■書名:楽しくなければ介護じゃない!~介護職を始める人の必須読本
■著者:五味常明・須藤章 共著
■発行元:ハート出版
■発行年月:2003年5月23日
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介護職に就くとき、就いてからの疑問や悩みに対するアドバイス集
本書の特徴は、これから介護の仕事を始める人にも現場をイメージしやすい構成になっていること。新人スタッフ「大山ケンジ」の体験物語だったり、仮想トークショーだったりと一風変わった展開だが、自分も同じ立場で考えやすく、読みやすい。特にトークショー形式のQ&Aでは、介護職に就こうとしている人たちの疑問や悩みについて、わかりやすく解説されている。
たとえば、「介護職に適性はあるのでしょうか?」や「地味な性格の人間は介護に向いていないのでしょうか?」といった質問には、それぞれ次のように答えている。
<介護とは、介護者という生活者と、お年寄りという生活者とが、お互いさまの人間関係をつくることです。お年寄りとかかわりあいながら互いに「生きてゆく」ことです。生まれてきたときに適性試験がなかったように、生きることに適性試験など必要ありません。>
<いくら人の助けを必要とするお年寄りとはいっても、元気一本槍じゃあ、やっていけません。(中略)お年寄りを明るく元気にすることが目的なのであって、その目的がかなえられる介護であれば、ヘルパーは明るくなくてもよいのです。>
サブタイトルにあるように、介護職を始める人の予備知識となるよう書かれているわけだが、それだけではない。「介護の仕事を始めたものの、さまざまな壁に突き当たり悩んでいる人」、さらに、「介護現場で新人スタッフを指導する立場の人」にも、たくさんのヒントを与えてくれる。
「がんばれと励ますのはいけないのか?」「お年寄りの視線に立った介護とは?」「相手が心を開いてくれない」など、利用者や入居者の方たちとの関わりの中で生じる疑問や悩み。本書では、それらを具体的なアドバイスとともに解説してくれる。自分なりに出した答えとすり合わせをして、もういちど考え直すのもいいだろう。
本書で何度も繰り返されるのは、「生活者」「生活支援」という言葉。「介護とは生活支援であり、その本質は生きがい支援である」と著者は説く。
<介護されるのが弱い人で、その世話をするのが介護職、というような上下の関係では生活支援はできないのです。それでは、どうしたら対等の生活者同士の関係になれるか? それはつまり、介護を楽しいと感じることです。>
介護の現場で迷ったとき、また介護の基本に立ち返るときに参考にしたい一冊だ。
<小田>
著者プロフィール
五味常明(ごみ・つねあき)さん
長野県出身。五味クリニック院長、日本心療外科研究会代表。体臭・多汗研究所所長。医学博士。流通経済大学スポーツ健康学部客員教授。一橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科等で形成外科学、多摩病院精神科等で精神医学を専攻し、「心療外科」を新しい医学分野として提唱。デイケア事業や高齢者介護にも携わっている。
須藤章(すどう・あきら)さん
東京都出身。千葉大学大学院中退。介護ヘルパー。