが、21の研修テーマごとにストーリー仕立てで描かれている。
たとえば、次のようなストーリーだ。
●「あいさつをしっかりしているのに」
特別養護老人ホームの新人職員ユミコさんのケース。研修で学んだ敬語や接遇マナーの知識を存分に発揮しているつもりなのに、なぜか利用者や家族に不快感を与えてしまう…。
●「ケアの記録を怠ったばかりに」
介護老人保健施設で夜勤のトモコさんのケース。定期巡回の際に利用者がベッドの下で寝ているのを発見。看護師を呼んでボディチェックをしてもらい、問題がなかったので、詳しい記録を残さなかった。後日、家族からクレームが…。
それぞれのマンガを読んだあとに、登場人物のセリフや行動のどこに問題があったか、どのように行動すべきだったのかを職員同士で話し合い、理解を深めていくというのが、本書の使い方だ。話し合ううえでのヒントや問題の解決策などは、それぞれ「討論ポイント」と「解説」で示してくれる。
新人介護職員の研修だけが目的ではない。マンガを見ながら、先輩スタッフやサービス提供責任者、施設長などの言動もチェックし、それぞれどのように対応すれば良かったのかを考えるヒントになる。
<本書は、討論形式の研修に適しており、新入職員はもちろん職員同士の討論によって、職員全体のレベルアップにもつながり、ひいては事業所等の問題点を浮き彫りにし、業務改善にも役立つものと考えます。>
本編は100ページあまりで、手に取りやすいボリュームだ。読みやすいマンガと、詳しい解説ページのメリハリがきいているので、自然と読み進めていくことができる。手軽な研修テキストとして利用してみてはいかがだろうか。
<小田>
著者プロフィール
内田千惠子(社団法人日本介護福祉士会副会長)、大塚博巳(アイエムエフ研究センター代表)、梶川義人(NPO法人日本高齢者虐待防止センター理事)、小峰良子(NPO法人東京都介護福祉士会副会長)、佐藤寛子(株式会社ジャパンケアサービスグループ品質・教育部品質・教育室室長)、篠﨑良勝(八戸大学人間健康学部人間健康学科准教授)、本間郁子(NPO法人Uビジョン研究所理事長)、森洋司(東海商工会議所)、田村亜希子(株式会社アイオン)、山田滋(株式会社あいおいリスクコンサルティング主任コンサルタント)、渡邊一雄(日本社会事業大学理事・前客員教授、社会福祉法人奉優会理事・前施設長、日本フィランスロピー研究所所長)、和田行男(株式会社大起エンゼルヘルプクオリティー・マネージャー)、社会福祉法人品川区社会福祉協議会品川成年後見センター