■書名:完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編
■著者:山田 滋
■出版社:講談社
■発行年月:2018年2月
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豊富な事例で学ぶ!介護事故をトラブルに発展させない正しい対応方法とは?
介護現場では、事故をきっかけに利用者家族とトラブルになってしまうことは少なくない。
利用者に直接関係する事故がどうしても起こってしまう場所ではあるものの、どうすればトラブルに発展させずに済むのだろうか。
多くの介護関係者を悩ませているこの課題について、介護リスクマネジメントのプロがわかりやすく解説したのが本書だ。
本書の画期的な部分は、利用者家族とのトラブル対策を中心に据えて解説している点だろう。介護事業所では、利用者本人との関係性はもちろん、利用者の家族との関係にも特に神経を使うものだ。その意味で本書は、これまでにありそうでなかった待望の1冊だと言える。
さまざまな状況において、どのように家族と向き合い、クレームなどに対応すべきかを学ぶことができるのだ。
また、すべての項目においてイラストがふんだんに折り込まれ、視覚的なわかりやすさを目指していることも本書の特長のひとつ。雑誌と同じくらいの大きさなので、イラスト中心であっても情報量は十分だ。
本書の構成は次のとおり。各章ともに、最初の見開き2ページでそれぞれの章のポイントをまとめてあるので、ざっと内容を把握するのに便利だ。
巻頭特集 「介護の誤解」に陥らないための大前提
第1章 介護事故をめぐるトラブル対応と家族対応
第2章 介護現場におけるクレーム対応
第3章 トラブルにしない現場の工夫
第4章 介護現場における個人情報をめぐるトラブル
第5章 介護現場における大規模災害対策
第6章 介護施設における感染症対策
第7章 介護現場における虐待に関するトラブル対応
第1章では、介護事故によるトラブルを防ぐには、家族対応に関するマニュアル作りが必要であることがよくわかる。「トラブルにつながりやすく対応が難しい事故」に対しては、対応方針や対応手順を明確にしておくことが大切なのだ。
具体的には、介護現場で起こりうる次のような事例を取り上げている。
・ショートステイでの行方不明
・ストレッチャーからの転落で死亡事故
・原因不明のケガ
・車イスから突然立ち上がって転倒
・ルールを守らない利用者の事故
・家族が要求する介護方法での事故
・誤飲事故後、経過観察中に死亡
・夜中に転倒、翌日リハビリを実施
続く第2章では、対応の判断を誤りがちなクレームを取り上げている。
そして第4章以降では、近年意識が高まってきた個人情報をめぐるトラブル対策、東日本大震災をきっかけに対策が急がれるようになった大規模災害対策のほか、感染症対策や虐待防止対策について詳しく解説されている。
いずれも具体的な事例を数多く取り上げているので、実践的で介護現場での仕事につなげやすい。
本書と同じシリーズとして、介護事故防止のためのノウハウが詰まった
『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』が同時刊行されている。どちらも大変わかりやすく内容も濃いので、2冊揃えておくとさらに実践で参考になるだろう。
介護現場のスタッフから管理職まで、リスクマネジメントの質向上に大いに役立つはずだ。
著者プロフィール
山田 滋(やまだ・しげる)さん
介護と福祉のリスクコンサルタント。株式会社安全な介護代表取締役。早稲田大学法学部卒業後、現・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案等に携わる。2006年より現・株式会社インターリスク総研主席コンサルタント。2014年、株式会社安全な介護設立。各種団体や施設の要請により年間150回のセミナーをこなす。